新板 化物一家髭女 新板 化物一家髭女 富川房信画 全 《割書:新|板》化物一家髭女(はけものひとつやのひけおんな) 上 【右ページ、墨で手書き】 明和七庚寅年印本 富川房信画【冨川房信】 【左ページ】 こゝによこ 川郷介 といふさむら いかめさ きごんのしん かむすめ【亀崎権之進が女】 おまんにこゝろをかけたひ〳〵ふみにてくとき けれともへんじさへせす小づとも三郎【小津友三郎】が かたへよめいりせしゆへ【手の下へ続く】むねんやるかたなくあるよ しのひいり【忍び入り】おまんが ねくひをかき【寝首をかき】ひ そかににけいて ける にくしと おもふこい のあたはら してのけ    たら さつはりと したそ 【下へ】 やつこへく内【奴・可内(べくない)】 おたんなしゆ【お旦那衆】 ひはな【?】 と【く?こ?】めつた たいに【めったいに?】 ほへた【吠えた?】 ゆへ あごを ひきさき ましたもふ こ□□…【こつち?】 の□…【のものしや/もうこっちのものじゃ?】 □… 【43行目以降、ほとんどかすれている。可内の足下で番犬らしきものが顎から血を出している挿し絵がある】   【ページ上】 べく ない 此よう すみた ものは ないか ぬかるな ごうすけやつこへく内をともに つれしかげろうはくちのさかなき ものとおもひ みちに て□□【たまし/騙し】 ころし に  する【ころしにする】 おまんど のをころし たことわれ ならてしるものな きゆへ人につけん         も はかられすと それてこりや ころすの かむごい しようだ ウヽ〳〵 よいすいりや うだ【良い推量だ】はやく くたばれ 〳〵 【右下へ】 それより よこ川郷介 おまんを ころせし こと 【その下へ、数行かすれて読めず】 し■■の■は もな■れは □…【こゝろへつ?】 □…【るに?】 □…【かうしう?】 【の?】 【よこ川の足の間】 かたに すこしの しるへを たの み 立のく 【左ページ】 かくてよこ川郷すけは かうしうのかた ど【山?】かけにしのひいたりしか となりむらに ひとりずみの ごぜありけるをみて くわんらいこうしよくむとうのものなれば【元来好色無道の者なれば】 ごう介 此ごぜにたよりおり〳〵 くちきけり こぜもごう介 かしんてい まことと おもひつい にま  くらを かは す 【よこ川郷介の右下】 ついに ふうふ となる 【その下へ】 ほんに みそで はないか【味噌ではないか】 われら かやうな やさしい こゝろは ある  まい よこ川こうすけこせとふうふになり てならいさみせんとのしなん してふうふ月日をおくりしか ごぜたゝならぬ身となり はや七月にそなりにける ごうすけうわきこゝろ □つれそいしかしだいにみ おもくなるをうる さくおりひける 【右下、ごぜの台詞】 おなかで いつそいご くわい■【お腹でいっそ動くわいの】 こちの人【うちの人?】 □… 【帯の下へ】 くた さん せ 【郷介の台詞】 ひよん なことしや めの みへぬおぬ しに おきやあ【おぎゃあおぎゃあ=赤ん坊】       〳〵か てきたら いくじは あるまい 【左ページへ】 よこ川郷介は  ぶどうなる         ものなれば ごせか ことうるさく なりて よはん【夜半】人 しれず ころ し て 【その上へ】 しまはん と おもい あるよ きりころしてのはら にすて 立 のく 【中ほど、横川の台詞】 さあこれ できが かりは さつはり と し  た やれ  〳〵 ごぜに    は こり〳〵と    した 【下へ】 ごぜくるし さ のあまり おつと郷介 かかたさき をくいきり さいご 事類後集(しるいこうしう) ̄ニ曰(いわく) きつね一つの名は 紫夜(しや)とも        いふ 尾(を)をうつて 火を ともし どくろをいたゝき ほくとのほしを おかみそのかしら にいたゝきし しやれ かうべのおちざる こと を ゑてよく 人をばかすとかや 【左ページ中ほど、本文】 さても小津とも三らふ【小津友三郎、おまんの夫】 女ほうお まんを なにもの とは       しらす ころし ゆく       かた 【化物の背中の上、かすれ多し】 しれぬ【行く方知れぬ】 ゆへむねん におもひいさひをかき をきしてかたきを たつねんと 立 いて うら〳〵山〳〵 たに〳〵まてさかし やうすをうかゝ ひける 【左ページ上、小津友の台詞】 人のせいき をうばふ くせ もの 【左下へ】 ばけるは   〳〵 郷ゑもん【?】 こう しう をも【甲州をも立ち退き】 たち のきこゝか しこをあ るきもゝ いさかの へんにて 日 くれ 【屋根の下へ続く】 けれはやとを かりける【本文は23行目に続く】 【女房の台詞】 あるし【主】のるすにわた くしかとめますることは ゆきのたんの上 るり【浄瑠璃】おつとはたこくの るすいつまてもゆる〳〵と とまりなされませ 【女の尻尾のあたり】 ある し の 女ほう【(宿の)主の女房】 三十は か り な る が【三十ばかりなるが】 【その下へ】 よろこひ 郷ゑも んを  とめる 【郷ゑもん=郷介の台詞】 これはよいところへ まいつたわれ□ いそくたひてはなし【急ぐ旅ではなし】 そんならをせわに【そんならをせわニ】 なりませふか 【左ページ右端中ほど】 郷すけやとを【郷介、宿をかり】 かりあるし の女ほう 【左上へつづく、かすれが多し。】 