菜譜序 むかし聖門にあそんて稼圃(カホ)をつくらん事 を学ひんとこへる人ありき是宝の山に 入て手をむなしくせむ事をはちて一 巻(ケン) 石をつかむかことし聖人かれをまなふが 小人なることをいましめ給ふかくのことき 小道も亦見つへき事あれとも君子は 泥(ナツ)まむ事をおそれて学はすしかはあれと もわかともから無徳なるのみかは功(コウ)と言(コト)を 立つへきざえなし又 耕(タガへサ)すして食にあき おらすして温(アタヽカ)にきて世の財(タカラ)をついやし天 地の間の一 蠧(ト)となりなす事なくて此世く れなは鳥獣と同しくいき草木と共にく ちなん事いとくやしけれは宝玉をすてゝ 土石をとるに同しき事ほいにあらされと せめては又我 ̄カー力に及へるかうやうのいやしく さゝやかなる文字をつくり老 圃(ホ)の教を たすけて民生の業(コトワサ)の万一の小補となり なん事をねかふのみこゝを 以世の道学 の諸君子のそしりをはちすと云事しか り時に宝永始のとし春分の日     築州益軒貝原篤信書す 【左丁】     惣論 凡 諸(モロ〳〵)のうへ物先 種(タね)ゑらふを第一とす種あし  けれは天の時地の利人の力大半すたる先  たねをとるときゑらひてよきを用ひあし  きをすつへし或 簸(ヒ)て其 秕(シイナ)を去或ゆりて  去_レ之又水に入て其うかへるを去其中の最  大にして円満なるを用へし秕をうふる事  なかれ又わきはへ小枝に出来たるこまかなる  実(ミ)は用ゆへからすはやく小枝ひこばへは切  去へし 【右丁】 春月下_レ種 ̄ヲ法 日あてよき肥てやはらかなる  地をゑらひてそのほとりに草木 菜蔬(サイソ)なき  所を種をうふる地とすそのほとりに草木菜  蔬あれは蟲生す冬月より沙地には田中-の  土或黒土を半ませ赤土或黒土には沙土を  半加へて耕し糞を多くしき又黒泥を多く  乾(カハカ)して加へ正月より二三 遍(ヘン)耕し乾(カハカ)して其上に  しは〳〵糞をうすくかけ乾して又耕し地を  細に柔(ヤハラカ)にして後種をまくへし日かげ或 瘠(ヤセ)土  堅土或熟耕せすして種をまけは苗生しか 【左丁】  たく生すれとも長しかたくして甚おそしそ  の細なる物は沙土或灰糞に和してまくへし  不然はしけくして苗長せす凡種を下すに  はうすきかよし 凡菜蔬を種るには畦(ケイ)種と漫(マン)-種との二種あり  畦種はすちうへなり漫種はすちなく見たり  に手にまかせてうふるなり先うへざる以前に  地を数遍熟耕しうねのおもてを平らか  にして塊(ツチクレ)をこまかにくたき或さり漫種する  には糞をまきちらして乾(カハカ)し粗其上を浅く耕  すが如にして種(タね)をうふすぢ種(ウヘ)するにはうふへ  き所を地面より少ひきくして其 溝(ミゾ)に糞を  しき乾かして後うふへし漫種溝種共に種(タね)に  糞土を拌(カキマゼ)てうふ後に糞水をおくためには  漫種はあしくすちうへにして若地せはき所にて  地をおしまばすぢをせばくしけくまきて  後に中のすちは菜少長してぬきとるへし  大根 菘(ナ)にんしんはうれんけしちさからしか  ふらいつれもすちうへよし糞水をそゝくによ  しかねて糞を多くひろげたるはちらしまき  もよし子(ミ)の大なる物はたねの上に少土をおほ  ふ小なるたねはたなおほひすへからすけし  なとはたゞはゝきにてはゝくへし風にちる  物は其うえにわらなとおほふへし其物の宜  きに可(ヘシ)_レ随 ̄フ又沙地を数度耕せは地気ぬけ  て地力よはし地によるへし 夏月に屡(シハ〳〵)耕して和なる地に種をうふれは土(キリ)  蠶(ムシ)多し堅土をに俄に耕し和らけて種れは  蟲すくなし麦のあとはきり虫すくなし湿地  泥土をはたかへしてよく日にほして後うふへ  ししからされは虫生す 農政全書云凡菜子をまくに生しかたきものは  皆水にひたして芽(メ)を生せしむへし如此す  れは生せすといふ事なし〇今案するに  はうれんにんしんなとは先水にひたして  後うふへし夏日は久しくひたすへからす実(ミ)  かたき物牡丹蓮子かきつはた美人蕉なと  或かたからされとも生しかぬる物の実(ミ)はたね  熟したる時そのまゝ地にまけは来春必生  す実をとり置て来春うふれは生しかたし  或日凡ものたねをうふるに先人のはたへに久し  くつけてあたゝめ或鶏のかいこと同しく母鶏に  あたゝめさせてよし 去年うへたる地に今年又同し菜をうふるを俗に  いや地と云もろこしの書に底と云夏の菜はい  や地をきらふ茄 豇豆(サヽケ)夕顔 刀(ナタ)豆 南(ボウ)-瓜(ブラ)冬(カモ)瓜 菜(ツケ)  瓜(ウリ)甜-瓜 越(アサ)-瓜 烟草(タハコ)なと皆しかり去年うへたる  物を又今年同地にうふれはさかへす必是を考  て他地にうふへし若園せばくして同所に同物をう  ふるには他所の土を用ひ土をかへてうふへし  菊をうふるにも如此にす秋冬植る菜はいや地  をいまず蘿蔔(タイコン)菘(ナ)蔓(カブ)-菁(ナ)萵苣(チサ)葱 蒜(ニンニク)菠薐(ハウレン)莙薘(フダンサヤ)  罌(ケ)-栗(シ)蠶(ソラ)-豆(マメ)なと庭をきらはずうふへし大麦小麦  なともいや地を嫌(キラ)はす大根菘の類はいや地に  うへたるか殊によし 諸菜をうふるに地に糞と灰を置て其上に即  うふるはあしくかねてより其地に糞をしきて  ほし其糞すでに土と同しくなる時種を下す  へし若かねて糞をしかずはたゞの土にうへての後  苗長してやうやく糞水を以やしなふし又苗初  て生して小なる時糞水をそゝくへからすかれや  すし 凡蔬菜をうふるにははやきをよしとすはやくう  ふれは長しやすく実(み)のりやすく陽気盛なる  かゆへなり 月令広義曰春耕するはおよそきによろし冰(コホリ)と  けて地あたゝかなる故なり秋耕すははやきに  よろし天気いまたさむからさる時湯気を地  中におほひとらんとするなり今案たねを  うふるも又同し春はやくうふれは寒気いま  たさらさるゆへ生しかたし秋おそくうふれは  寒気すてに地に生してたね生しかたし生  しても長しかたし 又日 種植(シユシヨク)第一のつとめは糞をあつむるにありと  いへり糞をあつむるの法一ならす人の糞尿人  のゆあみたる水 六畜(チク)の糞せゝなきの泥水  かまとの灰かまとのやけ土 溝(ミソ)の泥河泥魚鳥を  洗ひたる水魚鳥のわた又くさりたるわらかや  及草木の葉皆是糞となる又朝夕糧米を  洗ふ泔(シロミツ)を器を定めそれに入置て久しく  くさらかし菜根ことにふきの根にそゝくへし半  は溺(イバリ)を加(クハ)へてよし白水はかりそゝけは後に  地かたまる故なり 暑熱の時草木に水をそゝくには朝夕よし日中  をいむ晩に地気いまたさめざる時水をそゝ  くへからす早朝そゝくをよしとす晩にも地  気さめておそくそゝくへし 罌粟(ケシ)胡蘿蔔(ニンジン)萵苣(チサ)なと種子(タネ)をまきて後日に  あたりかはきてうるほひなけれは生しかたし  まきたる上に竹のたなをかまへむしろこもを  おほひ時々水をそゝけは生しやすし萵苣(チサ)な  とは北の屋かげ日のあたらさる所にうふるも  よし生しやすし湿おほけれは苗生して後根  虫生して枯る故に日おほひしたるは時々の  けて日にあつへしかねて地をかへしてよくほし  又土のそこに灰をおけは虫生せす胡蘿蔔(ニンジン)  大葱ちさなと夏の頃うふる苗はきり虫くら  ふ事多し又 蝸牛(カタツムリ)の小なるかくらふ事多し  必虫おほしたひ〳〵すきかへして日にほして  うふへし又生地には虫すくなし生地とは久しく  かへさゞる地なり 月令広義曰 臘月(シハス)の雪水に菜穀のたねをひた  してうふれは虫くはす旱(ヒテリ)にいたます〇たねを  くしらの油にひたせはむしくはす 