【JAPONAIS】 【212】 《割書:道|行》 戀(こい)濃(の)婦(ふ)登(と)佐(さ)男(を) 上 序 東西〳〵。高ふハ御座りますれと。是 より口上の男根(へのこ)を以テ。申上ます。此所道行(ミちゆき) 濡(ぬれ)㕝よがりの始り。上/瑠理(るり)穴なら入大更。 三/味線(ミセん)𡱖(つび)【(尸に開か)女陰のこと】沢(ざハ)吾八。相勤ます。氣もゆき 呉(くれ)竹の。夜こと〳〵二番も三番ヽも 幕(まく)なし大道具(とふく)ニてやらかし。まだ 氣もやらぬ其時ハ。是こそ開を大じ かけ。先は指(ゆび)人形の手/業(わさ)色〻。御覧 に入ます。随分氣なかにさをのミ込 胯(またくら)に。青くさき汗(あセ)を流らし。御見物被 下【くだされ】。御帰りの上ニてはァヽ〳〵いヽあヽいゝ。どをも 〳〵と。感通(かんつう)の。よがり聲を發(いだ)して。 御評判。ヒ下【くだされ】ますなら。惣座中ハ申スに 及ばす御宿元ニても御新造さま【合略?】方。夜分 お楽(たの)しミの。手本共なり下女のおせんさま。 お飯(まんま)焚(たき)の八兵衛どの。物置木部屋にて 出會(でやい)の種(たね)にもとまづハ初り其為 口上左様カチ〳〵〳〵〳〵〳〵 アヽ〳〵つヽ はつ春 辶□【道上?】 ひ い き 【左頁】 画序 お半 長右衛門 おやごのてまへ おきぬが おもわくも もふこう なつて なんのかまふ ものか ぎりも ほうも おもて むき ばかり いわハ 十四や そこらの そなたと こう いう 事 【左頁】 を してハ セさり【せざり?】 の 人の は ら い【祓い?】 の た ね ぎり しらづと いわれへ よふが人て なしといわれよふが ほゝ【ぼぼ】さへすりやァ かなふ事ハねへナァおはん 【下へ】 おししやう さんの おしへにハ 女といふ ものハ おつとゝいふハ いつしやうにたつた ひとりだから よるもひるもせい だしてたんと とぼすかかんじんだ ふたりとはだをふらぬ ゆへ三人まへをしいつけろとさ 【右中】 ハはア きこへた 【左上】 こよひハむこの くるといふを きいてまらの たつたも そなたか いとしさ 【左頁】 これあんまり よかりやん な【よがりやんナ】人が きくと わるい ハァモゥ いつそアレサ もつと ぐつと だき し めて モツト こつ ちへ ひつ たりと よんねへ ヱ〻 かハ いヽのふ お鶴 才三郎 【下】 ひよつと丈八が ミつけるとわりい はやくしないつそ きがつかわれてねつ 【下へ】 から しても 身に ならねへ おれがどう ぐハちつと おかま にハ むりだ わへ おしりがさけたら 御めん 【下段】 こゝでおれに ひとつふる? まつて おいてミや それ 兄弟 ぶんと いふもの だから おそめ さんとの 中も それ 上ノ三 【左頁】 さハりなしに いかふと いうものだ こうおれもつらい めをするからハ うたざへもんハ どうぞ よしにして くだせへ うまれてはじめて かまのほられ はしめだ ア〻どうか いたさうだ 【上段】 アノ善六の あくにんづらが かわいさうに わたしゆへに 久松がつらい をもひを しやるのふ お染 久枩 【中段】 こよいも これで てふど 五ッめだから 本所なら らかんさま【合略?】 だか【本所五ツ目の天恩山五百羅漢寺】 こヽ でハ 何 さま だ らう ね こゝでハ さ?□ さまさ 上ノ四 【左頁上】 なんでも しんぢう するほど ばかげた ことハねへ いろ事 なら たゞ こしの つゞくたけ とぼすが かんじんさ むかしの おさん 茂兵衛 とハ ちつと ふうが ちかふ ァヽつかもねへ おさん 茂兵衛 こうやつていぢつてい たりとぼしたり くちをすつたりして ゐれバぼんも 正月も くにハ なら ねへ 上ノ五 【左頁】 清兵衛どのへいゝわけ 長兵衛へのたてひき【達引き】 てめへにたてる しんじつ もふ〳〵 おれがからだほど いそがしいとハ ねへ そして その ぶん【その分】 て い【躰】 の い やら し い 事 わへ おその 六三郎 【下へ】 長兵衛さん に よくつと めれハ 五ねん 【下へ】 ある ねん 【下へ】 もだして やら う と ため になるのが しミ〴〵 いやて どうも ならねへ 【下段】 そんなに い ぢら づと はやく いれなよ きよねんの くれから 【下へ】 まる一ねんとぼさずに