天明六 【整理ラベル】 208 特別 455 道笑双六 芝甘交作   全三冊      鳥居清長画 恋女房染分手綱のしやう るり【浄瑠璃】に道中すご六をもつて びせうじん【?】の心をす百り【数百里?】に うごかせしもむへなるかな こゝにそのひめきみより 百代の口【?】が十六代ほどぬけに あたり馬のぜうとの【馬之丞殿】と 申けるは大そうくどん【愚鈍?】の 御身にしてぶんぶ【文武?】とは ふんぶくちやかま【文福茶釜】の 事にきわめりやう とう【両刀?】とはへひのあたまの 二ツ有事にして まことにげいとう□ やみにてつほうを【むやみに鉄砲を?】 はなしたるごとくにて おはしけるがかあゆひ 子にはたびをさせろの【可愛い子には旅をさせよ】 きんげん大とのゝ【大殿の】思し めしにてたひをさせ よとのことなれど せんれいにまかせ又 たびはいや〳〵と御ぜう有【御定有=仰せあり?】 かろう六十□々太夫 はじめむかしの とうりすこ六を もつておすゝめ 中か□□ひと いつれも りかう そう なかをつぎ【利口そうな顔付き?】 にてたい  しゆつ【退出?】    する 【挿絵内右】 きんはん かわり ました  道中   すこ六 【挿絵内左・若殿?セリフ】 ちとこふうだが とうちう【道中?】は    いや〳〵 【挿絵内下】 これさ 御せん□□ 【御前じゃ?】 むだ□  いひ まけ  まひぞ こらいのとをり【古来の通り】馬かたじねんじよ の三吉【自然薯の三吉=恋女房染分手綱の登場人物】がすこ六をもつて御しゆつ たつ【御出立】の御かれい【御嘉例?】なり迚【とて】江戸中 馬の出口〳〵へ人を□【呼?つか?】わし 三吉といへる道中すご六を もちたる馬こ【馬子】を御せんぎ あれどもはこね【箱根】から こつちにそんな やぼなまごと はけもの【化け物】は ないはづの 所を百日 ばかりも たつねけるが どうして あろふはづは なかりける 〽されとも四ツや しんしゆくしやれ 人のまのじの□と 口ずさみける□いち しるしまことに あつまずい一の【吾妻随一の】 馬のめいしよに して三吉には あらねどそ□【れ?】に にた八わうし【八王子?】 三太郎といへる まごにたつね あたりしぞ ふしきてもなん てもなしいかほと たつねてもちう もんのとをりの まこにあはねはせん かたなく三吉と 三太郎くらゐの まちかいはよかろふと つもつてみても 三吉は十二三三太郎は 三十斗これもさかさまに よめは十三とこぢ付ても まだすこ六かなし いかゞせんととほうふに くれしか三人よれば もんじゆのちゑ こゝんとつほの ちゑをふるひ出し すこ六はほんやで かふがよいとは まことにこう めい【諸葛孔明?】くすのき【楠木正成?】も およはぬ所 なれは こゝに しるす 【挿絵内右ページ中】 じせつから【時節柄】で ござれば しねんじよも 長いもの 三太郎と いたし ませふ 時に御ぜんへは こゑたこ【?】は いかゞで ござる 【挿絵内右ページ下】 そこがくさいも ひくひも こいの道で   ござる いかに馬かたなんじか けめうはしねんじよ の三吉とはいわさるや まつたくとうちう すころくはしよぢ  なきざるや 〽あんだおゑどの とうしんたそふだ じねんじやうは  ねへかやがて ごぼ〳〵いも〳〵は うりますよ 【挿絵内左ページ】 馬はこの人々の ちゑにあきれ けるかものが いわれぬゆへ たまつて 行こそ しんへう    なれ 【右ページ本文】 三太郎 はうま すきた 口ゆへ まゆげへ つはを つけ〳〵 きてみれは うそもなし せんれいのとをり おちの人いまの しけの井【重の井】たかつきに くわし【菓子】を入うや〳〵 しくもちきたり した□□ひやうな あいさつする三太郎も うれしひかあは□□ い□に付た□らひを する 御たち合の かた 御との□ なら も一ツ まけて あはみ 三太郎も しけの井も このたびは としが 合はぬゆへ おやこの なのりは 御□やん やくのつもり 【右ページ下・三太郎セリフ】 おせわやきのれい金を □ましてすころくは 金と引かへにつたしにせふ せんれい はま もり ふくろか 出ました かわたくしは きせる ふたつか やうし さしが たち おくわし【御菓子】も さつまいも だるまとうが たちて よう こさり ます 【右ページ・しけの井セリフ】 すご六が まん八たと ぼうを引て けつすによ 【左ページ本文】 かろう【家老】をはしめきんじゆ【近習】のめん〳〵 すご六をふり御目にかけければ たびはおもしろひときうに 行くきになり 給ふぞとうりの しゆかう【趣向?】