史記の貨殖(クハシヨク)伝に千樹の棗(ナツメ)栗 橘(ミカン)漆 桑(クハ)竹 梔(クチナシ)を  うふれは其富千 戸(コ)侯(コウ)にひとしき事をいへり  又桐 梓(アツサ)朴(ホヽノキ)杉桧柿梨 荏相(アフラギリ)棕櫚(シユロ)等をうふる  も其益同しかるへし古語に十年之 計(ハカルコトハ)在_レ種(ウフルニ)_レ  樹 ̄ヲといへり土こえたる山-中原-野乃空地を用  ひて其土に宜しきをうふれは十年の後は必  大に益あり 閑情 寓奇(クウキ) ̄ニ曰園につくる菜はいつれも不浄を  用るゆへ甚けがらはし水にひたして根をいく  さひもよくあらひ葉はわらばけにてうらおも  てよりなでてあらひ用ゆへし是日用の物世  人のつねに心を用ひていさきよくすへき事  なり愚謂神前にそなふる饌(セン)に菜を用ひ  は殊にいさきよくあらふへし山菜水菜は  をのつからきよし 圃のかたさがりなるは土の性なかれて地やせ菜の  出来あしゝ段を多くつけて地を平(タイラカ)にすへし  或菜をうふる一段々々をろくにするもよし 万の菜蔬に水をそゝく事地やせ根土堅ま  りてあしく糞水をそゝくへし糞一桶に水三桶  加(クハ)へ大 瓶(カメ)に入三四日置て後是をませてそゝ  くへし久不_レ雨 ̄フラは水を少そゝきてよし水多  くそゝきて地を堅くすへからす但苗を初て  うへていまたありつかざるには糞水をそゝ  くへからす水をそゝくへし 高木の下にひきく菜をうふるはあしからすさ  さけなとの高く生するものはあしゝ 諸菜類の名字と形状は別に大和本草にしる  したれは此書に詳にせす 菜譜巻之上                 貝原篤信編録   圃菜上 蘿蔔(タイコン)【左横に「オホね」】又莱菔(ライホク)と云和名おほね古歌にかゝ見  草とよめり俗に大根と云をよそ菜の内に  て尤益ある物なり諸菜の第一とすへし  〇種(タね)を取法霜月に根を引て一所に埋(ウヅ)め置  たるを正月に根ふとく本末同しきをゑらひ  てひけを去地の間壱尺あまりつゝ置てう  ふへし又霜月に根のひけを去一両日日にほ  してうふるもよし大根は根高くあがるゆへ にうへたるまゝにてほり出さすして置たねを とれは見いりあしゝほりいたしたる根をふか くうふへしうへて後やせ地には糞水をそ そく長して後風にたをれさるやうにませか きをすへし実のよく入たる時のきの下につ りてほし皮を去 子(ミ)をとりて置へし一説に 大根牛蒡たねをとるに根の三分一より下を 切すてゝうふへし其せい下にゆかすして 上にのほる故見よくのる或云たねをとるに は根の半より下小根のある所より下を切 すてゝうふへし三分一より下を切にかゝはらす 〇農政全書曰四時皆うふへし然とも秋初を 尤よしとすやわらかなる地よろし五月に 五六度すき六月六日うふ先地をしは〳〵すき たるかよし又曰三月にまきて四月可_レ食五 月まきて六月可_レ食七月まきて八月可 _レ 食地は肥土によろし糞水をはしは〳〵そ そくへしうすくふへし又曰地をゑらふ事 生地によろし生地とは去年か此春よりうへ 物ありていまたすきかへさる地を云うへもの 有し跡は地かたくして虫いまた生せす生地 よくすきかへしてよし先かねて地に熟糞を しきうふるときは灰糞に子をませてまくへ しまきて後しけきをぬきてうすくすへし しけきはあしゝうすけれは根大にして味よし 尺地に二三本あるへし〇月令広義曰肥たる 土又沙地によろし露水をおびて地をすけは 虫を生す〇居家必用曰去年のふるたね立 夏を過てかねて熟耕したる地にうふれは五 月に根大なりおひ〳〵にまきて苗をとるへし 〇大根をうふるにかねてうなきのほね又かしら を取おき黒やきにして大根たねにまぜて うふれは虫くはす菘(ナ)蔓菁(カブラ)をうふるも同し 地をかねてより屡(シバ〳〵)ふかく熟耕し糞をしき 其地をよく日にほして其後に子をまくへし 如此なれは糞すくなくしても根大なり六月 にうふれは早く長して虫はます根も大なり おそくとも七月上旬を過へからすおそけれは 虫多くしてさかへす根小し蠧(ムシ)を毎日取つく すへしよしみ柴と云木の葉を煎してかく れは虫死ぬ其後雨ふり柴の汁去て葉を 採(トル)へし苗こまかなる時小便をしは〳〵そゝけは 早く長してやはらかに味よし菘(ウキナ)蔓菁(カブラ)も同 しはしめよりうすくうへ苗生して後しけき を多くぬき去てうすくすへししけゝれは 根小なりあづ土のやはらかにふかき地にう ふれは根甚大なり山城の長池の辺尾州筑 後なとは地よきゆへに根大なり〇居家必用 に十二月に大根穴くらをほり其内に架(タナ)を作 りさかさまにかけ置穴の口をふさくへし心そ こねす久に堪(タフ)〇大こんの類多し三月大根と いふ物あり常の蘿蔔と同し時にうふ或少お そくしても可也二三月にいたるまて根不_レ 老味 甚辛し又もち大根といふ物あり三月大根よ り根大なりうふるとき三月大根に同し葉 は地につきて生す根は土中にかくる是三 月大根にまされり四月まて不_レ老長して後 移してもよし是ほりいりな也伊吹大根あり 其根ねすみの尾のことし守口大根あり長し つくしには小(コ)大(ヲホ)根(ね)あり小也野に生す正二月に  ほりて葅(ツケモノ)とす味からし又他方に尾張大根あり  相州はだ野大根赤大根等あり 蔓菁(カブラナ) 農政全書曰うふるに多きを求めず只  地よき所家のふるあとにあつまりたるほこり  土をひろけて新土をもかねてより置て其  上にうふへし若ふるあとの土なくは灰を厚  さ一寸はかり敷てうふへしあつく多きはあ  しゝ先下地をよくすきて七月の初めうふへし  うるほへる地にうふへからす地かたまりてあ  しゝ又曰蔓菁(カブラナ)は民食をたすけ凶年をわた  り飢饉(キキン)をすくふ凡凶年に久しく菜をのみ食  して穀をくらはされは顔色あしくなる只  かふらと菘とを久しく食しては色あしから  す其根と茎(クキ)にうるほひあるゆへなり苗はし  めて生してより子をむすふ前まて食ふ  へし根は冬月にいたりて味とし春は薹(クヽタチ)を生  す菜中の上品とす四月に子を取て油とす  又曰うなぎの汁に其子をひたし日にほして  うふれは虫くはす又曰正月より八月まて月  ことにうへてよし又曰春たう立たるをつめは 子を生する事おそし又日子をゑらひう へ生(オヒ)出て小きものをぬき去食す毎本相 去事一尺許若うつしうへは長五六寸なる とき其大なるをゑらひて移(ウツス)へし又曰うふ る法先草をさり雨過て地を耕す雨ふ らすは一日まへより水をかけ地をうるほし 明日よくすき作(ナシ)_レ畦(ウネヲ)或うねを切或 漫(ミタリ)にまく 上に土をおほふ事一指の厚 ̄サ ほとなるへし 五六日の内雨あらは水を不用雨なくは水 を少かくへしおほけれは地かたまる苗生し て一寸より以上にならは糞水をそゝくへし又云 沙土にうふへし沙土ならさる所には多く草 灰を用て地を和くへし土かたけれは根大な らす又曰かふらのみのる事おそし梅雨(ツユ)に あへは多くはみのらすしいな多しうふる時 たねをひてしいなを去へし或ゆりてよし 子(ミ)の大にして円満なるを種へし若 秕(シイナ)を うふれは根大ならすして葉は虫くふ八月に 種れは葉 美(ヨク)して根小なり唯七月初うふ れは根葉共によし〇居家必用曰肥地を六 七遍耕し土を細にしてうふへし子はふるき がよし乾うなきの汁に実をひたしてうふれは 生して後虫くはす子をとるをは茎を折取へか らす〇蔓菁を一名に諸葛菜(シヨカツサイ)と云諸葛孔 明 止(トヾ)まる処の陣に兵 士(シ)に必 蔓菁(カフラナ)をうへし む六の益ある事を劉(リウ)禹(ウ)錫(シヤクガ)嘉 話(ワ)録にしる せり故に諸葛菜と云 蔓菁をうふるに先 かねてより地をふかく熟耕する事二度糞 を敷てほし雨を待て後又熟耕しうねを 切て子をうふるへしうふる時子を糞土に和し