《割書:安政|改正》 泰平(たいへい)盤石(ばんじやく)図会(つゑ) 焼失屋敷 六百七十軒余 土蔵数  卅二万五千六百余戸前 火口数  四十五ケ所 崩 家  五十七万六千軒余 死人数  十六万八千五百人余 【右下】 明暦三年大火より当年迄百九十九年に成ル今般回向院住主より地震類焼にて亡霊之者回向料壱貫文の処申不請相葬取置致シ度旨相願此段御聞済に相成候以上    十月 【本文】 夫天変地妖は人力を以て防事不能頃は安政二卯年十月二日夜四ツ時俄に 天地震動なし大じしんゆり出し東は和田倉御門内〇【家紋以下同】松平肥後守様両 御屋敷〇松平下総守様〇内藤様少シやける酒井右京亮様大半崩る八代 すがしは〇遠藤但馬守様やける松平相模守様半やけ表御門残る定火けし 屋敷火の見残る増山河内守様惣崩れ表御門残る織田兵部少輔様大半 崩れ小笠原左衛門尉様表御門崩る松平阿波守様表御門斗り崩る〇松平 右京亮様〇土井大炊頭様少々やける日比谷御門内本多中務大輔様〇永井 遠江守様やける土佐様御中やしき崩る外桜田は毛利様上杉様此辺 崩多し〇松平肥前守様やける阿部播磨守様惣崩れ丹羽様朽木様 大半ふるう〇有馬備後守様〇南部信濃守様〇松平時之助様〇 伊東しゆ理大夫様やける〇亀井隠岐守様半分やける北條様薩州将束 やしき少しやける霞が関永田丁御大名様御旗本様御やしき所々大に そんじる瀧の口辺は〇酒井雅楽頭様両御やしきやける御上やしき表 御門残る〇森川出羽守様やける惣して神田橋内ときは橋内大にふるう 神田ばし外通りは少しかるく小川丁は崩多し〇松平豊前守様本 郷丹後守様此辺御旗本御やしき七軒やける又〇堀田備中守様〇内藤 駿河守様岡部備後守様斎藤様近藤様川口様本多様大久保様久松様 曽賀様半井左京大夫様土岐様みぞ口様定火けしやしきのこらず やける〇榊原式部大輔様〇戸田大炊頭様少しやける飯田丁するがだい 辺つよくふるう松平さぬき守様松平駿河守様岩城様辺大にそんじ 神田は東西共くずれ多く本丁伝馬丁通りつよく馬喰丁両 ごく辺いたみ少シ人形丁小あみ丁辺は大につよく宝丁魚がし辺 いたつてかるし又八丁ぼりも同断なり日本ばし南は通丁東西中 通り中橋辺大半崩るかじ丁ゟ出火にて大工丁五郎兵へ丁畳丁南 てんま丁二丁目三丁目鈴木丁ときは丁ぐ足丁柳丁白魚やし き京ばし竹がしのこらずやける惣してぎんざ尾わり丁 新ばし辺大にそんじる又つきし辺つよく西門跡本堂はつゝが なし地中大半ふるうといへどもつぶれ無之芝口柴井丁両かは やける神明丁三しま丁辺こと〳〵く崩る田丁辺ゟ高輪二本榎 白銀辺品川宿ともそんじ少シ又浅草辺は茅丁福井丁代地辺 崩る御蔵前通り森本田原丁東仲町辺大半崩る駒形中程 より出火にてすは丁黒船丁三好丁川岸にてやけ止る並木通り くわん世おん御堂つゝがなし雷神門いたまず地内大半そんじる三社 権げん鳥居崩る五重の塔九りんまがる北馬道南馬道のこらず寺院 八ケ寺やける田丁二丁山川丁芝居町三座ともやける役者丁少シ残る 花川戸かたかは中程までやける新吉原町惣崩れ殊さら所々ゟ 出火にて五丁町のこらずやける死人三千五百余人大門外五十軒は 西がは少シのこる田中鳥越三谷通りは大にふるう今戸橋ぎは 二丁程やける橋場辺大にふるう銭座町家少シやける千住宿 こと〴〵く崩る小塚原丁やける金杉三の輪大音寺前崩れ多し 