也 上るり 〽とてもさいを なけるなら せめてはぜに □本ことも めん〳〵心に おもへとも あけて いわれぬ ものゝふの 心のうちを とのさまも あの双六は どこやらが 引けんかしににた ると手で御心 付は有かたれと たがひにいわれぬ 心ねぞおもひ やられて あぢき なき□   きく     【ここから口三味線か】    とく     けん      〳〵〳〵〳〵 【左ページ挿絵内セリフ】 おくてだれか かたるそふだ わかひてやいだぞ イヨ き□〳〵か さるの やにて □□□   〳〵 【見出し】  日本橋 ふりいだし 【本文】 道中すこ六のよくきいたる□ 引風にたはらやを用ひたる ことくなるもどうり ふり出しがにほんはし とはきついものその かわりこんなりかうな とのさまにはめつたな ものはみせられず ばんじすご六の とをりすんぶん ちがはぬやうに とのぎよいにて にほんはしか ふり出しだから あれから さいをなげ なからゆかうと くも すけの やふな 御じやう ある そのとき とのさま の給わく とうさい〳〵 たかふは ごされども これより ほうり なげます□ ゑん〳〵けた く【計度けたく・ふんべつすること】しなく となへことを して さいをなけ 付給ふそ ふしきなる このとき われを わすれて しやうぶと こゑを かけたる もの 二三人 御め とおり を し くぢる 【挿絵内右ページ】 なんと これは よるめ とのさまを 馬にのせたの じやァ ねへかの 【挿絵内左ページ】 おさき まつくらで ござひ 【見出し】 しな川 【本文】 とのは にほんはし【日本橋】 にて一を ふり給ひ まづしな川【品川】へ つくとも まわりは とつか【戸塚】 あたりまでは 日のある内に らくに行 かれると いふつもりを それては さいのめの ほうにはつ れると しな川へ むりに つき 給ひしが こゝにて すこ六を 出し よく〳〵 みれば しな川と いふ所に とまりと かいて なければ とまる事 けつして ならすと あくるあさ まて のこらす たちすく みにする これを そむけは しうめい【主命?】 にそむき さいのめに そむき 二めいに そむき ますから はて みめいに こんな めに あひ ますると ねほけた りくつを いふ 【右ページ挿絵内】 けさから  たつて   いんす なんで  ありん    せふ   【見出し】 (泊)戸塚 【本文】 品川の立すくみにこりはて そう〳〵さいをなけ給へは 五をふり給ふゆへ品川 川さき【川崎】かな川【神奈川】ほとかや【保土ヶ谷】 とつか【戸塚】とまりとこんとは ほんのとまりへふり あてすこ六を みれはすへふろ【据え風呂?】に 人かはいつて 女かそはに たつている絵 このとをりを 申つけいとの 事けらいの うちで ずいふん なかゆ【長湯】の すきな のほせ さふも ない やつを けんぶん【検分】の すむまて ゆに入 女を 付て おく 【挿絵内右・女セリフ】 いつまで かうして おります 【挿絵内左】 此女すこ ろくの  とおりの につら【?】なりとて 御ゐに入り とのさま 廿四文 はつみ 給ふ きんたま かふやけて この所の □いふつ となるか ざん ねんや なア 【見出し】 大いそ 【本文】 とつかにて三をふり けるゆへふちさは【藤沢】 大いそ【大磯】にあたり すごろくはとらか いし【大磯延台寺の虎御石?】をもつて いるやつと たはこ【煙草】を のんてみて いるやつ またこの とおりに せいとの いゝつけ いしを もつちう げん【中間】三十人 みて いるあし かる【足軽】廿人 かわり はんに つとめる やくにん けん ふん【検分】に きて むた はかり いふ 【挿絵内中・殿セリフ】 とうか きせるの あけ やふが まだ ひくい やふだ 【挿絵内左・キセル男セリフ】 このくらいて よふ こさり ませふか 【挿絵内下・右男セリフ】 との御らんの すむまで そうして  いませふぞ 【挿絵内下・石持男セリフ】 しうめい【主命?】