208 【印「特別」】 648 【題簽】 津以曽無弟甚六     完 【検索用タイトル:津以曽無弟の甚六】 安永九年 ◯   め 208 【印「特別」】 648 【題簽】 津以曽無弟甚六 《割書:通笑作|清長画》 三冊 こゝにいけやの九平といふ ものありさま〳〵とかき かなんしけるがしやう とくりちぎにて てんのめぐみにより そふおうよりよき あきんとゝなり 家のよつきに一子をもう けなを吉松とつけはつ めいにておとな しくいしねつき とじなんが でき なを甚六とつけ てふあいかきりなくよろこぶ 【図中の言葉】 あたまてん〳〵を しろよいこわどれ だ あすは おやす み だから よく ならいやれ かゝさんおべんとう を よ こ し な 【右丁】 たとへのふしに そうりやうの 甚六とあにの なにはいくらも せけんに有物 おとゝの なには よか ろふとおもひおやぢのおもひ つきにてつけたれども 百のくちが四文 ぜにて十六文 ほとぬけあな いちをすればいつでも きんちやくのそこを はたきたこを あけるといとめ ばかりもちめかくしのおにゝなると てまへばかりなぶられそのうへ 百とのかしおにゝ なればしやふがい 【左丁】 おにのかぶはぬけづ とのさま事 をしてあそ ふとむまに なりぞふりかくしはかいをくふて せなかをつちたらけに しみのなるきははな からしれるあにの吉松 ともだちつきやいもせず かんがくいんのすゞめはもうきふ をさへづるしせんと下いちりん をみならひまへかみの内から そうばわりまておほへ おとゝの甚印を見て きのどくにおもふ 【右丁、下の言葉】 ごよふ しんに なれ かし こはない よ 甚六だん〴〵せいじん しけるゆへよふ〳〵 てならひにやり けれどもついたちの やすみから廿五日を まちかね天神さまの あづきもちばかりのあてゞ てならいをしてとかく やすみをたのしみししやう さまがかせをひくとよろ こびなんでもやすむつもり てならひはさかにくるまを おすごとくといへとも つくへにかゝると ふねばかりこいで いるあとのものにおい ぬかれてもかまわずさうし ゑはならわいてかほへばかり ならいぎやうぎがわるくて ししやう さまの 【左丁】 事 まて わるく いわせ この かわい さに あの ししやうは ねつから おしへぬ から ほかのへ やつたが よいと いふよふに するは こまつた もの なり 【右丁下の言葉】 にんきよ【?】 かくこは あたま かくも ふるい から なんとも おもわぬ 【左丁下の言葉】 しかう して 源太郎 との なら わつ しやい 【左丁。師匠の妻の言葉】 もふとう ふやかま いりまし たおひる になさり ませ 【右丁】 もはや吉松はよいわかいものになりおとなしきうちに よめをもらわんそうおうなる所へやく そくしてきわまり吉日をゑら みしるしをやるつもりになり あほうな子はなをかわ ゆいとおとゝの甚六 ひとりまへにていかぬ やくしやなれといつま ても天川やのでつち のやうにまへかみても おかれずゆいのうのしう ぎをさいわいにけんふく させけるがこどものとき はつめいよりこのくらいがよいかけんと でいりのいしや とのゝ見たて そればつかりが たのしみは百両 とみのふだにきつ ているやうなもの なり 【右丁下。甚六の言葉】 びんが あつく ても よい いたく てならぬ 【右丁下から左丁下へ。吉松の言葉】 次介 とん ほんたに【本田(髷)に】 して やら しやれ 【左丁。九平の言葉】 こふくやへ 人をやつて みやれなん ぼふた かさね ても もふでき そふ なもの しや 【右丁】 さい上吉日なれば吉松に よめをむかへふたおやの よろこびいわんかたなく みな〳〵せんしうばん ぜいをしゆくしそう りやうといふものは ばかにきわまつた ものではなし すこしゆふな ものなり よりとも公は しばいては はんとうにすれと そうおやだまと なりよしつね公 よし中こうは ちゑがこぼるゝ ほどあつても そここゝと いそう ろふに成 給ふそれにひきかへ 吉松そうりやうの 【左丁】 ようにはなくこせ 〳〵とせいをだし もの事にぬけめ なくかせきけり 【右丁中ほどの言葉】 てんきも よろしう べつして めてたふ そんじます 【右丁下の言葉】 うつ くし いもの だ と しや く といふところか ある 【左丁右下の言葉】 おとゝがこなたの おせわでござ ろふたのみ ます 【左丁左下の言葉】 おふくろ さまはさぞ おうれ し かろう 【右丁】 いけやのかない こんれい にていそ がしけれとも 甚六ひとり ひまじんにて うまいものだらけゆへ よろこびけるさどいきの おんなともおとふとごに つまらぬもを【と?】