化物七段目【読みは、ばけものしちだんめ】 【別本が、東京都立中央図書館 加賀文庫にあり】 【新日本古典籍総合DBで画像を見る→https://kotenseki.nijl.ac.jp/biblio/100053320/viewer】 天明四辰 化物 七段目 幾次茂内著 上下 【著者名は巻末にもあり、幾治茂内と見える】 天明四辰年 こゝにみな〳〵さまごぞんじのみこしにうだう【みこし入道】がまごにのつ べ【別本より判読】らにうどう【のっぺら入道】といふものありてつく〴〵おもひけるはとか く【別本より判読】このごろはどんなにおもしろくばけてもにんげんも わからずばけかたもおやのゆづり もくろくどをりはばけてし まふどふもしかたなくこれ からはばけものもぶつほう【仏法】 にいらんとかいちやう【開帳】を せんとだんかうする おらがだんなでら本 じよのねかう、 いんさまでした【本所の回向院のダジャレで猫ゥ院、本所の回向院で江戸時代に出開帳が良く行われた】 らはやとおもふ いかさまかい ちやうをして みよふまづな にがよかろうと おもわつしやる 子くいのゑんま はどうだろう 【絵の下】 おれが おもひ つきは ばけち そう【化け地蔵】か いゝとお もふはへ さると大 へびいろ 〳〵とは やりそふ なかい帳 ぶつをかん がへけれども とかくきり どをしの ばけち ぞうが よかろふ とさう だん きま りね こをいん へもゆき ていろ〳〵すゝめ こみみけおせう【三毛和尚】も【?】 かねもうけのすじ なればさつそくとくしんし てはやかまくらへゆきたの みくれよといわれけるゆへ むかいにいで だん〴〵と ゆきろく がうのわたし へゆきしに 山〳〵のゆき とけてみづ せいはやくわ たるべきよふも なしへびはおよいで ゆかんといへども さるはみづはねから しらずいかゞせんと【水は根から知らず如何せんと?】 あんじけるところへ 此川のあるじすつほん いでゝわたしてやらんと いふふたりは大きによ ろこびすつほんにのりて わたりける 〽すぽんとおちたらさる くつてなるまひ 〽おあんじなさることはない かへりにもわたしてあげよふ 【右ページ下】 これはよいところで おまへにおめにかゝり おかけてわたり ますしかしどふ もへびかわるく てならぬ【きびがわるいの洒落か?】 さるとへびはさうしう【相州】 きりどをしへゆき 魚好(きよかう)おせう【魚好和尚?】を すゝめいろ 〳〵とだまし うけてたのみ ければぢうじ【住持?】 がてんしけれ ばさよふなら当 三月より四月まで 夜かづ六十やがあ いだかいちやうにいた すべしとそうだん きまりちか〴〵に むかいにまいるべ しとてかへり けりそれからきう にふだをこしらへて しよ〳〵へ高札を たてる これはとんだこと だおいらもいゝあ わせてよい まいりをし ようぜへ これはめづらしいこと だだん〳〵あつた かになるからいゝじ ぶんだはやり ませう 【右ページ下へ】 とふ〳〵かいてう があるそふでご ざるとふ からさた があつ たあり がたい ぢぞうさま だそふだはやり ませう はゝァ れいほう【霊宝】 もいろ〳〵 ある そふだ 【左ページ立て札】 開帳 大磯化地蔵菩薩 霊宝数多 本所猫ゥ院に於而夜数 六十夜ヶ間開帳令者也 月日 猫ゥ院 おみやげにう づらやきをおか いなさい なだい〳〵 三月ついたちの よよりかいちやう しけるになにが めづらしき ことゆへわれ も〳〵と さんけい ぐんじゆ なして ほうのう もたく さんにお さまる ひきかいる は目がう しろに あるゆへ たつてあ るけばひと につきあたる ゆへこゞんで いるがいゝ し【?】