千里を走る虎子ほしい 完 【検索用、国会図書館登録タイトル「千里走虎之子欲」】 天明三 【整理番号シールの下に】日【または月?】 千里を走虎子ほしい《割書:通笑作|長清画》全二冊 むかし〳〵の事なり江戸 日本ばしのへんに竹八といふもの ありはゝ一人あれとしやうばい にてくに〳〵へひきやく子【に?】 あるきさきから さきのとせい なれとも はゝをあんしで おり〳〵江戸へ くだり こんども さいこくの ほうへよふじありて なかさきまでまわる つもりさりなから女中の ゑのしまくらいとも【?】 おもわずとなり【?】 あるきとはいふものゝ かた道は 四百里 ほど上下では八百里 にて山ちにはぐるほとの【くちにはゞかるほどの?】 たびなれどまめの くすりも もたずいとまこいして いてゆく 【挿絵内左】 ぢばんは 大坂てあら つてもらい ませう 和藤内はもろこしへ わたり日本の ものにて おふはたらき とふじんども おふきにてこづり とらを はなしけれは 和藤内 しやあ〳〵まじ〳〵と こわがりもせずあまつ さいとらをはんふん けをむしりおにの ふんどしにもならぬ よふにすればとうしん てやいもあきれはて のこらずかほみやわせて はあ〳〵と和藤内か まいへてをつけば みな〳〵みかたに なるかと いへは はあ〳〵 といふ そんならやろうに なれといふてもはあ〳〵 なにかいつかふわからず いふなりしだいにはあ〳〵と 目出度なかさきのちに つきけれはとうじんの やろうははつものゆへ おひたゝしき けんぶつなり 【挿絵内左】 おとつさん □□うりか【飴売りか?】 和藤内がともの と□じん【とうじん?】しばらく なかさきにとうりうの うち竹八も長さきへ つきとう人の内に とらの子をいつぴき つれて来りしものあり 竹八ハしやうはい【商売】 がらといゝほしがり【柄といい、欲しがり】 こか【古歌】にせんりはしる やうなとらの子が ほしいたより きゝたや きか せたやと いふうたのとふりひきやくの 事なれどよいしろもの やふ〳〵てづるをもとめて とう人にちかづきになり 弐貫くらいからねぎれとも かふり〳〵をするゆべ【へ?】 おもひきつて三貫文 いだしけれはわとうない 三くわんにまける事は たいぶこりているゆへ 又かぶり〳〵 【左ページ】 ぜひなく その上を 弐百かい ければ □んてん〳〵を するゆへ【?】 そうだん□ てき三貫弐百と いふはどふか やすそうな ものなれど とらの子 などは いくらくらいと いふねうちのしれぬ ものなり見せものに してたも そのくらいてはと【?】 かげではおもへとも ねこをきいろに そめたよふて【染めたようで?】 ちつとうけとる まいそだてゝ ひきやくは □ふんへつとおもふ 【右ページ下、かすれてほぼ読めず】 □□ かつ□ □には □□□□ □□ は□□□に する 【左ページ下、破れあり、ほぼ読めず】 ぬした【破れ】 あめ【破れ】 ゑ【破れ】 竹八はとらの 子をかいとつかは【?】 江戸へくだり おふくろにも よろこばせ めづらしき ものゆへ おふや【大家】さま はじめ なかやの【長屋の】 しうにも【衆にも】 見せまつ【見せ、まづ】 はじめの うちは ねこの やふにおもひ かいでめしを【餌の意?】 くはせ しぢうは かねもふけの たねなれば【金儲けの種なれば】 むしやうにだいしにして そだて 事 わざに【諺に】 【左ページへ】 たいじに するものを とらの子の よふにする【虎の子の様にする】と いふこのとき よりはじ まりけり ものには いろ〳〵 くふうのあるもの 竹八かおもひつきにて たけのこをくはせて【筍(たけのこ)】 見ればうまがりてくい それよりめつき〳〵と そだちければ おふきによろこび あさもばんも たけのこからし あいといふ所は ぬいてはんげの【漢方の半夏?】 