なれは おやく人へ しりをむけます なんぞ  出ましたら    御めん 【見出し】 (泊)小田原 【本文】 大いそ【大磯】にて また一を ふりけるゆへ ぢきに おたはら【小田原】とまり とはとんだはやい とまりひる四ツ じふんにのたり〳〵 つき給ふ すこ六はうゐろう やのみせにはんこうの せいかわからぬ かほのわかしゆ【顔の若衆?】 壱人ひんぼう しみたかい人【貧乏じみた買い人?】 壱人 ひとつゝみ 下さいと かいて有 此とをりを おゝせ 付らるゝ 〽ういろうやの 内にわからぬかほ のわかしゆ なくてとの さまは御□□ ずらなされ けるかきう【火急?】に きたない わかしゆ 御せんぎ あつて たしておく 【挿絵内】 あの かつて いる みが きつく 出来た ふち【扶持】を 二人□米 かぞう【加増】 させい もつとこへを はりあけて〳〵 一つゝみ  下さひ 此くらいな てうし【調子?】で よふ ごさり ますか 【見出し】 はこね 【本文】 小 田はら【小田原】 にて 一のつら をふり 給ひて ちきに【じきに】 となり のはこね【箱根】 これは ねつから らちのあかぬ とけらいの せくも御か まひなく  【家来の急くもおかまいなく】 すころくを ひらけはてかた【手形】 をわすれ江戸 まてかへると あれはすくに そのとをりの ていをせいと おゝせ付あしの たつしやさふなものを 江戸へかへすぞ  御むたなし 【挿絵内・屋形壁?】 い□いちとなんぞかつて もらわふか 【挿絵内下】 しからは 江戸へかへり 二三へんくる〳〵 廻つて  もとり   ませふ 【見出し】 よしはら 【本文】 はこね【箱根】にて四をふりこんとは はら【原】よしはら【吉原】なかしけ【時化?】にて 三日のとうりう双六はふし【富士】 をみているやつとかけて行 馬かたくもつてふしか みへねははり ぬき【張り抜き?・張り子の事】に□しらへ さてまこと 中けん【中間?】を 出して さしきを かけさせる 【挿絵内】 ふしや伊左衛門【藤屋伊左衛門=歌舞伎「廓文章」の主人公】ては ないかはりぬきの ふしのゆき おもしろやナア ハイ〳〵〳〵 かみか 八そく とほか れいわ たか十 〆 め入ま した  あ まりむ たは  こ さりま せぬ おさしき  しや 馬の 小へんに きを つけい 【見出し】 ふちう 【本文】 よし はら【吉原】で やう 〳〵 てん きが あがり こ ん ど は 五を ふつて ふちう【府中】 すこ六 のゑは あへ川 もちを こしらへて いるもの一人 くひ人壱人 これは道中 ちう□【ふ?に?】ない せにやすに あり□事 さきへ侍を まわし もちを くわせて   おく 【挿絵内・客セリフ】 ていしゆたいぎながらとのさまのごさるまで そういふみでいておくりやれおれも かうしてくつていねはならぬ 是には たいぶ わけの ある事じや 【挿絵内・店主セリフ】 それはなに とももち につく事 もちあくむ ぎで ござり  ます 【挿絵内・看板】 名物 あべ川もち 【見出し】 まりこ 【本文】 とのさまはとかくさいの なげやうがおへたにて ふちう【府中】とておし□を ふり給ひちきに【じきに】 となりのまりこ【丸子】すこ 六はうつのや【宇津ノ谷】の十だんこ うり人の女一人かいて一人 是は道中なたかいめいふつ【名高い名物】 すこしもちかはぬやうに【少しも違わぬ様に】       との御ゐ【御意?】なり 【挿絵内】 うつのや 十たんご 〽女のみと申かい人の   なりと申 是では 御ゐに  入ませふ かわんせしや 〳〵 〽□く【中〳〵?】むすめも   双六じみた  よびやう   するもんだ 〽さやう〳〵おしつけ  御出にまも    あるまひ 【見出し】 しまだ 【本文】 とのさまはさいのなけやうが おへたじや□【と?】こんどは かろうがなげた所が まりこ【丸子】から三をふつて しまだ【島田】かなや【金谷】  双六は大水にて 二日のとうりう 水も出もせぬに 二日のとうりう かろうとのもちと □□【は分?】ではあらぬ所を ふられたり 〽つたへきく しまだかなやの はたごやの娘 なますもる迚 赤ひものかはと 古歌にもよんて あれはと□かいはあかい ものにも一トつゝもめ やうとわかいものに一ト はつまりと りやうはう ひとつにして  御かんりやくの   御ことばかでる 〽アヽおもしろひ れんだいみもんの【輦台と前代未聞をかけている?】 