てまくへし苗生してしけきを抜きやうや く抜てうすからしめ虫あらは毎日とりつく すへし苗長して後糞水をそゝき或 畦(ウね)を 切てうへたるには糞を其間に敷へし或曰宅 中は虫多し六月十日より前に早くまくへし おそくまけは七八月湿熟の時虫生して くひつくす且おそくまけは冬中には長せ す只春に備ふるのみむ虫はをくひつくさは そのまゝ置正月に至て薹(クヽタチ)生るを取へし 二月におはるかふらも菘もたねを取には  茎立をとるへからす枝多きを去へし又宅  中には十一月に郊(カウ)外にあるを買取てうふへ  しうへて後糞水をそゝくへしやうやく葉を  取茎をとり正二月には薹(クヽタチ)出るを折取へし  是春中の嘉蔬(カソ)とすへし凡かふらを作るに  糞をしは〳〵そゝくへし〇一種すはりかふあ  り根大なりうすくまきてしけきを去て  相さる事一尺余なるへし糞をそゝけは甚  大なり根上にあらはれてすえおきたるか  如し〇油菜(アフラナ)と云物あり一名 蕓薹(ウンタイ)と云菘  にも蔓菁(カフラ)にも似て別なり葉茎は味おとる  田野に多くうへて其実をとりて油をしほり  とる西州に多くつくり畿内に上(ノホ)す三月に  花さく花 黄(キ)にして満地(マンチ)金のことしうへやう  かふらにおなし 菘(ウキナ)《割書:ミツナ|ハタケナ》本艸綱目農政全書其余諸書を考  るに京都の水菜はたけな近江のうきな兵(ヒヤウ)  主菜(スナ)鄙(イナカ)にて京菜白菜といへる皆菘なり  ほりいりなと訓するは誤なりうへ時うへやう  蔓菁に同し苗長してうつしうへてよし如此  すれはさかへやすし種をまきたる所にその  まゝ置しけきを早くはふき去もよし味  よき事蔓菁にまされり又飢饉を救ふに  よし根葉茎ともに食す但白朮蒼朮を  服する人はいむへし又ほし物として其葉も  根も大根にまされり正二月 薹(タウ)【左に「クヽタチ」】出つ味尤よ  したねをとるには茎をおるへからす枝を去  へし京都の水菜味すくれたり次に近江菜  根大にして味よし天王寺菜江戸菜なとも  よし江戸菜は根長くして蘿蔔(タイコン)ににたり又白  菜あり味よし又一種おそなあり正二月まては  さかへす三四月かふら菘なとつきて後長して  栄茂す糞を多くかくへし葉の色こく青し  味少おとれりされと他菘のすきて後久し  く残りてよし〇近江の菜づけ賀茂の  酸菜(スイナ)のつけ物名物なり味すくれたり 芥(カラシ) 月令広義曰八月たねをうへ九月に別に  うねをおさめて分ちうへしきりに糞水  をそゝくへし農政全書曰其種一ならす七  八月うふへし苗長して移しうふへし厚 く土かひ草あれはほり去又日八月にちら しまきし九月に畦を治め分ちてうふ糞 水をしきりに灌(ソヽ)くへし本艸時珍日白芥 は八九月にうふ最狂風をおそる大雪には つゝしんてまもるへし〇冬おほひをすへし 不_レ然は風寒に葉枯る〇月令広義日芥 菜は末伏にうふへし末伏は七月の節に 入て初の庚の日なり〇白芥子は薬に入 実(ミ) 尤からく葉大に味よき事他の芥にまされ り凡芥は蘿蔔(タイコン)より少おそくまくへし或日 苗長して十二月に移しうふへし芭蕉からし と云あり其葉ひろしいらなといふものあり 葉の両 旁(ハウ)きれてきさみあり芥の類なり 菜となして食すつねの芥にまされり 本艸時珍曰花 ̄ノ芥葉多 ̄く_二缺刻(ケツコク)_一如_二蘿蔔英 ̄ノ_一と あり是いらななるへし凡芥はつけものと して味よしされとも性よからす一種実多 して葉のすくなきあり実がらしといふ春 不老(フラン)あり葉大にしておそく老(ヲ)ふ尤よし とす 胡蘿蔔(セリニンシン) 菜中第一の美味なり性亦尤よし農  政全書曰三伏の内にうねうへにし或こえ地に漫  種ししきりにこえ水をそゝけは自然に肥大也  三伏の内とは夏至の後第三庚より立秋の後  初庚まてを云〇根の色黄なるをよしとす  四月下旬五月初にふるたねを以うふ又六月に新  たねをまくかねて沙多き肥地をふかく耕し  て糞を多く其上にしきあつき日にほす如  此する事二度地をやはらけ上をろくにし  塊(クハイ)石を去種を二日水にひたし後沙土に拌(マゼ)  てうねをなし二尺五寸ほとのうねに三すち  にまく一所に五六粒まく後にぬき去へし間  とおくまくへし上に又糞土をうすくおほふ  厚けれは生せす生して後にしけきをやう  やく多く抜去へし稀(マレ)に有ほとにして後  よき比になる如此なれは根大なりかやうに  ふるたねを四月にはやくまけは日にいたま  すして生しやすく五月雨の内に長して  六七月の暑にもいたます但暑月には時々  水をそゝくへししけくまけは根小なり或日 ふるたねをまけははやく薹(タウ)たつ畦(ウね)うへに すれは後に糞を敷によし又新きたねを うふるには種を家に納むへからすかねて地を こしらへて子をとる時にすくに早くまくへし 但暑月にはうへて後日をほひして時々水を かくへし不然は日にいたみて生しかたし生し て後もおほひして時々日にあてしは〳〵 水をかくへし如此すれは甚人力を費すたゝ ふるたねを用ひて五月初にうへてよし不 然はことしのたねを六七月にはやくうふへし 八月にまけは日おほひせす水をそゝかすして 生す又虫を取の苦労なし又朔日まきとて 毎月朔日にまけは苗年中たへす小なるを 引てとるへし〇たねをゑらふには花開く時 細なる枝花をみな切去へし不然は秕多く 子小にして生して後其根肥大ならす二月 にはたうたち根老て味なし其内早く根 を取へし十二月正月の初め大こんをおさむる 法のことく早くほりてか乾土にうへおけは老 る事おそし園史曰潮の沙地に宜し  六月にまきたるは七月其苗をわかちうふ  七月にまきたるは八月にわかちうふ根はいと  につらぬき風ふく処にかけてほして食す  るもよし〇又野胡蘿蔔あり本艸綱目胡  蘿蔔の条下に見えたり俗にやぶにんしんと  うふ胡蘿蔔に似たり食ふへし味おとれり  根は小なり生茂しやすし木かけにもよし 韮(ニラ) 埤雅曰韮者久也一たひうふれはいつまても  ひさしくある故なり爾雅 翼(ヨク) ̄ニ云正月色黄に  していまた土を出さる時味尤よし韮黄と名  つく種樹書 ̄ニ曰韮をうふるにはみぞを深く  してくぼき所にうふへし水をかけ糞をかけ  んためなり李時珍か曰根をわかちうへ子を  うふ 農政全書曰九月に子を取二月下旬に  子をまき九月にわけてうふ十月にわら  の灰を以てにらの上に三寸はかりおほひ  其上に土をうすく置けは灰風にちらず  立春の後灰の内より芽(メ)出るを取てくら  ふへし又曰行をなしすちをたてゝうへ両う  ねの根一所に付さるやうにすへし鶏糞を  用てこえとす尤よし冬月は馬糞をおほふ  へしうふるにうねを深くしねふかくうふへしし  からされは根あがりてあしゝ一年の内五度ほと切  取へしきる度毎にあとに糞水をかくへし〇  月令広義曰根久しくしてましりむすへはしけ  らすわかちて老(オヒ)根をつみさりてうふへし〇  本艸に五月食すれは神をやふるきるには  日中をいむ二月に食して尤よし蜜(ミツ)と牛肉  に同食すへからす〇うへて後年久しくして  地かたくなり根しけくむすぼれたるをはほり出し  わけてうすく植へし上にわらあくたをかくれは  きえやすし剪(キリ)口に灰を置へし間遠くうへ時  々小便をかくれは一茎より二茎を生し葉大  にして味よし又俗にがいと云にらあり冬は葉  枯て見えす其他は皆にらと同し和にして  味つねのにらよりよし薤にはあらす薤はらつ  けうなり 蔥(キ)【左に「ヒトモシ」】和名きといふきは一字なる故に後世にはひ  ともしと云わけぎかりぎなといふも本名を  きと云ゆへなりうす青き色をあさぎと云       は浅葱とかくへし葱色のうすきなり浅黄と 書は非なり〇農政全書曰四種有冬春二種有 