いるまで くわせる 【右ページ挿絵せりふ】 あのかわを きんちやくに な【し?】たひもの しや 【左ページ挿絵せりふ】 にやあ〳〵 とらと いふ もの だよ 【右ページ】 とらもたん〳〵おゝきくなれば 竹八も□□□の□□にめくろさまへ あるかせてゆけは日本ばしへ ひるまへにかへり五りや 六りはおちやのこに あるきそのゝち 六【?】つ□□つれて ゆきあさめしも【行き、朝飯も】 すいふん ゆるりとくい【ゆるりと食い】 かめいどから【亀戸から】 うちはしめ したやの五ばんめまて【下谷の五番目まで】 よつまい【四つ前】にしまい ひとゝき見んほとに【?】 六あみた【六阿弥陀】をうち 竹八もひきやくの 事なればふたり まへはあるけども うまれてはじめての おふくたひれ したやから かこをかりとらをも のせてかへり きんじよの 【左ページ】 ものにも はなしけれは らいねんは わしがみやうたいに ねんまいに【?】 たのみたいと わろふ 【右ページ下 右】 ひふゆしきが【?】 うしろへでやすよ 【右ページ下 中ほど】 もふつくころ【?】 だの 【右ページ】 いよいよ とらもそだち のそみの とふり ひきやくやを はしめ 一日に十【千】里 いつて千里 かへるもつとも からの一りは 六丁一り【六丁一里】 日本のわりにして 見れは千里か百六十四りと廿四丁 いきもどり では三百廿九りと 十二丁 京大坂は 日かへりはらく にて さぬきあたりが ひとばんどまり なにかさしおき ぎんそうばこめ そうばのたのみにて しよにちのひから いちをなす 【右ページ 中ほど下】 てまへには □□【だら?】はごさり ませぬ 【左ページ】 □□□【竹八が?】ねかいの とふ□【通り?】しよ〳〵【諸所】 よりたのみは 山のごとく □□【こゝ?】にひとつの なんぎあり とらかいつかふみちを【虎が一向道を】 しらすついてゆく【知らず、ついて行く】 あしがあれはとらは いらすこれまてに した所かさいみやうじとの【? 西明寺殿 か 大明寺殿のような寺の名前】 くらいであとへも さきへもまいり かたし【難し】千里 いつては千里 かへつてはなんの へんてつもなし さて〳〵わづかの 事ではなくおふきな 事にきがつかなんだと てまへのりやう けんにもいかず ちへしやと おほしき所へ そうだんに ゆく 【右ページ】 竹八てまへの りやうけんにも いかずたんな でら【旦那寺・檀那寺】のおしやうさまに いちぶしぢうの よふすを はなし けれは それは とらに のり【つ?】てあるくが よかろふ これいじんと【?】 いふせんもん【?】 とらをあいし のつた事は きいた 事も なし ふかん ぜんじ【豊干禅師】は とらをこたつの【虎を炬燵の】 やふにより【様に寄り】 かゝつて ねるかすき【寝るが好き】 しやふき【鍾馗】が とらに 【左ページ】 のり【つ?】て あるかれた きさまか てつほう【鉄砲、嘘の隠語】 だと おもはぬよふに せ□□□の□でのとらのりの せうき【鍾馗】を見□【せ?】 ませうのられぬ 事はなさそふなもの もんじゆは【文殊は】 しゝにのつてござるにんけんは【獅子に乗ってござる。人間は】 とらにのらつしやると ものしりかほにと□□【もふ?】され けれども仁田の四郎が いのしゝはこれよりのちの 事と見へたり 【右ページ 中ほど】 うらしま太郎は かめにのつたが みづこゝろか なければ あぶない もの とらは おち た所【?】 が むま【馬】より せいかひくい 【左ページ 右下】 いかさま【なるほど】 おさ よふで こざります 【右ページ】 竹八おしやうのおしへの とふりとらにのつて いでけれはそのはやき事 ほをいつはいかけし おふふねのことくめい しよきうせきはさて おき六りふのならちやを くふ事もならす こゆ【ま?】