いたせいか 【下へ】 いつそ【一層】 きがとうく なるほど よくて〳〵 【左上】 ゆうぎり なミだもろ ともに うらみられ たり かこつのも ぼゞのならいていヽ ながらそれハ 上ノ六 【左頁】 うハきなきよくどりと とりそめたその夜から こんなへのこがからにもあるか はてなちやうすが うれしくてひとの くじりもよのまらも しらかミ【白紙】でふくつひのつゆ【終の汁】そつと とる手もこゝろせき おけつのそこのよしあしハ うれしいにつけかなしいにつれて わすれた事ハない 夕霧 伊左衛門 【左下】 ほんに おもへ バ これ まで ぼゞをふいたかみでハ ふじの山をはりぬき【はりぼて】にし よふとまゝだ 替(かへ)玉(たま) 上ノ八【七は欠番?】 花廊(くるわ)言葉(ことば)の大きに有んす 世の中に絶(たへ)て桜のなかりせバと。どつと昔(むかし)の大通のことの葉。 今とても替(かわ)る事ハあらしな【あらじナ】。サア中の町に植(うへ)たハ〳〵とのくん じゆ【群衆?】。ことしハあたらしく。乱(ミだ)れ植(うへ)に江戸町の角から門並(かどなミ)をはづし 花/盛(さかり)は別(べつ)してのながめ。見へぬ按摩(あんま)がめいわく。いづれへ行 あたつても。花の香(か)のにくからぬハ。色でまろめた廊(くるわ)の蘢(はな)。 今を日の出の全盛(ぜんせい)ハ。花扇?屋の花の井とて。何(なんに)も申/分(ぶん)の なひ無疵(むきづ)もの。前立(まへたち)の新造(しんざう)四人。観音(くわんおん)勢至(せいし)の禿(かふろ)まで 情(なさけ)で丸めた品(しな)かたち。今日此(この)御客(おきやく)バと問(と)へバ。本町邉のむす こ株(かぶ)。色男のきつすゐ。氣(き)どりハ大通なれども。おしき事は 疵に玉とやら。こんな男に生れて女/嫌(きら)ひ。そんなら堀江六間町【浄瑠璃のことか】 かと思へハ。銅壺(どうこ)の蓋(ふた)たて遊(あそ)ひも嫌ひ。どうした事じや合点(がてん) が行かぬといふものばかり。ふしぎに此花の井を。過し浅草 詣(まふで)の折から見そめ。けふ漸(やう)〻と出来し初/約束(やくそく)女/藝者(げいしや) 末社(まつしや)とも引つれて。昼(ひる)からの大さわぎ。サア世の中にハ似(に)た 㕝も有れバ有る。此花の井もふしぎに男嫌ひ。つき出し から三十日ばかり。勤(つとめ)ハ勤けれども只一通りにて。しミた事が 行けぬと。鑓人(やりて)が聞付て強異見(こわゐけん)。何ぼ男が嫌でもこの 一ノい むすこにハと思ハるゝも耻(はづ)しさも忘(わす)れて。初會(くわゐ)からのもてなし。 酒(さけ)が過るやう過す【ず】やら。サア〳〵床(とこ)〳〵とたちまち人切れが無く なり。三ッふとんの上に。息子ハ禿(かふろ)のたそや【誰哉=遊女?】相人(あいて)に。ばけものはなし 花の井も身しまひはやく来て。ちよくら噺(はなし)を本にして 怖(こわ)かるなど。さすが北廊/育(そだち)のあどけなきも。可愛(かあい)きものぞかし。 息子ハあまりの可愛さに。ふたつ枕に引よせれバ。花の井が方から 口を吸(す)ひ。溜息(ためいき)などしげきに。女きらゐも何国(どこ)へやら。帯(おび)の解(と)く 解(と)かぬ論(ろん)にも及バす。すぐに陰戸(かくしど)へ手をさし入てさぐるに 勤(つとめ)のたしなミハ物かハ。そこらぬら〳〵と。屋鋪(やしき)育(そだち)のものヽ目に合ハ ざる女のごとく。入れぬ先(さき)から鼻息(はないき)せわ?しく。美(うつく)しき顏(かほ)の 桜色(さくらいろ)に。二タかハ目【二皮目】。とろ〳〵と。男の首すじへまとひ。しきりに氣ざし たるに。むすここも玉茎(たまぐき)張(はり)さくばかり。押(おし)あてかへども中〳〵這(は) 入ぬハ。道理(どうり)。玉茎の大キなる事なミならず。扨■そ女嫌がしれ たると。次の間に寐(ね)し連(つれ)の。息(いき)を詰(つめ)て聞くもおかし。花の井も そつと手をやりておどろき。マアおまちなんし是ハどうした見事 なるものや。何をかくしやせふ。わつちも人なミならぬ生れて有(あり)んす ゆへ。是までの客衆(きやくしゆ)に逢(あ)ふさへはづかしく。思ひゆんす。ほんに是か〳〵 と和らかな手していぢるほど青すじふとく。亀頭(かりくび)ふくれ上りて 上ノ ロ 心地よく。マアそつと入なんしといふにしたがひ。なをワき出るゐん水 を力にもちかくれバ。