子をとりてうすくひろけて陰乾(カゲボシ)にす七月に 地を数遍耕してうふ四月に中をすきて後 かる高くきれは菜なく深(フカ)くきれは根をそこ なふきるには早朝よし日中あつき時伐る剪(キル)事な かれ不 ̄レ_レ剪は不_レ茂(シケラ)剪過(キリスコセ)は根あかる八月にして やむへし十二月に枯葉と枯 袍(ハカマ)を去へし如此せ されは春しげらす 又曰二月に葱を別ち六月 に大葱を別つ七月大小葱をうふへし夏葱を 小と云冬葱を大と云〇王 禎(テイ) ̄カ曰葱をうふるに は時にかゝはらずひげをさり少日にほし間遠く 根をしけくうへて後あらぬかを糞にませて 根にをくへし園史曰葱は鶏糞を以てやし なふへし〇葱二種あり一種冬春わかちと るをわけぎと云冬葱なり一種五月に盛な るあり俗に五月葱といふ夏葱なりつねに かりて食する故にかりきと云わけきは十月 に苗を分てうへ正月三月にわかちとり五月 に根をおさむ又かりて用るにはそのまゝ置 てかるかぶ大になりたる時 分(ワカ)ちうふへし此冬葱 味尤よし葱を食するには先よく煮て悪臭 を去へし此二種の葱にも実あり葱の類はた けにあるにわらあくたかゝるをいむいさぎよくす へし松葉なともかゝるをいむひともしのたねをわら につゝめはかるゝひともしの類いつれもわらをいむ〇大 葱四月に子を結ふ黒くてひらしかねて地を耕し て日にほし糞を敷きほして又耕し地を細に して子の熟したる時即種をくたし水をかく苗 生して日てりをおそる上に棚(タナ)を作て日をお ほふへし時々日にあつへし湿すくれは虫生す七月 の頃長して移しうふへし〇大葱をうふる法両 間を広くし相去事二尺はかりにす溝をふか くほりて溝中にうふ初一時に根を甚深くう ふれはくさる長して後両間の土をやう〳〵に溝 の中に培(ツチカウ)へし一時に多く土うふへからすしは〳〵 培ひて根をふかくすへし如此すれは白根なか し白根の長き味尤よし一所に五六茎あつめ うふ大小各類を分つへし大小ましはれは小は大 にせかれて長せすうふる時葉を切へからす長  して根を分ち取て食へし又四月子なりての  ちその茎を切去宿根より新葉生するをも  可_レ食又冬間かりて食す其あとより新葉生  し春に至て肥大になる冬春ともにかりても  よしかりて宿根をのこせは久しくありかり取へ  しおよそ大小葱共にやはらかなる沙地に宜し  糞水をしきりにそゝくへし小便尤よし又湿お  ほけれはきりむし出来又かたつふり生し皆きり  つくす事あり用心すへし 小葱(アサツキ) 八月に種をくたし五月に子を収(ヲサ)むうへやう  ひともしに同し本艸に胡葱ありあさつきと同し  からす 蒜(ニンニク)斉民要術曰やはらかによき地によろし三遍熟  耕し九月初うふ種 ̄ル法 隴(ウね)をきりて手を以てうふ  五寸に一かふうへてよし〇農政全書曰六七月に  小蒜(ヒル)をうふ八月大蒜をうふへし又曰蒜をうふる  にはすちを作りて糞水をかくすちうへにする  かよし又曰うふるにかふことに先麦 糖(カス)少許を下  すへし地は虚なるに宜し肥地を鋤(スキ)てうね溝を  立て二寸へたてうふ糞水をかくへし〇大蒜に  其実末に生せすして本の方根より三四寸上  にみのるありつねの大蒜は末にみのる凡大蒜  は甚臭あしくしてして常に食しかたしといへとも  効能多し人家に必 貯(タクハヘ)置へし食毒をけし  腫物にしき衂血(ハナチ)にすりくたきて足のうらに  ぬり衂血やみて早く去へし去されはいたむ又  灸治に用ひ痔瘡を治す又麪と肉を食する  に用ゆへし本艸に夏月是をくらへは暑気を  解(ケ)すといへり源氏物語帚木にこくねらのさう  やくを服すとあるも蒜の事也暑を解する故  なるへし此外猶其功多し 薤(ラツケウ) 本艸日からけれとくさからす斉民要術に軟(ヤハラカ)  なるよき地を三さひ耕し二月三月にうふ秋  うふるもよし葱をうふるには三を一 本(カブ)として 薤  をうふるには四を一本(カブ)とす一尺に一 本(カブ)うふ葉生  して攏(ウネノ)中をしは〳〵すくへし草を生せしむ  へからす根を取には葉を剪(キル)へからす地をふかく  し培(ツチカヒ)てよし白根長くなる農桑通訣に曰うふ  る法韭と同し月令広義にうねみそを立て  うへ牛馬の糞とぬかとを拌(カキマセ)て上におほふ八月  にうへて来年五月に根を取〇時珍曰八月に根  をうへて正月にわかちて肥地にうへ五月に根をとる  〇 薤(ガイ)一名 ̄ハ藠(ケウ)子俗にらつけうと云は辣藠(ラツケウ)の字   なるへし根はすみそにて食し煮て食す或糟   につけ或醋一合醤油二合に二三十日許ひたして   食す皆よし本艸を案するに薤の性よし曰三   四月生なる者をくふ事なかれ 紫蘇 農政全書曰二三月下 ̄ス_レ種 ̄ヲ或宿子在 ̄テ_レ 地 ̄ニ自 ̄ヲ生   又曰肥地にうふれはうらおもて皆紫なりやせ地に   生するは背(ウラ)紫にして面青し居家必用 ̄ニ云肥地   を熟耕し五穀を種るか如くす〇二月初まくへし   陰地に宜からすこえてやはらかなる土を耕しう   ふへし葉をは梅雨の前後早く取へし性よし久   旱にあへは葉の色かはりて性あしく葉うらおもて   紫なるをゑらひ取虫を去洗ひて半日日に   ほして後かけほしにすへしかさなりたるはわかつ   へしわかたざれはくさる〇朝鮮紫蘇はうらおもて   紫なり味も性もよし〇紫蘇は長せんとする   時梢をつみ折へしわきより枝出て葉多し   糞をいむ 蓼 水辺又は湿地に宜し秋穂を生す小蓼春  夏早く穂を生するあり又大蓼あり穂甚  大なり豊前彦山に多しひこたてと云つけ  物とすへし別に又大蓼あり又唐蓼とて葉つ  ねのたてより大に色紫なるあり小蓼より味  はけしからすしてよく凡たては魚毒をころし肝  気をさる是又菜中のかくへからさる物也但おほ  く食へは血をへらし津液をかはかす性よからす  煮汁味甘し 胡 荽(スイ)夏月に子をとり八月にまくうすくうふへし  冬春長す南 蛮(ハン)の語にこゑんとろと言その実  も葉も生なるは臭甚あしゝされとも悪臭を  よくさるおよそ臭あしき物を食してくさき  とき胡荽の子(ミ)を少しくらへはたちまちきゆる生  魚肉の腥き物猪肉鶏肉又かあしき物に少く  はふれは腥気悪臭たちまち去る疱瘡を  わつらふにかあしき物又はけかれにふれて色あ  しくなるに胡荽子をせんしてかへにそゝくへ  したちまちなをる子を末して小器に入  置て時々魚肉なと腥きものにかけて食す  へし今此物の益ある事をしれる人すくなし  王禎 ̄カ曰宜_二湿地_一 ̄ニ衣以_レ灰 ̄ヲ覆_レ ̄フ之 ̄ヲ水 ̄ヲ澆 ̄ケハ則易_レ ̄シ長 ̄シ宜_二  肥地 ̄ニ種_一 ̄ルニ之 ̄ヲ 薄荷(ハクカ) 時珍曰三月に宿(フル)根より苗を出す清明前  後根をわかちうふへし〇日あてよき所にうす  くうふれは甚茂る糞尿をいむ〇膾あつものす  いものなとに入れは香気をたすけ腥気を去る  きさみてくはふへし長せんとする時梢をつみお  れはわき枝多く生して葉しげる四五月に早く  葉をとる六月に又葉をとる葉をつみ取て日  に一日ほし其翌日かげほしにしてよし茎小に  して気かうはしきを薬に入と本草に見へた  り倭俗是をりう薄荷と云是を用ゆへし一  種ひはくかと云有気かうはしからす用ゆへからす 蒔蘿(ウイキマウ) 小 茴(ウイ)香ななり春日あてよき地をかへし細  にして先水をそゝき子(ミ)は新しく香きを用てうふ  或雨ふる時うふへし夏日のあつきにいたむには  日おほひすへし旱(ヒテリ)には水を澆(ソヽ)く秋にいたり熟  したる子を漸々に摘(ツミ)取へし十月にからをきり  去て糞土にて根をおほひ三月に去へし又宿  根(ね)より生す宿根は十月に土うふへしと月令広  義に見えたり又 蛮(バン)語にいのんどゝ云物あり茴香  