《題:さやあて》 《割書:■くわじ伴左衛門|●なまづ山三》 ■ 〽遠(とほ)からんものは音(おと)にもきけ お客(きやく)はよつてめにもみじめな ものずきは今龍(いまりう)こし【う?】の素人(しろうと)出立(でたち) 今宵(こよひ)くるわの大門(おほもん)をたをせば たちまち極悪(ごくあく)丁度五丁(てうどごちやう)に火事(くわじ)の燃(もへ)わたり ● 〽かくのごとくのもへたちは絶(たへ)なるみ声音(こゑおん)せいはまごつく 女郎(ぢよらう)あまたなり今(いま)やけかゝる仲(なか)の丁|火(ひ)の手(て)いろます その中へふるつた蔵(くら)かかべつちの ■ 〽われはしなすやゐのこりのはりまにぴしやり 夜半(よは)のせめ責(せめ)にやかれてかせき笠(かさ)ゆられて 返(かへ)るか家根(やね)に人 ●〽焼(やけ)る心の金持(かねもち)にねぐら焼(やか)ふぞ 欲面(よくづら)めやけにぞやけしかの家(いへ)と ■〽くらべ諸方(しよはう)の火(ひ)も きへて下谷上のゝ山つゞき西(にし)に消鐘(きえがね)北にはゆけば                  おかゆくらはんやけ小袖(こそで)