いゝ たてをする ばけぢぞう はこなたでご ざいちかう よつてごゑん をむすばれま せういちどはい するともがらはけん なんをのがしたま わんとのごせいぐわん でござる おみゑいてつほう よけのまもりは これからでます 【挿し絵・傘】 岩 【挿し絵・回向柱】 天明四年魚三月 猫好大和尚導 天下泰平国土安栓 【天下泰平の上の梵字風の文字はでたらめ】 【挿し絵・左ページのちょうちん】 女猫中 いづれもしん〴〵の ともがらはちかくへ よつてはいあられ ませうまた三十 三ねんでなければ おがむことはなりま せぬぞ これにたてゝござる はそのむかしみ こしにうだう きんときとたゝ かいしてつの ぼうでござる しよ〴〵にたち きづがござる これにかけおくところのうた はくずのはのうたで あべのやす なにわかれ しときの うたでござ る子わか れのめう がうと申 ます このき ねはみな さまもごぞんじ でござりませう そのむかしたぬ きどの がばゞを つきころ したるき ねでござる ちかう よつて はいあられませう ゑんむすびのまもりは これからでます このおまもり をごてう だいな されてつねに くはいちう なされば おもふなん によにそわれ ます 【右ページ下】 どうぞわたくしが てがまつすぐに なりますよふにな されて下さりませ かいてう大き にはやりところは いふにおよばす きんこくゑんごく よりわれも〳〵 とさんけいくん じゆなす中に もふしぎなるは両 ごくばしへでける いぬのいざり子 どものときくる まに両あしを ひかれける此 かいてうはじ まりしよりぐわん をかけしん〴〵 しければこし たちて なをりける とて 御 り せうを うり あるく さてこんどのかいちやう大きに やまがあたりければなんぞめづ□【ら?】 しきみせものまたはしばゐを たさんとそうたんする さるかせわにてたんばの むじながむすめをかいだ さんといふ へび おれがお もふはかふ きしは いをたして 上るり きやうけんを しようそ れにつけ てもこつち にふたが いない からそふ 〳〵かみ がたへよび にやりませう 【右ページ下】 ばけぢそうさま 御りせう のしだいい ざりのこし がたちまし たさか なだ な【小石川の肴店町(さかなだなちょう)のこと】のい ぬがけが はへました ふしきなことだ ごろうしろ 【左ページ下】 さる おいらも こんとは大きにかね がもふかつたからま□【づ?】 むすめもさるひきが ところへうるはつだが やめにしよふ ぶたをよびに やりしところに さつそくき たるゆへみな 〳〵よろ こふ 此たびぞん じつき ましてかい ちやう いたした ところに おもひの まゝには やります からなんぞ しばゐを とりく むつもり ゆへおまへ をよびに あげた わたしも わかいじ ぶんはかるわ ざでおち をとつた こともあつ たさ なるほと こんどの かいちやう のさた とふから【疾うから?】 かみがたでも ひやうばんで ござりました わたしもいち どはさんけいの つもりでおり ましたところへ よくぞおむ かいくたされた ゆへそふ〳〵 まいりました 【右ページ下】 さる おまへがおいで なされてはおも いつきができ よふてつほう ばでいのしゝ のみがわり なぞといふ しくみはどふ たろふ 【「鉄砲場の猪の身代わり」は『仮名手本忠臣蔵』の五段目】 いたち わしはとかく あまりせまいと ころをとをつた らちみか【け?】して いたちがな ゆふで ならぬか らやは りれい ほうの いゝた てがいゝ やくさ 【「ちみかして」または「ちみけして」の意味がよくわからない】 【いたちがなゆふで、は何かの駄洒落になっているかもしれないが、元ネタがわからないので意味もわからない】 【左ページ下】 いかさまいたち どのがみちをいつ たりきたりする とみちをきろ たとて【別本より判読】 みへ 【いたちが道を横切るのは不吉の前兆なので縁起がわるいと言っている】 【左ページ左すみ】 なかいや が□ちつとして【がの下はゴミか?】 いるもよか ろう それより りやう ごくの 川ば たへ しばい をたて じやうるり【浄瑠璃】 きやうげん ちうしん ぐらをはしめ ければとほうも なくけんぶつが はいりよるも 四つ すぎ にはき【?】り おとし ふだうり きりもふ すのふだ をいたし とんだ ことなり 【左ページへ】 きりは よあけ まへだ そうだ からよが あけたら ちやや にとまつ てこよふ 【右ページ下】 これ あにさんいまがとんだ いゝところだみていきねへ いまから百【?】