と同類にして別なり年々子をまきて生す冬  は根かれて宿根より生せす 山葵(ワサヒ) 辛き物の内味尤よし順和名抄に山葵山  薑の字をわさびと訓すしかれとも漢名を別  書におゐて未見す高山の上寒地に宜し平  原の里に宜からす〇わさひなきとき作りわさ  ひをする法からしをすりてしやうがを加ふるへし 番椒(タウガラシ) 近世 朝鮮(セン)より来れり故に高 麗(ライ)胡椒と称  す其形代大小長短 尖(とが)れるあり円(マル)きあり上に向ふ  ありしたに垂(タル)るあり肥 壌(ジアウ)の地に宜し一所に種を  うへて苗生して後うつしうふへし或好 事(ズ)の人  は盆にうへて鑑賞す其実よく乾きたるを  細末し置て胡椒山椒の粉のことくに食品に  加へ用ゆ李時珍食物本草註言無_レ毒宿食を  けし胃口を開く 菜譜巻之中   圃菜下 萵苣(チサ) 農桑通訳 ̄ニ曰先水を用て種をひたす事一  日湿地の上に布を敷子を其上に置盆椀を以  合 ̄セ_レ之 ̄ヲ芽(メ)生(ヲヒ)出る時うふへし秋社(シウシヤ)の前にも正二月に  もうふ 本草曰正二月たねをうふ肥土によし紫  ちしやは有_レ毒 月令広義曰八月たねをくたし  十月に分ちうふしきりに糞水をそゝく〇ちさの  類数種あり葉長きあり紫色なるは毒あり  うふへからす只葉大にしてたうおそく出おそく  老(ヲヒ)てさかり久しきあり是をよしとす五月ま  て食すへし他の種は四月に老(ヲヒ)て薹(クヽタチ)早く生す  うへやう沙土をよくかへし糞を敷て又かへしみ  を水にひたし沙土糞土或灰にませてまくへし  長して後移しうふへし後に糞水小便をしは〳〵  澆(ソヽ)くへし七月に早くまくへし又時を追てやう  やくまけは常にあり日かけにまけは早く生  す寒きときは不_レ生子は六月にみのる薹(タウ)た  ちて後おりかけ置てよしよくみのると云久旱  すれは薹長せすして枯る又葉を多くとれ  は薹生せす実を取をは三月以後葉を取へからす土を  かひてよし雨久ふらすは水をそゝくへしくきは皮を  はぎて膾とし梅づけに加へてよし南 京(キン)ちしやと云  物あり葉大にして花黄なり味よからすおらんたち  しや四五月青き花さく葉に光なしうるはしから  す朝ひらき夕にしほむ冬はわらにて包むへし  葉しけりて白く生にてもくらふ 蘘荷(ミヤウガ) 斉民要術 ̄ニ曰宜 ̄シ_レ在 ̄ニ_二樹陰 ̄ノ下 ̄ニ_一 二月 ̄ニ種_レ之一たひ種  れは永 ̄ク生す亦不_レ須(モチヒ)_レ鋤(スクイ) ̄ヲ微(スコシ)須(ベ) ̄シ_レ加_レ糞 ̄ヲ以_レ土 ̄ヲ覆(ヲホフ)_二其上 ̄ニ_一 八  月 ̄ノ初 踏(フンテ)_二其苗 ̄ヲ_一令 ̄ム_レ死(カシ)不 ̄レハ_レ踏(フマ)則根しけらす九月 ̄ノ中 取_二傍(カタハラ) ̄ニ根 ̄ヲ_一為(ナス)_レ葅(ツケモノ) ̄ト十月 ̄ノ終ぬかを以おほふへしおほはさ  れは寒にいたみてかるゝ二月にはらひさるへし〇八  月以後は上をふむへしふめは根しけりて来年花多  しわかき時茎を食し夏秋花を食す花を生る  に夏秋二種あり六月に花を生するあり七八月  生するあり疑冬と一処に栽(ウフ)れは不_レ茂(シゲラ)疑冬根と  たかひに相 妨(サマタ)くれはなり樹陰(コカゲ)にうへてよしこかけな  くんは畦をなして他の菜のことくうへ夏は其上にこも  をいおほふ或其西南に扁豆夕顔南瓜等をうへ高 棚(タナ)  を作て蔓(ツル)をたなにはゝせ旱を避(サク)へし俗 ̄ニ曰蘘荷は  甚鐡をいむ鉄器にてかるへからす鍬(クハ)にてほるへからす  一処に久しくありて鋤(スキ)かへさゞれはしける雨しけき年  長茂す春茎をきれは秋花を生せす 疑冬(フキ) 旱(ヒテリ)をおそる木かけにうふへし糞水糟汁或 泔(シロミツ)  と小便と当分にまぜ合せてしは〳〵そゝけはしけり  て味よくやはらかなり八九月にすきて根土をやは  らかにして改うふへし京畿にははたけにうふ尤よし  花は臘月より生す生にてすりてみそに加(クハ)へあたゝ  めて食す味よし塩つけみそつけもよし本草  綱目に疑冬の説詳ならさる故ふきを疑冬(クハントウ)にあ  らすといふ人あり李時珍か食物本草を見る  に疑冬なる事うたかひなしふき初て生し葉  小なるを銭ふきとて葉どもに食す二月より四  月まて茎を食す〇一種つはと云草ありその葉  茎ふきに似て光あり秋黄花をひらく本草には  見えすふきのことく皮をさりよく煮て久しく水に  ひたし置て食す其味ふきのことし性寒なり  諸毒をけす尤魚毒をころす河豚(フク)の毒にあたり  たるにもみて汁を取て服せしむへし甚験あり  すりて赤腫につくれは消すしるしあり蒸煮  てほし物とするもよし此草も古書に出たり 莧(ヒユ) 農政全書二月に下_レ種 ̄ヲ三月下旬移 ̄シ_二ー栽 ̄フ干茄畦  之旁(カタハラ) ̄ニ_一同澆(ソヽ) ̄キ_二-灌(ソヽケ) ̄ハ之 ̄ニ_一則茂 ̄ル時珍 ̄カ云三月散-種 ̄ス六月以後  不_レ堪(タヘ)_レ食 ̄ニ〇莧 ̄ノ類多し白莧赤莧紫莧又またら  有白莧尤よし唐莧と云近代唐より来れる故  名つけしにや圃中にみたりに子(ミ)をまき置くへし ̄ヲ自  生して茂盛す是亦夏月の佳蔬なり旱年尤  よし〇莧のくき長くなる時はやくつみ折(ヲリ)てよしあ  とよりわか葉しげく生するを取べし度々おりとる  へし 馬歯莧(スヘリヒユ) 是莧の類にあらす其葉馬歯の如く其性  滑にして莧に似たれは馬歯 莧(カン)と云又和名をすへり  ひゆと云も同意なり本草に蘇頌か白其葉青  く茎赤く花黄に根白く実黒きゆへに五行草  と名つくすりて腫物につけ脛(ハギ)瘡にぬりて能治  す夏月圃中に自生すすみそにてさしみとす  又実を取てはたけにうふへし肥地に生したるはや  はらかにして味よし性甚寒冷なり脾胃虚寒  の人にはあしゝ 地膚(ハヽキヽ) 苗長して梢(コスエ)を早くつみおれは其枝しはし箒(ハヽキ)  に用ひ菜として食するにも枝多くしげりたるが  よしわかき葉をはあへ物あつものひたし物としむ  してほし物とす性あしからす漫撒或しけくまき  苗長して移しうふるもよしうつさゞるは甚長しや  すし糞と土うふことを用ず陰地にも生長す老(ヲヒ)  むとする時切て可_レ為_レ帚切 ̄ル事八月の節の比を  可(ヨシ)とす南-蛮-帚とて細-枝繁-生する有しけりて  うるはし食すへし帚にすれはよはし不可用 菠薐(ハウレン) 農政全書曰七八月の比水を以子をひたし  皮やはらかなる時あげて灰をませまくへし糞水  をそゝき生(ヲヒ)出て只水を澆き長して後糞水を澆  けは盛になる也 農桑輯要曰うねを作り種をう  ふる事蘿蔔をうふる法の如し正月二月にもうふへ  し秋社の後二十日うへて乾-馬-糞を以てつちかふ十  月に水を澆(ソヽク)へし農政全書曰春月出 ̄ス_レ薹(クヽタチ) ̄ヲ時取て  沸湯をかけて日にほして春夏の間菜なき時食  すへし時珍か曰菠薐八月九月種 ̄ル者可_レ備_二冬食 ̄ニ_一  正月二月種 ̄ル者可_レ備_二春蔬 ̄ニ_一〇六月地を二三遍耕  して糞をしき乾して又耕し七月初 子(ミ)を水に  ひたしふくれたる時糞灰をまぜうねうへふす生長  して後糞水を澆きしけきを去へし春月くきを  生るをは折取へし然れは又あとより新葉生す種  を取にはくきを折へからす葉をも多く取へからす  又花さく茎あり是はたねなし折とるへし或説に  上旬中旬にまけは生せす下旬にまくへし此説非也 莙薘(フタンサウ) 異名 甜菜 蓁菜 農政全書云たねを二月に  まき四月にうつす又八月にまき十月にわかちう  ふ糞水をしは〳〵そゝく時珍云ふる根も又生す  〇毎月おひ〳〵にまけばつねにあり故に俗にふだん  さうと云はうれんとりさかへやすくしてつくりよし  ゆびきて茎も葉も酢醤油にひたし食す味  