やう〳〵頭ばかりこミ入られ。マアおまちなんし。 いつそせつないよ。是がミんなは入ッたら。本ンに死んすしづかに〳〵と腰(こし) をよぢらして請兼(うけかね)るをむすこもたび〳〵の手ごりにやわ〳〵とつかひ 懸(かく)れバ。はやすゝり上〳〵。せつなひなから。そのよく成るにつれてゐん 水あぶれ。わけなきにやう〳〵半分?入て。ふたりが氣をやり夫から 後ハとう〳〵根まで納りしやら。花の井が声しすゝり上〳〵。ヱゝモ いつそとうしんせうね。根まては入りんしたらとけるやうに成ん すよ。アレ又いきんすとの睦言(むつごと)に。むすこもはじめてこんな能ひ事を 覺(おほへ)て可愛(かあい)さがかさなり。つとめの身にいわた帯【岩田帯=祝い帯】まてして 身うけが済(す)んたら御新造さまさ 今いきんすハな馬鹿らしひ 傾城を買(か)ふて遊(あそ)ぶ殿(との)あれバ。夫に買ハるヽ間夫(まふ)あり 世の中に盗喰(ぬすミぐひ)ほどうまき物ハなし。おもしろミ是に有りて 中〳〵女らの誠(まこと)といふは。間夫(まぶ)に極る物ながら一足つかまへに【一束掴に=十把一からげに】 誠なしとハ。うまミをしらぬ大の野暮(やぼ)大通【だいつう=遊び通】の至る所ハ格別(かくべつ) なれど。何もかもして夫から又。金遣ふて遊ふほど面白(おもしろい)事ハ 有るまじ。是大通とも粋(すい)とも称(せう)すへし。爰に有徳なる身代を 大かたに遣ひなくすを一家一門の異見(いけん)も度(たび)〻(〳〵)終(つい)に二親に 勘當(かんどう)の身ぶんと成りても口はへらず。不断(ふだん)大通を一ッはいに云ひ あるくをよく聞けバ。當時何屋の誰と呼(よバ)るヽ女ら。此男を可愛 がり。勘當の後ハ引受(ひきうけ)て。揚屋町に預/喰(くひ)ふち雑用(さうよう)ハ勿論(もちろん)。小遣ひ までをあてがふて置て。かの色男となりて。今宵(こよひ)も新艘(しんぞう)【妹分の女郎】の 七むらが情(なさけ)にて勝手に終の鳴(な)るまへ。うそくらひ【薄暗い】を上/首尾(しゆび)にして。 二/階(かい)へ紛(まぎれ)上り。怖(こわ)ひやりてや若ひ者(もの)の目を抜て。明部(あきへ)屋の恋のやミ に忍バせ。おゐらが【姉分の遊女】にそつとしらせど。昼(ひる)からの大一座。はむき【歯向=お世辞】とやら ふるまひ【振舞=接待】とやら。藝者(げいしや)まつしやに新造あまた。座敷ハ弾(ひ)くやら 調(うた)ふやら義太夫やら長唄(ながうた)やら。らんちきちよんく【〳〵?】ちよんの間をぬけて。 おゐらんか【おいらが?】ハ七むらがしらせにさし足ぬき足。こわひ事かおもしろく 㸦(たかひ)【=互】に抱(だき)付くやら吸(すい)付くやら。男も宵(よひ)より張(は)りさくやうにおやし すましたものを遠慮(ゑんりよ)なくあてがへバ。七越ハつ【=唾】をのミ〳〵。はやく 入なんしいつそ氣がもる【盛る?】やうに成んしたといふに。陰戸をいらへ バ。粹(すい)も野暮も大通も。そこにかわる事ハなく。毎ばん一義に あき果て居る女らでも此うまさ。ヲヽ〳〵出るハ〳〵と男ハいそがしき 中にもたのしミ。ぬら付かせてつわなしにからこミ。二ッ三ッつく 内そこらあぶれてごほ〳〵びちや〳〵。ヱヽモはがゆひはやく根まて 入なんし。うすとんらしひモウどふもなりんせんと持上〳〵ワレハァ〳〵 ともがきちらせバ。男ハしつかふしや余り鼻いきがよかり声が高ひと 手を當るやうに思ひながらも。出し入にひやうしを付て。㕝たらぬ やふに遣へバ。アレサじらしなんする。ヱヽモそれでも。 ソレそんなにいきん すものをと。二ッめのつゞけよがり。能ひさい中を七むらがかけて 来てモシおゐらかんへ。おさつとんがおまへをたづねんすとのしらせに 男ハいまだ氣が行かず。ヲイがつてんじやと起上る七越をむりに おし付て。氣をやらんともがくに。どうしても行けず。七越ハ氣を せひて。はやくやりなんせ〳〵といひながらも男の出し入ひどき にまたきや〳〵。ソレ又やりんすよハア〳〵に。男もまんちうをうのミ にするやうに。やう〳〵しやり〳〵。扨せハしなさ。翌日の晩(ばん)ハ中の 町でゆるりつとを。いひすてふ。ヱヽモどふしんせふねばからしひ わつちを呼んすハね 一之巻終 【なし】 【なし】 【背表紙】 KOHI NO HUTOSAWO. - GEN ZI GO ZIHU YO ZIYAU. JAPONAIS 212