にしてみせよふ 七だんめじや 〳〵 木戸ばんはねづみ がよかろふといふこと にてねつみきど ばんになる これねづみき どのはじめなり 【左ページ簾の下】 帳【大福帳の一部か】 【右ページ上】 ぬらさん かわたしや【ぬらさんか、わたしゃ】 おまへになめ こすられ あんまりく さゝにふいて いるわいな 【おかるが由良之助に酔いつぶされて、酔いざましに風に吹かれている、と話すシーンのパロディ】 【右ページ下】 そこに いやるはおさるか なにしていやるようか あるおりてたも 【右ページ左下】 ゑんの 下にはなを ゑつほむ【つっこむの意?】 まいは〳〵 ぶたまじ【ぶたの洒落であるには違いない】 くあるは 【豚の台詞は「縁の下には猶ゑつぼ」を「縁の下に鼻をゑつほむまい」と洒落ているらしい。後半このようにしか読めないが、意味がよくわからない】 【 豚は仮名手本忠臣蔵七段目の斧九太夫に相当し、斧太=ふた(豚)の洒落。 原作では縁の下で文を盗み読み、「縁の下には猶ゑつぼ(笑壷)」となるシーン。 ここでは文ならぬ鮒を捕まえて、鼻を突っ込もうとしているので、 「縁の下に鼻をつぼむまいは~」という洒落だろう。ゑは調子をとっているだけの文字とみなしています。】 【左ページ上と屋根の下】 あたりみ まはしぬら のすけ つりとう ろうのあ かりをふき けしのむな まふなはいけ すよりいたち のよふすこま 〳〵となめら れそろ【なめられ候】では かどらずなま のふなよとう ら山しくお さるはうへよりみおろせど よめさるま なこなりどぢやう【泥鰌?】とも 【読めざると猿がかかってる】 しれずかた てをのべてとるとて【「のべ鏡」にかかっている】 おとすし ぶかき【渋柿】ゑんのした にはぶたゆふ がなめおろすふな【「ふな」は「ふみ」の洒落】 おちたる かきにぬら のすけみ あけてう しろへかくす ふな【「後ろへ隠す文」の洒落】 【左ページ左下】 まんじうよしか おこしふなまんじうと いふことはこのことなり 【鮒の饅頭売りなので、舟饅頭=遊女にかかっている。お猿=おかるは夫のために身売りして遊女になった。由良之助はおかるを好条件で身請けするので、まんじゅうよしか=まずよしか、の洒落?】 たん〳〵かいてう はやりみせもの を出しければ 大きには やり□【け?】り とうざい〳〵 たかふはござり まするがこれ より申あげま するさてごらんな されまするとをり 此ものはたんばの くにのむまれでご ざりまするおやが にんげんの子をた べましたむくいに てからだはたぬき かほとてはにん げんでござり まする此身のごう のめつするため【業の滅するため】 おの〳〵さまがたへ おめにかけまする このものが げいと申ては ふへたいこに あわせまして はらつゞみを うちまする このぎしゆび よくお めにと まりま すれば せんの【先の】 かたはお【方は、お】 かはり〳〵 【右ページ下】 なるほどめつら しいものでござる こんなものもみて おくかいゝはなし のたねだ あの口上 をいふあふむ【を言ふ鸚鵡】 はもと両 ごくみせ 物にてた から口 上を よくお ぼへて いゝ ます つくり ものでは ないかの 【左ページお囃子】 ひとろゝ〳〵 てれつゝ〳〵 てれつゝ てん〳〵 しんあれば【別本より判読】 とくあると【別本より判読】 たとへのと をりのつへら【のっぺら】 入道がおも ひつきで人 げんをばかして もこはからず たとへこはがらした とてなんにもなら ずとおもいなをし こんどのかいてう大きに ぜにもふけしけれはこれ でらくにくらされるとまた らいねんもなんぞおもいつ きをせんとおもう まつ〳〵ぜにかねは ふへるこれほどめで たいことはない ぶたとのもとうぞ【ぶた殿もどうぞ】 ゑどにござれはいゝ今は ゑとにもずんどこなた のなかまもすくない それよりぶたにもあつくれいを いゝみゝづそばをふるまいそのうへ かねをたんとやりかへしけり 【右下】 またらいねん まいろう 【左下】 此たびは ぶたいぎ【お大儀を豚にかけている】 でごさり ました 【左下枠内】 幾治茂内作