はうれんにおとらず性はよからす虚冷の人はくらふへ  からす 藜(アカザ)本草に云 嫩(ワカキ)-時可_レ食老 ̄タルハ則茎可_レ為_レ杖 ̄ト月令広  義曰地をゑらはすして生す〇ゆひきてあつ物と  しあへ物とし或醤油にひたし食すもろこしにて  あかさのあつものは貧賤なる者の食とす 野蜀葵(ミツバゼリ) 本艸にのせす救荒本艸に見たり毒な  し性は大抵芹に同しかるへしうゑやう芹におな同し  樹下墻--下溝中日かけ湿地に宜しみのりたる時  とりおさめ早くまくへしよく生す子おちて自能生  す其茎味よしむかしは不_レ食近年食する事をし  りて市にもうる春の間食す他月は食するに  たらす 小薊(アザミ) 本艸綱目 ̄ニ蘓頌 ̄カ曰二-月 ̄ニ生_レ ̄スルヿ苗 ̄ヲ二三寸 ̄ノ時 併(アハセ)_レ根 ̄ヲ  作_レ ̄シ菜 ̄ト茹 ̄トシ食 ̄フ甚-美(ウマシ)多_レ ̄シ刺(ハリ)心中出_レ花 ̄ヲ頭如_二紅花_一 ̄ノ而青-  紫-色宗 奭(セキ) ̄カ曰 大薊(ヲニアサミ)葉 皺(シハミ)小-薊 ̄ハ葉不_レ皺(シハアラ)以_レ此為_レ異 ̄ト  〇葉わかき時煮てあへ物として食す味よし性亦  よし茎を日かけにさしてもつく大薊は鬼あさみ  と云わかき時葉を食す大小ともに性よし 苦芺(サハアサミ) 小にしてはりなし味小あさみの如し沢辺に生  す性あしからす食ふへし 苦菜(ニガナ) 一名茶と云けしあざみとも云その葉けしに似て  両わきに刻(キザミ)ありてあざみの葉の如し冬月春-初苗  生す茎の長さ二三尺にいたる其葉茎をおれは乳  汁の如くなる白汁いづ其花黄なり花のかたちあ  さみの花に似たり花の上に白毛あり風にしたかひて  飛ふ其 子(ミ)おつる処に生す其葉味ちさの如し  ゆひきてあつものあへ物ひたし物として食す性寒  なり毒なし脾胃虚寒の人には宜しからすといへ共  功能多し今の人是を食ふ事をしらす馬にもし飼へし 萱(クハン)草 居家必用云うすくうふ一年過てしけくなる  春の初苗わかき時切て食ふへしきれは又生す夏  秋にいたれは不_レ堪_レ食 ̄ニ 蒲(タン)公英(ホホ) 秋苗生す四月に花開く花ちりて絮(ジヨ)【左に「ワタ」】  あり絮 ̄ノ中に子(ミ)あり落 ̄ル処に即生す葉をつみ取  へし根より又生す甚磐茂しやすし葉をゆひ  きて水に一夜ひたし翌日醤油にひたし或あへ  物とす花白きあり黄なるあり腫物の薬 紅藍(クレナイ)【左に「ベニ」】花を紅花といふくすりに用ひ紅色を染  む苗わかき時食す斉民要術曰よき地を熟  耕し二三月雨後を待ちて速にうふ或みたりに  まき或うねうへにす麻をうふるか如にすべし  便民図纂 ̄ニ曰八月 ̄ノ中鋤 ̄テ成_二 ̄シ行-攏_一 ̄ヲ舂(ツキ)_レ ̄テ穴 ̄ヲ下_レ種 ̄ヲ灰  或糞 蓋(オホフ)_レ之 ̄ヲ濃(コキ)糞 ̄ハ不_レ宜 ̄ラ花開 ̄ク時-晨(アシタ)をおかしてつみ  取へし 本草綱目時珍 ̄ガ曰二月八月十二月皆可_二  以下_一_レ ̄ス種_レ雨後布_レ ̄ヿ子 ̄ヲ如_二種_レ ̄ル麻 ̄ヲ法_一 ̄ノ初生_二 ̄ス嫩(ワカ)葉(ハ)_一 ̄ヲ苗 ̄モ亦可  _レ食 ̄フ 農政全書にもうゆる法あり 本邦には皆  八九月にうへて四月に花をとるうふる時糞土又は  灰を以てうすくたなおほひすへしうへて後馬糞  を用ゆ或小便をそゝく春月苗わかき時つみ  てゆひき物として食す味よし花をつむに  黄なるを取へからす赤くなりたるを早朝取  へし 落葵(ツルムラサキ) 一名 蔠-葵 蔓【左に「ツル」】-草なり葉は杏に似てあ  つし三月にうふへしわかき苗も葉もくらふへ  し其実紫黒色なり女児用て紙をそむへ  にの如し久けれは色かはる本草柔滑類の農  政全書にのせたり 繁縷(ハコベ) 本草 ̄ニ云下湿の地に多し三月以後やう  やく老(ヲヒ)て細-白-花をひたき小実をむすふ〇九  月に生すあつ物として食す瘡腫をいやし秘結  を通すうへざれとも圃中に自(ヲ)多く生すのきの  下に生し陰地にあるは食すへからす 茼蒿(カウライキク)【左に「シユンキク」】 本草時珍云八九月にたねをうふ冬春と  り食す茎肥て其味からく甘しよもきの香  あり四月 薹(クヽタチ)生す花黄色なり花はひとへの菊  に似たり花も食して性よし本艸綱目曰しか平 ̄ニシテ無毒  主治安_二 ̄シ心-気_一 ̄ヲ脾養_二 ̄ヒ脾胃_一 ̄ヲ消_二 ̄シ痰飲_一 ̄ヲ利_一 ̄ス腸胃_一 ̄ヲ又千金方  にも出たり倭俗春菊を毒ありと云は誤れり八月  にうふへし花も又よし農桑通訣には二月にうふる  といへり是は春の食にせんとなり時々うふれは  常に苗あり故に俗に無尽草と云 艾 春葉をつみて飯にくはへ又羹にす三月三日  に草 餅(モチ)とす煮てほしてたくはへ置用るとき  むして餅につきくはへて食す皆よし 黄(タビ)花菜(ラコ) 本艸曰此草二月に苗を生す田中に  多し薺(ナヅナ)の如くなる小草なり三月以後黄花を  開く味来く少にかし微(ビ)寒無毒 結(ケツ)気を通(ツウ)し  腸胃を利す野人とりてくらふ甚だ芳美なり時  珍か曰其花黄に其気瓜の如し今日本にて  野人飯の上にむして飯の内にませて食す香  よく味よしほしても食すゆびきて醤油をか  け食す 竹筍(タケノコ) 淡竹(ハチクノ)筍は早く生す味尤好し苦(クレ)竹の筍  はおそし味はちくに不_レ及といへ共又 佳(ヨ)ししの竹 ̄ノ  筍(コ)はにかし凡筍取たる新きを即日に食へし  ひさしけるは味おとる風にあて水に入れは味あ  しし皮ともに久しく煮るへし塩につけて数日  ありても味よし筍を煮るに他物を加ふへからす  一種にたるは味よし竹をうふるに水を用ゆへから  す横根の長きをうふへし横根なきをうふれ  は枯る梅雨の中うふへし五月十三日にうふれは  必生く竹-酔日と云筍の初生の時根をうふへし  胡麻かすを竹ゆふにすつれは竹うすくなる蕎  麥からをおけは筍生せす 蘿藦(ガヽイモ) ちぐさとも云生葉をつめは乳汁の如くな  る汁いづ蔓草也うへされ共自多く生す若葉を  とり煮て食す味よし性甚だよし生葉をもみて  悪-臭をさる又葉をほしておけは諸物の悪臭こ  とに糞尿の悪臭を去る 牡丹 花白きとうす色なるをとりて熱湯につけ  もみて醋塩酒或 豆油(シヤウユ)と醋をかけ食す又醋み  そにて食す赤花は性味あし 芍薬 牡丹に同 鶏冠(ケイトウ)花(ゲ■)苗 四月に生すやはらかなる肥地によろしう  つしうふへしありつきて小便をそゝくへし其花の  種類多しもろこしより来るは花よし葉をとり  てゆひき物とし醤油にひたし食す莧にまされ  りあへ物としては莧におとれり又 青葙子(ノゲイトウ)ありう  へて生長しやすし宅中にまけは年々生す葉を  取食ふへし味よし   蓏(ラ)菜  実(ミ)なる菜也 茄(ナスヒ) 農政全書曰九月に熟する時切 破(ワリ)て水に子を  つけ沈むを取て日に干(ホ)し布ふくろにつゝみ  置冬より陽所の沙地を耕し糞をしきて置  春たねをまき四五葉の時 雨(アメフル)時に合_レ泥 ̄ニ移栽 ̄フ へし  若雨なくは水を澆(ソヽ)き地をうるほして晩に栽  はし白日には蓆(コモ)をおほふへし其性水に宜し常 にうるほすへし栽(ウフル)時根をかたく築(ツク)へし糞水を 屡(シハ〳〵)そゝくへし根上に硫黄(イワウ)を少加ふれは其実大 にして甘し茄二十本を栽て糞擁(コヤシツイカフコト)得_レ ̄レ所 ̄ヲ は一人の食 に供(ソナフ)へし 種樹書曰茄子開_レ花 ̄ヲ時葉を取て過路 に布 ̄キ以炭 ̄ヲ囲_レ ̄ム之 ̄ヲ結_レ ̄フコト子 ̄ヲ加-倍 ̄ス〇茄に数種ありたねの よきをゑらふへし丸茄尤よし堅実にして味よし 長茄はあしく柔滑にして堅実ならす味おとり又 甚長きあり白茄あり又一房に七八みのるあり 茄の子(ミ)をおさむるにまかなから全く用ひ或二に わりてかまとの上につり或土にうつみ置へし苗と こに子をまく事日あて好地を十一月より地を少 高くして糞を多くしきまはりに土を置糞を雨 になかすへからす乾し二月中に子をまく時肥土を 入 ̄レ和し種あらくまき苗生して後又しけきをぬ き去へし如此すれは苗大にして長しやすし虫 不_レ食〇沙地には泥土を加へ泥土には黒沙を加へ糞 を其上に散し曝(ホ)して又耕し数度如此にして或 河泥溝中の黒泥を加へて益可也能熟耕し て和なる時子をまくへし地堅けれは生長しかたし 茄の種をまく所其四辺に草木のなき所よし 凡たねをまく時先水に二三日ひたして後に糞沙に 和して蒔へしまく事しけけれは苗長しかたし あらくまくへし生して後時々生魚の汁或しろ みつをそゝくへし移しうふるに畦(ウね)の間二尺五寸 人のとをる程有へし毎科の間一尺五寸はかりし けれはさかへす実すくなし間遠きがよし苗を うふる所は地面より卑(ヒキ)く【卑は一画目のはらいがない。