うわき する 【左丁】 子ゆへのやみのおやこゝろ 甚六人なみにしたくおもひ はゝは ありとあら れぬかじ きとう あさくさの ぢぞう さまほかの うちへは つき まいり りしゆぶんをたのんだり かみさまなにしうしの へだてもなくその おかけやらあつい さむいぐらいわ いふやうになり けり 【右丁下の言葉】 とふぞ まい日 おきやくが あれば よい うまい ものなり まんちう が あかで よい 【左丁下の言葉】 なに事も かみしんじん おふきに おせわ だアい はんにや はらみつた 【右丁】 甚六かみさまの おかけにてすこし はなしもできる やうにになりければ なんぞけいこごとでもはじめたらば 人ずきやいもできるやうになろふと いしやのでんはくをたのみかねは せう〳〵いつてもよいとおやじ までいゝけるゆへ甚六にすゝめる ぬしにはなにがよかろふといふ おもひつきもないとさま 〳〵の けいを くじにしてだいしさまのおみくじと いふみにてふりいだす第一はんの くじにうたひ第二つゝみ 第三 さみせん第五上るり第六 けんじゆつ第七はな第八 はいかい第九がくもん第十 ちやのゆこれほどけいこした ならばそれからはこゝろまかせじゆ しゆかう【十種香】れんが【連歌】こきう【胡弓】どら【銅鑼】 めうはち【妙鉢】にいたるまでなら つて おけば 【左丁】 そんはなし まつ一ばんに うたひ から けいこを なされと すゝ める 【右丁下の言葉】 まづけい こにゆくと はなしが できて よい 【左丁下の書き入れ】 けいこのくじ をかきつけ をく   【右丁】 せけんはれてのけいこ事うたひに あがり人つきやいものう【?】 はいがよくまづ でしいりに せんせいも ぢん六を とうへん ぼくと見たて とうぼくをはじ めして わき を うたふ やうになればだん 〳〵におもしろく なりみわのうたひとちかひ よるはくれどもひるもくるよふにせいをいだし うたひ かう【謡講】の あとて じぐち でも いふ 【左丁】 やうになりけり 【右丁。下の言葉】 二郎兵へさま わたくしともは □ かつ た もふ た□ のりは すみ まし た 【右丁。左の言葉】 「こんばんは二八でなしに ちやめしでよい 【左丁。上の言葉】 なか〳〵 甚六どの あじを やります 【左丁。下の言葉】 まつかぜは おもしろい上るりで ないからきゝては ひとりもない 【右丁】 甚六うたひにせいをだしすうたひ にてはおもしろくないとはやしでも うたうきになりひやうしをおぼへとく 小つゞみへ あがり はせをお はしめておけのそこをたゝ くやうにみしやうにたゝき もみのしはんてやはし でもうつきのところへ ともだちばなしに来り なんとそのやうにやあ はあといわすに二上り でもさんさがりでも わつさりとした事 をな□いなわとしが ゆく所にとんだ よいところがある とてまへの しうしへ すゝ め こ む 【左丁】 よつぽとうつくしいと きいてさみせんもなろう きになりおかざき女郎しゆ でもないとねこのつまを はじめおびから さきへほそくして ぞうげのばちの さへちりへまき ゑにじやうもんを つけ ふところから たしかけちつとも はやくおぼへて やねふねへでもでゝ ぎをんばやしでもひき たくてうしをあわせるも しらでつめのいとみち ばかりいぢり人のならふところ〳〵と きゝおぼへそら〳〵【そろ〳〵?】ざがけりにてやつて見る 【右丁。下の言葉】 さみせん もちつと ひかねは よくない あまり よいと げびる マア はア 【左丁。図中の言葉】 みとせ うへで はなし て ちん〳〵 あい 〳〵 きつい もん だよ 【右丁】 さみせんも人のけいこを 見てまだるくおもひ 上るりときかかわりまづ かとりひめの道ゆきといふ ところをすてんへんからさん のきりをやるつもりにて せんちんもんどうやとらふう の二の口はおぼへもせぬさき にいもせ山のはる太夫ばを のぞみまたなんぞあり そうなものといわれて さんかつのかきおきばの 【左丁】 □んをもつて来りし ゆへしやう事なしに はじめたとへていわば みやまきとみやこの はなふつつりわんき【りんき?】 