安永六年 《割書:日待|御利生》此頃噂 鳥居清長画作 合三冊 【国会図書館登録タイトル「日待御利生此ごろ噂」】 こゝに幸之 進とて こも さいし も あり し 【下へ】 らう人 ありけるが □し の□つ しを はな はだう れひに おもひ 今こう せいな ること をう ら やみ 【斜線の上へ?】 けれ共 □□し□ もかた□ のかわ□□ おへあけくれ わかきむか□ おもひほ□□ □のたのしみ のみくらし ける 【吹き出し】 ふしぎなる かなすこしすいめんの うちにもゝ太郎ま くらかみにたちくわしく わかやくやふすを つたへける 幸之進をは桃太郎がおしへのとふりゆめさめかんがへけるにいかにもりのとふ【如何にも、理の当然なり】 せんなりむかししゞは山へしばかりにばゞは川へせんたくにゆきしときもゝ なかれきたりそのもゝをふうふくひけれはた ちまちわかくなり けるもとこのもゝはかふしんのつかわしめさる のおとしたるもゝなりよつてかふしんを しんじんせばたちまちわかく なるべしとつげにまかせて かうしんまちを はじめける 【右ページ下台詞、かすれ多し】 さて人事いふても【?】 九つまでといふは まちがい人事 いわず□九つ ま□じやげな 【左ページ中ほど台詞】 かうしんまち にちやめしは ちやにうかされ てねられぬ よふにしたもの さ 【左ページ下、かすれて読めず】 □□□□ ま□□□ □□□なし ませう 幸之進はかうしん待にて よちうつやおしすくにてふ づをつかわんとたらいに 水をくみけれは廿 四五のわかきかたちに なりけりこれはふしき ゆめではないかよもや ねつにゆめを見ること はあるまい 「そのとなりに与兵衛と いふものいまたねむいさいちう廿 二三になりけるかかふしん ても なんでもねるが よいとかかまはす 【下へ】 ひくれよりねてあすも かほへひのあたるまてた かいひきなり 女ほうやふ〳〵十九才ていしゆはしらがにて 大ちかいなりこれをおもへはせけんにふつりやい なるふうふもこのやうなることなるへし 【ふすまの横へ】 与兵へはかうしん のよもひくれ よりねてやふ 〳〵ひる しぶんに おきたい ところへいてけれは女房 □□□まいているかゝみ にうつりみな〳〵きもを つふすなにことにて おし事はせぬもの なり 【女房の台詞】 これは まあ どふ した 事だ 【左ページへ】 ち あに ても あか【た?】つ たか おや 〳〵 うら しま 此かたの事 た 幸之進はのそみのとをりわかくなり とふせいふうにこしらいきふ【急】 のことなれはいまゝてのけん ほうこもん【憲法小紋】をあをちや【青茶】 かへしにそめさせ けれはことの外 わかやきその 小もんはやり 今はわざ〳〵ごふく やにてふるてかへし とてこしらへ ける 「わかくなつたゆへ目出度からさけを ふるまわしやれといゝけれは酒たるのかゞ み【酒樽のふた】をぬき一日おふ らいのものまでに【往来の者までに】 せつたいをいたしける【接待をいたしける】 今 □□ といへは さけを かおふと いふもこの ときより はしまり し と ても めつら しい事 【左ページ上へ】 かたちは廿四五なれとはなはた なさけふかくみなさまの あかりよいやうによい 酒をさしづする 【下へ・台詞】 こしゆばかり ては おもひしんを すこし ませま せう うつりかわりし二人つれ幸之進は ま事のとしは八十五与兵へは廿八才 なれ共かみはしらかにてかたちに めんじてかみこはをりこしらへ さらさのひうちもみの じばんはでにこしらへ けれどもごしやうこゝ ろはなくいまのとし よりかた此与兵衛を 見ならひおなし あふなり幸之進は かたちは廿四五 なれとものこ らすくすみ したてにてたもと にてじゆすつまくり【数珠爪繰り】 すこしとしより かたきなり 【右人物の足下】 与兵衛 なん□□□□□ ちよひとゆく きはないか 【左人物の足下】 幸之進 【左ページへ】 こゝに又 太兵衛 といふ もの 大 黒 てんを しんじん しけるが あるよ 大黒 天 あらわれ なんじよく このへね【甲子】をまつるゆへ このつちをあたへん これより両かへやを【両替屋を】 はじめよとの給ひ てみづしのうちに【御厨子のうちに】 いり給ふ これはありかたや かしこまり ました 大黒 てんより さづ かりし こづち にて 両かへ をはしめひに ましはんじやう しなにくらくら ずさかへけり 【台詞】 ふも廿両 ほど をだし なされ ませ 【左ページ台詞】 さて〳〵 きめうな 事だ うら や ま しい せにゝして くりや そうばは いくらじや 四文銭が よいぞ 百両か ぜにをかをふと おもへはそれほど うちいだすなるほ とてうほうな ものなり にしざんで【二朱銀?】 