即席 鯰はなし 「これは此たびの地しんにつき まして多くの蔵や立家を くづしましたるゆゑ人々うれひ かなしみゐたるにやう/\ 月もたち日をおひけるに あるひかのなまづぼんにんの かたちをなしつゝ町々をめぐり あるき「ヲヤ/\でへぶこゝの 内はくづれたヲヤ此くらもひどく ふるつたアこんなにぶちこわすつもり ではなかつたトひとりごとをいふをきゝて あたりよりかけいで「これ/\てめへはぢしん しやアねへか「ナニちしんだウヌ手めへのおかげで かあいゝつま子にわかれたり「ソウヨおやをころした かたきのぢしんかくごしろトてん/\にゑもの/\ をもちきたりさん〴〵に打擲(ちやうちやく)いたしければ ぢしんもいろ/\わびけれどもいかなりやうけんなり がたくぢしんはすか所のきずをうけたをれけるを おほぜいこちより見るにからた中あざだらけなれば 「コレ/\このあざを見なせへ「ヱヽこりやアあざじやアねへ 「ナゼヘ「イヤサこれはなまづたものを