にくと かれ【主の女房に、くどかれ】 よふ く る まて はな     し【夜更くるまで話し】 けるかふと     女     ほうの     かほをみれは    てにかけ      し    へく内   か   その   まゝ    也 おまんか くひ【おまんが首】 郷介をみて から〳〵と わらふ ころ されし こせかゆうれい【瞽女が幽霊】 うらみをいふ 【郷介の袖の下、かすれている】 ■■ど■■し ■■た■■ 【郷介の左下】 ま■ の■■   ■■ なん■■ゆへ □… む□ ■ ■ 【全体にかすれ多し】 やとの女 ほうやう□□ へく内か かほ の □□ □□□ ひげ はへ されこう べをうちつける 【宿の女房の台詞】 □■しをき ろ【?】にてとこへ ゆかしやん      す 【中ほど、本文】 郷すけは きものふ とき 【左上へ】 したゝか ものなれ はやかて かたなを ぬき 【左上へ】 はけものを きりはらい あしまかせ てにけ 【しゃれこうべの左へ】 ゆく 【左下囲み内】 富川房信画 【ここより次巻】 【左ページ左上、大男の台詞】 お だん な おひさ しう ごさり ます 【郷介の袖の右】 それより郷 すけはいのち 【郷介の足の右へ】 かきりと【命限りと】 にけのひ【逃げのび】 【郷介の足の左】 ひといき つ□てむ【ついてむ】 かふを□□【かふをみれ】 はこは □□□【いかに/一息ついて向こうを見ればこはいかに】 やつこ べく内 ■■□… □【戸】 のや ふれをと れは【戸の破れをとれば】  やせかれたる【痩せ枯れたる】女めつき のことく のめの玉 ひからせ三つめのあり【三つ目のあり】 さまたたとへんかた【さま、譬へんかた】 なし ごう介 べく内を きりはらい ゆう〳〵とみちを いそき つしとう【辻堂】に しのひいり【忍び入り】 よの【夜の】あくる をそまちい           ける【明くるをぞ待ちいける】 【縁側】 かゝる所へ てにかけ     し 女ほうのごぜ うしにの りしやみ せんを 引こう たを【弾き小唄を】 うたいて きたる 【その下】 ゑんの下 よりは おそろしき 入道 はい おる 【左ページ】 人のむくいは あるもの か ないも のか むこいしかたじや ないかいなちゝちん ちん〳〵てんてつとん 【幽霊の台詞】 うらめしや郷すけとの おもい しらせん ゑんふ【縁夫】 こい し や 【左下】 ふてきの【不敵の】 郷すけもはけ【郷介も化】 ものにもてあ【物にもてあ】 まししにも【まし、死にも】 のくるひに【の狂ひに】 なつて はたらく 【その下、幽霊の台詞】 いまくらいころ すぞ【今、喰らい殺すぞ】 【左ページ】 おぢいとの【おじい殿】あんまりはねまわるない【跳ね回るない】 じつとしていたまへ ちつ とはなしたい ことも ある てや 小津とも 三郎は つまの おまん かかたき をたつ ねいた   し【訪ね出し】 ほんもう とけんと こゝかしこを たつねある き此所 きたり郷介か ていをみて ふしきに おもふ 【左下へ】 めつたにそはへよるな〳〵めをさま                したら                 おつかな□【い】                    ぞ よこ川郷介 はけもの□【に】 なやまされ ていりきつかれ【意力疲れ?】 きをうし     なふ 【左ページ】 よあけけれは 百しやうたひ人 此ていをみて とつ〳〵ひやう はんする【評判する】 これはとふた なまゑいか【生酔いか】     たゝしきちかいか【但し(それとも)気違いか】 なんてもおつ かないかほの さむらいた 小つとも 三郎よこ 川郷介にくすり をあたへ かい ほうせしかは やう〳〵 せうき【正気】となりだん 〳〵やうすをき けばわかたつぬ るかたきゆへ よろこふ 【下へ】 おかけてたすかりました なにをかくし■■ん おまんといふ女 をころせし よりこと おこりかく の しあわせ 【郷介の右下から刀の下数行、ほとんどかすれている】 □□… 【小津友三郎の下、かすれ多し】 さては□□□くまい□ □□にきをうし なはれし □□なしてまたそのお まんと やらをはな□してに かけめ された 郷介は□□□ かたきも 【その左上(どこから続いているかはわからない)】 しら   を たん〳〵 ものかたりする 【左ページ左上、小津友三郎の台詞】 それかしこそなんしが【汝が】 てにかけしおまんか おつと小津とも三郎         なり 【その下】 なんしを うたんと此 とし月いかい くろうをしたはやい いざかくこゝろしてしやうふ〳〵 【右下端へ】 さてはさふてあつたか ひよんなやつにたなお ろしをしきかせた し よし〳〵【笑止笑止】 【足の下】 かへり□ちに【返り討ちに】 してくれ     ん さあ□□め きりこめ   〳〵 小津友三郎つまの かたき郷すけをやす〳〵 とうちとり 本こくへかへり 此よしとのへ 申あけしかは 御ほうひと してあぞう くたされ いとも〳〵     さかへ 【左下へ続く】 けるそめて たけれ 【その上、殿様の言葉】 ほんもうをたつせ られ御てから    〳〵 【右下すみ、小津友の台詞】 ありかたふ ごさり ま す 【左下、かこみ内】 富川 房信 画