【右丁】   藤原(ふぢはらの)義孝(よしたか) 君(きみ)がため  をしから   ざりし 命さへ  ながくも   がなと おもひける    かな 【左丁】    五十番 右の哥の心はひとたびあふことあらばつゆ のいのちもをしからじ死すともおもひ おくことなしなんど思ひしが君にあふて たちわかれなごりをしさの せつなるまゝに日ごろ おもひし心はいつしかに 引かへて今はたゞ我 いのちのながかれ かしいつまでもちぎ りてといふ心になり たりといへりもつとゝ【「もつとも」とあるところか。】 あはれふかき哥なり 【画面右下部】 一陽斎   豊国【國】画