せまい ぞと たし なんで 見てゝもなさけ なやといやなこへにて一だんおぼへ そればかりのもとでにてほう〳〵の くわいをあるきうまい〳〵とほめ られてまいのきでは ちつにゑらいものだと おもひしん上るりがでると 五日ほどゆかのしたへきゝにゆき ならひもせぬちうしんくらの 七段めのかけやいのとこ□はん ないではやくぶそくゆら之助をまさ太夫の きでやりつけ大ぶつのはしらときてふといの うへなしなり 【右丁中の言葉】 千ぼうが たてくわいは いつだの ぶん しや さんは よつ ほど ひなわ くさく なつた 【左丁中の言葉】 かぜを ひいたが いければよいが 【右丁】 けいこ事にてむしやうにふけてすこしは男の たしなみとけんしゆつ 【剣術】へあがりぼうのいつても おぼへぬうちたしなみがあると 見せたくめつきをこわくして うちの子共やめしたきの てをねぢつていやからせゝん せいのてのうちを見てとかく 人かなけたくなりやみの ばんにさみしき所へゆきやつて 見る所がむかふはさみしきを あるくくらいなればぢよさいわなし 【左丁】 なまひやうほう【生兵法】 大きなめにあひ うちにはかりひきこみ けれはそのやふにきを つめてはどくしやきを やしのふには花か きついくすりと いけはなを ならわせけれハこれもおも しろくなり梅やつばきや すいせんのなをしらぬものもなし その 外 小 ぐさの なも おほへず しきの 花おもとりあつかわぬ うちになみきいけの はたではなのくわいもふせんを敷 まくをうちくんしゆの中でおち をとるきで上下なとででかければふたおやなからいけはなは心 やすき ものかと おもふ 【右丁。下の言葉】 かゝるをはづしてしたゝか なめに あいに けるが いちの てとかけいだし けいこして人を なけるにはあら ずなけられぬ やうにする 事をしら ぬなり 「すいさん せんばん いつ□□で いつても□きのないやつだ 【左丁。右下の言葉】 はなはたつ ふりとなされ かん せいに たれ でも 【以下不明】 □と に□□ きり なご か もふ ござ ろふ 【右丁】 ちやうすはひといろのやく なれはさしきにいてもち いられひきうすはなん てもこされ〳〵たいつも【?】 するかかへもぬ□といふやつで三度の てまか四度とはいかす弐度もじなり【?】 いけはなもくちもとのけいこにして 又はいかいにかゝり甚光となひろめの すりものおふほうせうに 三十五へんすりにしてもふ はいかいするといふかほで あるきつけあんばいなと はさておき三句のわたり てにはさりきらいもしらず ばんにはそんぞそこの 【左丁】 はいかいはらみ句を四つ五つ こしらいまへの句にも かまわすむしやうやたらに おつつけてみれはしゆ ひつのはたらきにて ててんにてもなると 大のかうまんそれから その句をゆくさきで つかいまじ〴〵として いるはたくわんの石を六つも 七つもおくよふなるものなり 【右丁。下の言葉】 こいつれて うまいところ 女ほうは どうだの ないぞ 〳〵 ついぞ   ない 【左丁。下の言葉】 このぢうの かふらいやは しやわせを いたした 【右丁】 甚光しよ〳〵に つきやいが ひろく なりすこしよめねば はつかしくかくもんを はしめ四しよごきやう のありがたき事をば そこ〳〵におほへとうし せんをならいおせんすを ちとはいけんとよみたゝ いちぎやうものでも ひやうぶでもよめる よふになるとばんしの 事をからめかせうまれも つかぬはなをたかくして 大てんぐから うわまいを とるくらひ のかふまん になり さわかしき 事をきらいしつかな所を 【左丁】 このみからのほうにもちかよりたく【唐の方にも近寄りたく?】 こゝろのまゝにならねばこうしもときに あわぬとおふせられしととほうもなく たかくとまりほうつを見るとりくつ づめにしたがりびやうき見まいにゆくと いしやのやうな事をいゝこのぬける くらいのかゝもんはなか〳〵なみや はたいていの事てはなし 【右丁。下の言葉】 たいぶ ふじんが 見へ ます せいろふ とも見へず とんと げせ  ませぬ 甚六ひとつとしてならひ ゑたる事もなくさま〳〵に かゝり二七日がひまとちやも はじめこゝろやすきものゝ はなしにまづちやのゆのふう りうはとりあつかうとかぐが【?】 おもしろくくいものかやほて なく にはの こしらいが や□□か□ さしきにいつ【以下破れ】 みなしも【以下破れ】 ずきの□【以下破れ】 ときゝか【以下破れ】 おするかみ【以下破れ】 みづを のむと いへども みつもたまらす【以下破れ】 なりにはいつはい□【以下破れ】 うへ十人まいのど【以下破れ】 【下段に数行文字が続くが破れとかすれでほぼ読めず】