はなしのたねた  けらいどもこの   ぢぐちは     とふた   なんと    おもやる   あたらしさふだ    のとさかな     をかふ      やふな      事を       の       給ふ 【挿絵内】  おもしろくも  なんとも  こさり ませぬから おくかたあた    らしい    さふ     な    事て    こざ    り    ます 鞠子 【見出し】 につさか 【本文】 しまだから 二をふつて かなや【金谷】につ坂【日坂】 わらひもち【蕨餅】 のめいふつふりそでをきている女が もちをこしらへているところ もつともくい人も一人今とき につ坂 でももめんふりそてを きるやうなやほな娘は 一人も なし また 是に こまり けるが とふ でも むかし ものは こんな 事を かたく おぼへ いると 六七十な はヽアを たのみ ふりそで をきせて これて まに あわ せる 【挿絵内・看板】 めいふつ わらび餅 【挿絵内・男客セリフ】 こ れ はちと あたじけ ないが はらの はあ  さま   しや ふり袖の かへだま ばゞアの  ふりそで とのさまが かつてん なされは   いゝか 【挿絵内・女セリフ】 いかに わたしか ばゞアしや とてそんな こじ付た わるひぢ 口はおつ しやらぬ  ものて こさり   ます 【見出し】 あら井 【本文】 につ坂にて六を ふりこい つは一の うらめ なれば けらい のはり がとん ぎ【だ?】つよ くか け川【掛川】 ふくろ井【袋井】みつけ【見附】 はま松【浜松】まい坂【舞坂】 あら井【新居】まて なでこんて一ツ そくとひ【一足飛び】いま までにないいゝ めが出たといふ 所がまへをまく つてあらた めるはしよ このやくに あ たつたわか しゆはびん ほうくじ しうめいなれ はせひがないと まつ引まくつ てのヽしつたり とのさまもこれ には御きが 有と みへてじしん 御あら  ため   なさる 【挿絵内中段】 扨〳〵 わかしゆの ものには 見事〳〵 すへたのも しひけらい しやいぼはない かあらためよ あの ものが そつて みせ すす だけ みせ やうか こう しや て こさり  ます 【挿絵内下段】 しいはけさ ほど  いたしました 【見出し】 (泊)あかさか 【本文】 あらゐにて五を ふりしらすか【白須賀】ふた 川【二川】よし田【吉田】こゆ【御油】あか 坂【赤坂】とまりんせ〳〵と 女のむりに引込所 とのさまにはつほと いふばしよきもの はやふりほうたい ちからのつよひ やつは百ましとの 御かちう のこらずしばいの いろ男の ぶたれた やうに なつて とまる あか坂て ばか やろは 引っ はりに 二百 やろと 五いん□う つうの ぜに を つかふ 【挿絵内】 てまへは  ほんの 四十女の きもの やふりだ とのさん ならおも入 引はんな 申上  ます きもの やふられ ました  もの 五百人 あしを すりむき あるひは 引かヽれ ました   もの 三百人 あとは おひ〳〵 申上  ませふ 【見出し】 くわな 【本文】 あか 坂にて六を ふり藤川【藤川】おかざき【岡崎】 ちりふ【知立】なるみ【鳴海】宮【宮】くわな【桑名】 にあたりやきはま くりのめいふつやき 人も一人くい人も一人 といふ所ほかのもの はくゐたくてもけつ してくう事ならす くゐてのばんにあた つたおり介がひとり 仕合にてはまくりの くゐあきかちうのこらす はまくりにかつへて のどをぐび〳〵させ みている事こそ あわれなり 【挿絵内上段】 しるも すはぬ もあふ さかの せきと くいたいか して せつない ちぐちを   いふ 〽なんと 内しやうて 一ツくわせる きはないか 【挿絵内下段】 主人の いゝ付け しるでも  なり   ませぬ 【見出し】 石やくし 【本文】 くわな【桑名】から 二をふつて 四日市いし やくし【石薬師】こんどは ひきやく【飛脚】がはだ かでかけて行 ばしよあしの たつしやさうな ものをひきやくに してしゆくぢうを ひはんにちほと かけさせけるが とのさまもあん まりおもしろく ないか大かいにして たはこにしろと さつとおしまひに      なる さて行く あても なくつて かける ひきやくも へんなものた 是てもふ 行たりきたり 五十たびめだ 【挿絵内】 ハイ〳〵〳〵〳〵 【見出し】 かめ山 【本文】 こんどは二のつらが 出てせうの【庄野】かめ山【亀山】 こゝはかみかつは【紙合羽?】 