京都園芸倶楽部叢書版 https://dl.ndl.go.jp/pid/1209338/1/23 も卑と解している】ふかくすへし水をそ そき土をかひ糞を置によし高けれは日に いたむ地高けれは糞水をそゝきてもかたわらに 流れてとゝまらすかねて地をほりて区(ク)処をな しうふる時土を加(クハ)ふ又茄をうゆる法霜月より 地を一尺つゝへたてゝあなをふさ一尺方一尺はか りにほり相去事又をの〳〵一尺余あなの内に 冬よりくさりわら馬糞其外何にてもこゑに 可成物を入又臘月の雪を其中に入置へし夏 にいたり茄なへを其内に二本つゝうゆへしかじ けたるをはぬき去かやうにすれは大きに出来み おほくなる茄の苗の長して後葉のうらに毛虫 あり有て葉を食すれはさかへす毎日是を去へし 旱をいむ毎晩泥水を澆くへし凡茄をう 梅雨の内に盛長する程に早くすへし苗に なる時梅雨の後に早く暑に逢へは長しかたし 梅雨の前に二度糞をおくへし麥 ̄ノ底(ソコ)或堅地に うつしうふれは蠧(キリムシ)なし但堅地を先耕へからす地 軟(ヤハラカ)になれは蠧生す先うへて苗長大になり 蠧の患なき時すくへし但如此すれは蠧の うれへはなけれとも長する事おそし苗の本 を竹皮を二三寸に切てつゝめは蠧のうれへな し又しらんの葉おもとの葉もよし苗とこに残 りたるはうへ付にして苗をうつさゝれは早く長し みのる且土堅きゆへに切虫不食うへて後所を得 は小便を時々 澆(ソヽク)へし苗とこにあるは旱にもいたま す盛長しやすし凡茄は陰地にうふへからす豇豆(サヽゲ) のかげ或樹の陰なとにうふれは長せす又みのら す本草に茄の性甚あしき事をいへり生茄 尤性よからすされとも皮をさり切て水に久し くひたし黄汁を出すへし明朝の食には前夜 よりひたし晩食には朝よりひたしよく煮熟し てやはらかなるは味変して毒なし久しく食し ても害なし只瘧痢傷寒産婦にはいむへし  つけ物にもゆひきてよし毒さるおしをかゝれ  はかたくしてあしく凡茄子は夏菜の上品とすへし  秋茄尤味よし秋にいたりて多くみのる夫木集  の哥にも秋なすひのよき事をよめり 壺盧(ユウガホ) ■ノ瓜とも云長きありまるきありひさく  にするありくびあるあり形によりて各漢-名あ  り又長さ五六尺なるあり大さ一二斗を入るあり  農政全書云九月に熟 ̄スル時子を取水に淘(ユリ)て洗_二 ̄ヒ  去 ̄リ浮 ̄ク者_一 ̄ヲ日にほし二月に種(ウヘ)て四五葉高五寸ば  かりの時土をおびて移し栽へし〇毎(マイ)区(ク)坑(アナ)を作  事広さふかさ一尺相去事三尺先糞土を穴の  中にみてゝ毎区二子をうへ長して梢をつみ去一  茎に三子をとゝめ余子は皆つみ去へし又子 ̄ノ外  の條(エタ)を去へし蔓(ツル)を長からしむへからす性泥水  を好む初生の時より毎日泥水をそゝくへし  移 ̄シ栽 ̄ル も亦可也しかれ共初より子をうへて移(ウツサ)さ  るにはしかす棚(タナ)に蔓(ツル)を引或地に引は尤可  なり■別にうふるは皆つるを地に引しむ鉄に  て蔓を切る事なかれ又葉をきることなかれ  不_レ栄 ̄へ其 液(エキ)汁もれて精気不_レ収(ヲサマラ)ゆへなり〇  農政全書曰大葫蘆を種るには二月のは初 坑(アナ)を  ほり広さ深さ共に三尺糞と土と等分に和  し穴中に入足にてふみ堅め水をかけ十粒を  うへ又糞を以おほひ生長して二尺余になる時  十茎一処に合せ布にてまき泥にてつゝみ  置は数日を不_レ過して剛合て一茎となるをその  中のつよきを一留て余はみな切去へし二子を留  て余は去へしあなのまはり小 渠(ミゾ)ふかさ四五  寸にほり水を入へし坑中に水を入へからす如  此すれば壱斗を入る者は一石を入ほとになる也今  案此説いまたこゝろみすいふかし 菜瓜(ツケウリ) うへやう甜(アマ)瓜に同し用やう越瓜(アサウリ)に同し 越瓜(アサウリ) 菜瓜の類なりうへやうも同し菜瓜より大  なり味菜瓜よりよし地よからされは多く実のら  す京都に多し他邦にはまれなり生にてな  ますにして食すあつものあゑもの塩つけ  ほしうりかすつけによしすしにもつくる 甜瓜(アマウリ) 農政全書曰瓜子を収 ̄ル法本なりの瓜を取  両頭をきり去中 央(ワタ)の子(ミ)を取る又曰瓜子を取に 細糠(コヌカ)にかきまぜ日にほししいらをひ去へし二 月上旬より四月上旬まてうふへし又曰うねを 作に両行は相近くし其間に通路なく又両行 は相遠くして其中間歩道を通 ̄ス へし次第に 皆如此すへし初花さく時にまはりを三四編遍 すきて草を去へし瓜 蔓(ツル)をふむ事なかれ つるをくつかへすことなかれ 月令広義に塩 水に瓜子をひたしてうふ其塩水をうへたる上 にそゝくへし今案かやうにすれは苗かれす 又からの書に冬よりうふる法あり〇正月にかは ける黒泥或肥土あつめくろを作る毎区(マイク)方 一尺高さ地面と斉(ヒト)しく畦(ウネ)の間相去事四尺 余毎区(マイク)相去事二尺余毎区上を平直にして くろの上を打起して地をわけ其上に糞を 敷ほして打かへし地を和し其上に子をうへ其 上に土をよき比にあつくおふへし或上にわ らを置く数日の後去も可也土をおほふ事 厚からされは不_レ生或虫鼠食す又俄にうふる にはくろを作り土を和かにし瓜子をまき土を おほふも可なり一区の内に中一すち六七子を  うふ散(サン)種すへからす生して後一所に二三根をとゞね  其余は抜去へし生して後区外に土をよせ畦(ウね)を  成へし毎区其 侍(カタハラ)をほり糞を多く入てよし又  瓜の根に糞土をおくへし蔓(ツル)長じてよき比につ  るをくばり分て其節々に少つゝ土を置へし  如此すれは節よりも根生してはびこり実多  し蔓の長さ一尺ならは早く末を摘(ツミ)去へし末を  摘(ツマ)されは実すくなしまい日 蠸(ウリムシ)を取へし蔓の  歩-道にはふをは畦中に上(アグ)へしいや地をいむ地を  かへてうふへし但新土を以 区(クロ)新に作りうふれ  は毎年同所にうへてもよし清水を澆けは根か  たまり地やせて長盛せす糞一桶に水三桶くは  へ大瓶に入三四日置く後是をそゝくへし凡瓜  は京都の東寺美濃の真桑村泉州境江戸に  皆上品あり昔は山城のこまの瓜古哥にもよ  めり今は其名なし 南瓜(ボウブラ) 時珍曰三月 ̄ニ下 ̄ス種 ̄ヲ すな土のこゑたる地に  よし〇二月に日にあてよき和なる肥土にうふへ  し少地をくぼくして実をうへ其上に灰をおほ  ふへし長して糞を用ゆ陰地にうふれは実のら  す秋後まて久しく長す故はたけにうふれは  地を妨く小屋或 庇(ヒサシ) ̄ノ棚の上に蔓を引しむへし  地上にはへは節々より根生して弥繁昌す実  ならさるつるを切去へし其形まるきあり長  き有能熟して色紅になりてとるへし長する  時早く末をつみ去へし一本三四顆をとゞめ其  