御座り ます か その頃巳之介といふ ものありしがかんらい【者ありしが、元来】 みのとしのうまれゆへ【巳の年生まれゆへ】 弁才てんをしんこうし【弁財天を信仰し】 みまちにはともだち【巳待ちには友達】 あつまり大さわき にてよぢうたの しみけり【夜中たのしみけり】 【台詞】 おやだま を きゝたい 【三味線で唄】 おふさかわァ 【左ページ・顔の前で扇を広げている人】 ヱゝほうどう まるとぬかせ 【左ページ上】 みまちのよおく【?】 にはきやくみな こゝろやすき 人とて御座る 「さてよんとこなき所より そのもとをむこにほし がる五百両のしたく金 じやとふぞ御出なされ とそふだんにくる 【仲人の下、三行ほどかすれて読めず】 ちう七【仲七】はむこの 事たのまれ そうたんに なにいかいお せは【おおせば=仰せば の変化した語】 わしも これから はらく じや ふたおや よろこぶ 【下へ】 かう さつそく しゆ びして あひ □□ に くる ひから【日柄】 を 見 て すぐ に し る し を つ か わ さり ませ 【左ページへ】 よいそう だんてござん すぞへ むすめ やうすを きく いか さま よい お とこ じや うら やましい ことじや 弁才てんを しんかうしゆへ おもひもよら ぬうとくなる かたへむこ入に行 ける 【右ページ下へ】 むかうが とで【?】 ござり ます 【左ページ上】 こよいは二百た 銭の やすい【?】 て なわぬ【?】 〳〵 【左ページ下】 あとを見 やわせ て こんれいしゆびよくとゝのへ なかよくくらし所々より おびたゝしくしんもつものもらい けり 【下へ、台詞】 ごぜんは まだかへ これみづを 入て 下され 【左ページ】 太兵へは きんぎんに ふそくなく いろ〳〵のたのしみ 大せい□□をあつめ て□□くらからず くらしける 【下へ】 ちとどこぞへ でかけ やふ せん せい どこだ ろふの なんでも ふねのある 所さ みどりやァ〳〵 てをたゝき なんし ひへん した ら【冷へんしたら?】 のみ なん す なへ 【下へ】 ふみじ【?】 ごてさんの【ごてたな?】 かほを 見や 【左ページ上】 太兵へは酒のたのしみに あきそれよりたび〳〵 吉原へゆきけるがしやう とくなりにもかまわ ずさんとめじかけ なれと金にことの かけぬおとこゆへし【?】 まいよしそでとめ【?】 ござれせつくのみこみ【?】 とつかいかえるゆへ 大もて いくらつかつてもへらぬ しんだいは大黒天 のおかけなり 【下へ、台詞】 あさづま さんちよ【三丁?】 ひとりん きじや【悋気?/人気?】 幸之進はわかやぎ ふだんさとかよいしける が女郎かいも七千年 ほどすれはあらゆる わけしりとこへいつ てもおふもてむこ入のため になり女郎かいのせんせい となりと【た?】のしみける 巳 之介 も おり 〳〵 かよ い けるか 五百両で もらわれ□□ ほ……【五行ほどかすれて読めず】 なり 【下へ、遊女の台詞】 ただかふかて【?】ものを いつたばかりだやかま しい □んならやふありんす かんにん し なん し 申きく てのさんと【?】 何かよ【?】 さんせん よ むかしからにて ねむりしはしゆすいと いゝしがこれは さんすいの きん〳〵ふし きにこんや ひとつうちにて おちあひたかいに こゝろやすくなり みなしん〳〵の物がたり をして巳之介は このはるまた 江の嶋へさんけい せずみな〳〵を さそいて きんぢつ まいろふと やく そく する 【右ページ下、台詞】 はるは 又 ゑの しまは よいて 【左ページへ】 ふねはよいか たんなこのころは きついおき まりな 三人つれにてやくそくのとをり 江の嶋へ□□り 幸之進は九十のうへ にていくらあるきても くたひれず道中にて はこれにすき たるたのしみは なし 「いにしへの 仙人はこい やつるに【鯉や鶴に】 のり あるき しに 太兵衛は 金銀に ふそくなく どうちうのつちを ふまずいくらのたび もうちにいるも とうぜんなり 「巳之介はちよつとやすん てもちや屋の女さきへ ちやをだしける べんてんしんこうの ゆへきめうなり 【茶店の女】 おちや 上がりませ 【かごかきの台詞】 よいてん きじや の いつはいしやう 【巳之介の台詞】 なゝとき【なんどき?】 だの 与兵衛はかふしんのひくれより ねて□□よりしをくやみ三人 のゑいぐわを見てしん〳〵をおこし ければかうしんのりしやうにても このとふりわかくなり大こくてんの 御かけにてきんぎんにふそくなく へんてんの御かこにて女ほうおつとの としよりのかたちとなりしをいとわす そいとけしおつとのよろこび あさからす 【女房の台詞】 ありかたや 〳〵 【下へ、破れ、かすれあり】 いよ 〳〵 ふ□□ むつ□ し たかへ く□ し ける これ を おも ゑば ずい ぶん ひまち は するが よし 目出度し 〳〵 鳥居清長画