をきてあめの ふるばしよ てんきはとんた よけれども おさための とをりなれば かつはをきねは すまずいかに くさそうしでも もふこんな 事ばかりは うつとしひ 所へかみ かつはを きたから うつと  しひが 二わり  まし也 【挿絵内】 なんぼしうめいてもこの てんきにかみかつははへんな ものたアあぶらくさひ〳〵 【見出し】 大津 【本文】 こゝで六だと一とひに みちがおふきく きくとかちうも 六のはりが大き かりしがよひ つぼのまわり あはせ六か出て せき【関】坂の下【坂下】水口【水口】 いしへ【石部】くさつ【草津】 大つ【大津】とはり あてこゝは双六も くさつの□ちう さんのやねの うへによこに 大  つと札 は  かり か い て ある  ところ なんにも する事 なし とう中 ちうに ないかすり なところ いまゝで こんな所に あたれは このやうに くろうはせぬ とは御もつ ともしごく こゝで六の うらめの 一と出れば すぐに 京へ上ルと 一のかわか つよく しつたれ ともとん でもない 六ののびが 出て 五つあまり みや【宮】へかへる とは おや〳〵 はから  しい 【見出し】 みや 【本文】 五ツあまりてみや【宮】へかへり 七りのわたし一りもぬけては すまぬととのさまも じやうをはつてはみたれ ともよつほどくたびれか きたかしてあんまり うれしさふもない かほつきけらひも あきれてものも いわれずむごんの やうにしてど ちうする 【見出し】 くさつ 【本文】 ぼんくら□も したかしてやう〳〵 もとの大つ【大津】へ きてこんと はとふぞ上リ たいとしん になつて なけた所が 三をふつて 二つあま れはくさつ【草津】へ かへるなん ぼとのさまの 思ひ付ても是 にはくつとあぐん 【?】 てしよてから 此とう中はよし にすれはよかつたと はしめてちつと きがつく 【挿絵内中段】 なにわちう さん【和中散】とはちう さんのにつ ほん一わたつ たのてはないか おれはそん な所では ない はやく 京へ 行きたひ 【挿絵内下】 もし わちう さんは とう いたし ませふ それでも さいを なけねば 行かれ ませぬ まつ〳〵 □【お?】まち なされい 【見出し】 いしべ 【本文】 くさつ【草津】へかへつてとのさま もくつとまけはら【負け腹】を 立給ひこんどは 二さへふれは京へ 上るとせき こんてなけた所か いんくわと五か出て 三つあまりて いしへ【石部】へかへり とうも京へは 上られすとのは はらはつかり たつてむせう に人をしかり ちらしけらいも とんたふしゆび なれはふしゆひ 京へのほれと 御あしを さすつて  なだめ   けり 【見出し】 京 【本文】 こうたび〳〵 かへつては 中々五十日や 百日では京へは 上られぬと     今はかぢ     きとう (上り)  さま〳〵の     事をして     しん力 仏力のぎどく【?】か いゝやつといしへ【石部】で さんをふつてくさつ【草津】 大つ【大津】京へ上り まことに てんじやう【殿上?】した心もち いゝやつとこのほんも 京てとめ申候  京こうきんけん【恐惶謹言】と  こしつけとめに  いたしました 【挿絵内】 アヽ おもしろ かつたのふ 〽とのさま  どう  ちう  中の ためいき を いち どきに つき  給ふ 【本文】 げにやろせいかゆめは 【邯鄲の夢の主人公が盧生】 五十年のゑいぐわを 一ツときにみしが これは五十三次の 道中を二日のはつ ゆめに一トはんにみしも どうりたから舟と とりちかへて とう中すこ六を まくらの下にした からとはとうやら うそのやうなれとも ほんの事も ほんのこときつと したあを ほんの事 すぐに馬の ぜうとのゝ【馬之丞殿】 午にいとしの はつゆめと めてたく    おかし也 〽ゆめも久しひものだ よしにしろと ぜんかうか申し ましたけれども それでも とうもいたし やうが  こさり   ませぬ 【挿絵内】 扨はゆめで あつたかハァとは ばか〳〵しく     なし 〽いまおき たてゆへ 馬之丞どの たいこを うつて よろこばるゝ しかし これは きものゝ 下で みへず 【挿絵内左下】 清長画 芝全交門人   甘交戯作 【背表紙・文字なし】