坂本二丁目三丁目やける山崎丁広徳寺前通り崩れ多く新 寺丁菊屋橋ぎは行安寺地中やける東門跡御堂さわりなし うら門崩る八軒寺丁実相寺専蔵寺ふどう院崩る玉そう寺 やける又三味せん堀七曲り辺大半崩る上野広かうじ東かは中 程ゟ出火にて六あみだ伊藤松坂屋ごふく店やける上野丁 黒門丁長者丁残らず中おかち丁までやける武家や御やしき やける〇井上筑後守様やける小笠原様中やしき堀丹波守 様酒井安芸守様大関信濃守様内藤豊後守様何れも大 半そんじる〇石川主殿頭様〇黒田豊前守様松平伊賀守 様中屋敷〇建部内匠頭様やけるゆしま天神下此辺惣崩れ 池のはた茅丁一丁目二丁目七軒丁やける榊原様〇松平出雲守 様少シやける喜連川様松平備後守様大半崩る又谷中天王 寺五重の塔九輪おれて落る此辺崩れ少シにて舎坊大破所々 なり根津二丁共崩る駒込すがも辺崩多し本郷辺いたみ少シ ゆしま天神社少々崩る門前三組丁辺大半そんじる妻恋社 別条なし町家少々そんじる神田明神社いたみ無之せい堂 大にそんじ同所前通一丁ほど神田川へこけ入る又小石川辺春 日町戸崎丁とみ坂辺小笠原信濃守様大半崩る牛天神下飯塚 監物様其外御旗本様御やしき六けんやける惣じて此辺つよく ふるう小日向大塚牛込市ケ谷辺そんじ所々にて四ツ谷御門赤坂 御門内外大にそんじるなり新宿通りいたみ少シ堀の内辺はい たつてかるし青山麻布広尾三田辺いづれもそんじ所々也 あたごの下辺は桜田久保丁びせん丁ふしみ丁辺大半そんじる 西の久保新下谷丁ふき手丁飯倉辺惣していたみつよく御や しき方あまたため池黒田様様田様土岐様大にふるう又 八丁ぼり辺はいたつてかろくれいがんしまつよく崩れ多し 池のはた茅丁一丁目二丁目七軒丁やける榊原様〇松平出雲守 様少シやける喜連川様松平備後守様大半崩る又谷中天王 寺五重の塔九輪おれて落る此辺崩れ少シにて舎坊大破所々 なり根津二丁共崩る駒込すがも辺崩多し本郷辺いたみ少シ ゆしま天神社少々崩る門前三組丁辺大半そんじる妻恋社 別条なし町家少々そんじる神田明神社いたみ無之せい堂 大にそんじ同所前通一丁ほど神田川へこけ入る又小石川辺春 日町戸崎丁とみ坂辺小笠原信濃守様大半崩る牛天神下飯塚 監物様其外御旗本様御やしき六けんやける惣じて此辺つよく ふるう小日向大塚牛込市ケ谷辺そんじ所々にて四ツ谷御門赤坂 御門内外大にそんじるなり新宿通りいたみ少シ堀の内辺はい たつてかるし青山麻布広尾三田辺いづれもそんじ所々也 あたごの下辺は桜田久保丁びせん丁ふしみ丁辺大半そんじる 西の久保新下谷丁ふき手丁飯倉辺惣していたみつよく御や しき方あまたため池黒田様様田様土岐様大にふるう又 八丁ぼり辺はいたつてかろくれいがんしまつよく崩れ多し 塩丁中程より出火にてかたかは半分新川少々大川端丁 やける大橋辺つよく安藤長門守様崩る又松島丁辺は 林播磨守様惣崩其外御旗本御やしき四軒 崩るかきから丁本多肥後守様酒井下野守様 御中やしき酒井雅楽頭きんざ屋敷大にふ るう鉄ぼうず十けん丁〇松平淡路守様 やける鉄ぼうず稲荷社別条なし又深川 はいたつてつよく七ケ所より出火にて相川丁 熊井町とみ吉丁正源寺中しま丁大しま丁蛤丁 外記どの丁北川丁諸丁のこらず黒江丁少シ残る 山本丁やぐら下辺西よこ丁仲丁八まん前まで やける阿州様前橋やけ落る八まん社つゝかなく 