あかさかで ひつはりそうにずれは そのうちに十里ほどあるき はこね八里は とらでも こすが こすに こされぬ 大井川の 川どめをは けんのんに おもふ所に とらの 川わたり とてへい ちのよふに あるき にんげん さへ道 くさを くうに 【左ページ】 うちへ【くにへ?】 かへるまでは なんにも くはすに あるきときにふしぎ なる事は大いそ【大磯】の道なかに おふきなる石ひとつあり 此所にていきもとり【行き戻り】 とらすこしづゝ やすむこれを今に とらが石といゝつたへしなり 江戸本所のこま とめいしもこのたぐいなるべし【本所駒止石】 そののちみやうなる事 ゆへこのゑんをひいて 大いそにとらといふ【大磯の虎御前。曽我ものに登場する人名】 ゆふじよをこしらへ 又とらすこし やすみしゆへとら せう〳〵【少将】とて 二人ともになをまつ だいにのこしけり【名を末代に残しけり】 〽 女郎のとらか石【虎が石?】のやふに おもふものもあり□やもちでも【部屋持ち(遊女の階級)?】 たくはんをはつけず石はいらぬなり 【右ページ 下】 □のふより【昨日より?】 おはやふ こさり ます 【右ページ】 竹八もとていらすに おふかねをもふけ とらに もむせうに うまい もの を くはせけれは すさまじく ちからずきで のせる事はさて おきあたり【?】まはつ【り?】 こまりけれは た□すがは□や□ としのかふにて 【左ページ】 和藤内がおふくろの おつほぶせ大神宮 さまのおはらいを いたゞかせければ たちまちねこの やうになり竹八が いふなりにしだいに はたらき又 かねをもふけ させひとへに 大神宮 さまの 【左上へ】 おかけなり ししはおか くら【お神楽?】ふて きついおきに いりのやうにも おもへともとらには かまいも なさらぬか なんでも かても 大神くうさま□【は? かすれて難しい】 すこしいものた【すごし(凄し)+い?】 とみな〳〵 かんしん する 【右ページ 右下 かすれている】 とらまへてたけ のませう とてんのふ さまの あんこん□ いふ ち□□を いふ 【右ページ】 竹八 なか〳〵 やくしや にて たまる【?】 事を しり もと□【戻り? もはや?】 かねもたくさん もふけすさましく ひとへにいせ大神宮 のおんかげ【御陰】とおもひ とらにあはれられては ぜにもふけのさたは さておきそ□ところ なれとも なに事なく 人にもてまへも けかもせす おれいのために 日本はしから【日本橋から】 いせまて【伊勢まで】 百日の □つさん【日参?】 一日もけだい【懈怠なく】 【左ページ】 なくさんけい して□たちの【ひたちの?】 ほうへ 千丁の□ 竹やふをかいい とらをも そこへいんきよ させ又 きやつを かんはんにして ひとあきないと いふはらも【?】なく なんほ【なんぼ】 てまへか あり【る?】かぬ とても うちにいる つもりを して かのものを たんと もつてい□【る?づ?】 【右ページ 右下】 あれもふ みへぬ 【右ページ挿絵 看板】 壱せんめし 竹八はさるのとしの むまれ【生まれ】にてとらの 七つめにあたり たいうん【大運】をひらき 今なゝつめを まつるといふも ひさしき事と みへたりてんぢく などの事とは ちがい此ひのもとの【日の本の】 しやうじき はなし【正直話】 天明三年 みつのとのうの【癸卯の】 としまて【年まで】 七か回の十三年に【?】 なる七か回□十三ばんは【?】 よい所たとけんとくには【?】 こむやふとひさしい ものたがきやうくんか きついすきさ 通笑作 清長画