内外の石鳥居崩る土ばし入舟丁残らず崩る三十 三間堂こと〴〵くふるう永木様丁少シやける木場 所々大にそんじるわくらのこらずやける綱打場辺は のこらず崩る寺町源しん寺海ふく寺ゑいねん寺本堂 しゆろう堂とも崩る大和丁やける伊せ崎丁黒田様少シ 丁家やける東平野丁崩れ多く牧野様内藤様御下や しき崩る浄心寺本堂さわりなししゆろう堂地中五軒 崩る中門そんじたをれる門前くよう塔高サ壱丈五尺巾三尺 の角石二ツにおれる霊岸寺本堂つゝがなし地中十五軒崩 うら通りはのこるとろ少シ茶松寺じおん寺崩るしんこうじ やける立花出雲守様惣くずれ表御門残る高橋辺海辺大工丁大 半くずれ扇橋辺大島辺舟堀辺いたみ所々甚多しときは丁 一丁目二丁目元丁やける大田摂津守様御下やしき惣くずれ 表長屋やける神明社つゝかなし末社たをれる六けん堀は下 の橋通りのこる森下丁半分やけるみろく寺大にいたむ北六間 ぼり八な川丁御組やしき日向様永井様木下図書様林 様井上様やける御舟くら別条なし松井丁崩る一ツ目弁 才天社こと〴〵く崩る深川清住丁新寺崩る也又本所 は惣じてつぶ家多く松坂丁一丁目御旗本やしき三軒土 屋佐渡守様やける二ツ目通りは藤堂様御下やしき津軽 越中守様大にそんじる長崎丁一丁程やける緑丁二丁目ゟ 四丁目三ツ目橋ぎはまでやける其外此辺崩れ家多し又 亀井戸天神橋向少シやける社つゝかなし柳島妙見 社別条なし押上近辺寺院あまたそんじ人家大に 崩る小梅小倉庵近辺町家やける又吉田丁吉岡丁辺崩 多く惣して御やしきあまたそんしる石原かた丁少シ やける石原通りつよくふるうばんば松浦様御下やしき 大にそんしる石原外手町辺は残る家少し北番場丁 少しやける中の郷辺一ゑんつよくふるう東橋向酒井下野 守松平越前守様御下やしき大にそんじる松平周防 守様御下やしきやける惣して寺じま辺引舟木下川へん いたつてつよくかさい類は大半そんじ家多し東海道は小 田原辺迄にて藤沢宿はいたみ少シ神な川宿はそんじ あまたなり又三浦三崎辺も大にゆるき土蔵等は大に いたむ川崎宿辺はかへつていたみ少シ羽根田りやうし丁 少シいたむ弁才天社さわりなし大師御堂別条無之 大森辺池上そんじ所々なり又日光道中は草か越ケ谷 辺大につぶれ多く栗橋辺はいたみ少シ中仙道は大にかるし 大みや辺大分之ことなく下総より上総房州筋はつよくふ う砂村舟ぼり堀江ねこざね行とく辺一のゐ二のゐいづれもつ ぶれ多し成田道中こと〴〵くあれるすべて上総八幡辺下総 千葉辺野田辺迄も大かたならずふるう然りといへとも翌朝 諸方の火しずまり諸人あんどの思ひをなす是に依而 御公儀様より御仁恵御救小屋御建下しおかれ市中へ日々 焚出し御手当下され実以てありがたくあほくべし尊べし しかれば富家の町人近辺へほどこしそれ〳〵にさし出し是又 御公儀様より御褒美下しおかれ御ほめにあづかりしなりかゝるおり からなれば巨細をしるして便りなす助にもならんかとかくはあらわす也 【左下枠内】  御救小屋場所 浅草雷神門前 壱ケ所 幸橋御門外  壱ケ所 深川海辺大工丁壱ケ所 同 八幡境内 壱ケ所 本所割下水  壱ケ所 上野山下   壱ケ所 同所東ゑい山   御救小屋 壱ケ所 此度地震類焼にて窮 民御救小屋建被置候間掛 之者へ相願勝手次第御小屋 入可致もの也    十月