余は去へし葉を多く切へからす液(エキ)汁もれて  いたむ長崎に多し唐人 ■夷(ヲランタ)人好 ̄ン て食す冬  かまとの上におけは二三月まてくされす寒風  にあたれは早くくさる又きりて灰にかきませ  生なからほしてたくはへ置食す時珍曰味如_二山菜_一同_二 ̄ク猪  肉_一 ̄ト煮 ̄ハ更良おさめて春の末まてあり新なるか如し  といへり慶長元和の比初て日本に来る京都には延  宝年中はしめてうふ其前はなし青色なるをよしと  す〇一種 南京(ナンキン)夕顔あり南瓜と一類別種也又 日向(ヒウガ)  有夕かほとも云味よし南瓜より中高く丸しなますに  くはへ用てよし是南瓜にことなり南瓜にはくびなし  是にはくひあり 西瓜(スイクハ) 月令広義曰肥地に坑(アナ)を作り毎(コトニ)_レ坑 子(ミ)四を  うふ苗長して後根に壅(ツチカフ)へし多 鋤(スケ) ̄ハ則子多しすか  されは実なしみのらさる蔓(ツル)花はつみ去へし如此す  れは瓜大也  又曰清明の時うふ先 焼酎(シヤウチウ)に子をひた  ししばし置て取出し灰にませ一宿置てうへ後に  うつしうふ此種昔日本になし寛永の末年にから  より来れり京都には寛文の末うふつるの下わらを  しくへしつるわらにまとひて風にひるがへらすして  よし実の黒きあり赤きあり又鼠色ありはう  すくして中子多く多く味よし 胡瓜(キウリ) 是瓜類の下品也味よからす且小毒あり性あ  しく只ほし瓜とすへし京都にはあさうり多きゆ  へ胡瓜を不用時珍云正二月下_レ種 冬瓜  農政全書曰先灰に細泥を和し地上にひ  ろけ二月種を下す湿灰を上にかけ水をそゝ  き又糞をおほふ乾けは水を澆(カケ)生して後根 ̄ノ旁(カタハラ)  に壅(ツチ)うふうつしうふるには三月下旬毎穴四科を栽(ウヘ)  相去事四尺計糞水をかくへし 又曰 毎(ゴトニ)_二分栽_一 ̄ル相  去 ̄コト三尺許 時珍曰忘_二酒漆麝香及 糯(モチ)米_一 ̄ヲ触(フルレハ)_レ之  必 爛(タダル) 斉民要術曰墻ぎはの陽地に穴をつくり  広二尺深さ五寸熟糞と土と相和し正月晦日に  うふ生して柴木をいかきによすへし一穴に只五  六をとゝむ〇是も移さすして初よりうへ付て尤よし 苦瓜( ツルレイシ) 一名錦茘枝(キンレイシ)其実の形 茘枝(レイシ)に似たり色紅  黄にしてうるはし中のさねに付たるあかき中子を  小児くらふ味甘し春さねをまく肥土に宜し葉を  食す蔓草なり実もわかき時くらふたなにても  籬(マカキ)にても延(ハヽ)し無 絲瓜(ヘチマ) 二月初うふ一穴一科毎日糞水をかくへし其実  老(ヲヒ)て河皮を去あみの如くなるを取て日にほし其  後に水にひたしおけは皮肉くさるをもみ洗ひかはか  し置く釜を洗ひ黒物とあらふへし引目つくす  おのあかを取によし又湯あみする時身を洗ふに  よし 嫩(ワカキ)時皮を去て食すへし此瓜病を治する  其効能多し本草に見たり世人しる事まれ也 菜譜巻之下   用_レ根 ̄ヲ菜 ̄ノ類 牛蒡  居家必用日肥良の地を正月に三五度熟  耕し深く掘て地を軟(ヤハラ)け糞を敷て上を平にし二月  の末に子 ̄ヲ しけくまくへしうすけれは根の心虚す苗  生して後草を去へし旱には水を澆く又曰当年  結(ムスフ)_レ子 ̄ヲ者は種 ̄ルトキ不_レ生ふる根にみのりたる子可_レ植月  令広義曰種時乗_レすスレハ雨 ̄ニ即生す若雨なくんは水を  用ゆへし又苗をきりて食ふる韮をきるか如  くすへし◦〇秋冬春の間 蘿蔔(タイコン)と同しく上品  の菜なり圃(ハタケ)にもはたけの外の閑地にもうふへ  しと居家必用にいへり毎年いや地にうゑても  よし七月ゟ正月まて食ふへし葉を切たるは正  月にめたちを折へし根老かたし二月以後はこは  したねをとるには根をきりてうふる事大根の  条下にしるせり〇冬春の初大なる根を切へぎ  煮てほしてたくはへ煮て食すやはらかにして甚  よしもろこしの書にも見えたり 芋(イモ) 農政全書曰土こえやはらかにして水に近き  処に二月雨ふる時糞に和してうふ相去事二尺  生して後かたはらをすきて其土を和にして旱(ヒテリ)に  は水をそゝき草あらはすき去へし 又一説  に曰地は深く耕し相去事六七寸秋子葉を  生 ̄ス時其根につちうふへし霜 ̄ノ後 収(ヲサム)_レ之 又云芋の  種まるく長くして小白なるをゑらひ屋の南 簷(ノキ)  の下にあなをほりぬかを底(ソコ)にしき其上に芋を  置わらを上におほふ三月に取出し肥地に埋  之苗生し三四葉の時五月に水に近き地に  移しうふ或河泥或灰糞又くさりたる草を以  培(ツチカ)ふ旱 ̄ニハ則 澆(ソヽキ)_レ之 ̄ヲ草あれは去_レ之日和る日白 地に宜し旱をおそる 又曰夫五穀は豊歉(ホウケン)皆 天時による芋は人力にかゝるうへ培(ツチカ)ふ事時に 及へは利を得たる事なし意以_レ之 ̄ヲ凶年を渡り飢 饉をすくひ穀食の不足を助く 又曰根の旁(カタハラ) 空虚なれは芋 ̄ノ子大 ̄ナリ月令広義晨 ̄タ露未乾 ̄カ 又は雨後に耘(クサキリ)鋤(スキ)て根の傍を虚にすれは芋大 にして子多し灰糞を以培へは茂(シゲ)る 居家必用 曰凡芋皆ほしものにすへし又蔵(ヲサ)めて夏に至 ても食ふへし是は茎をいへるなり根に有_レ毒は灰 汁に水を加へ煮る本草曰生薑と同しく煮て 水をかへ再煮れは味よく毒なし又 蒸(ムレ)て食_レ之魚に 和して煮食へは益あり野芋は大毒 ̄ニテ殺_レ 人圃にうふる も三年不_レ収(トラ)即野芋とるる水辺に生するも野芋 也不可食又云芋は補_レ ̄ヒ中 ̄ヲ益_レ ̄ス気 ̄ヲ或曰 渠(ミソ)を深(フカ)くほって 芋をうへ其土に芥を漸々にかけ土をかふへし二三度 土をかふへし〇芋の類亦多しつねの芋はつるの 子(コ)あり青芋あり黒芋あり青芋味尤よし黒芋 はくき少黒し皆湿地をこのみ寒気をおそる冬は ほり取て穴に納めおほひをよくすへし不然は寒 気にやふられてくさる一日も風寒に当れはあしく 或説 ̄ニ云霜の時上にあくたをあつくおほふへし不然は くさる春うふる時土をふかくほりて人糞又は馬糞 にてもくさりたるわら煤(スヽ)わらなとをも埋め其 上に土を置てうふへし如此すれは繫昌す凡芋 は山中の人多くうへて粮(カテ)とし凶年にうへを助く 尤、民用に利あり其利益五穀につげり〇白芋あ り茎を食す唐芋とも云茎長大にて白し生 にてもほしてよし毒なし魚■にかへ又生にて すみそにても煮ても食ふへしほすにはね熱湯を かけて後ほすへし老人虚人食して胛胃に害なし 味も股亦よし多くほし置へしい凡白菜は尤寒気を おそる或云重陽以前は茎を取へし取やうあとに 茎を三本つゝ残すへし四も二もあらて重陽以後 は茎たとひ多く生すとも一もきるへからすきれ は必寒にいたみ根くさる寒気のいまた甚し からさる時枯たる茎のかくるゝ程にぬかを上に あつくおほひ其上に土をうすくおくへし又茎長 きはわらすて包むへし上に土を多くおほふへから す是亦湿をこのむ凡白芋の根冬くさるは 九月以後茎をきる故なり白芋根すくなくして  食はず〇赤芋あり是も茎を食す茎長大  なり煮てもほしても食す赤芋は根を食ふ  味尤よし〇大芋あり法螺(ホラ)芋と云根大なり  ほら貝に似たり味よし其茎も味よし〇くり  いもは其葉まるくしてはすの葉に似たる故に  はす芋とも云生にて食するに味栗のことく  ゑぐからす毒なし煮て食すれは尤よし是又冬  は穴におさめ置へし寒をおそる 黄独(ケイモ) 畿内にてあやまりて何首烏(カシュウ)と云根も葉も  山芋にて大なり根に毛多し煮て食ふへし  むしても食す毒なし何首烏は近年中 夏(カ)よ  り来る是と不_レ同 番薯(アカイモ) 近年長崎に琉球(リウキウ)より来る故りうきう  芋と云色赤き故に赤芋と云 閩(ミン)書に見え  たりやせ地砂地にも宜し蔓(ツル)ありは甚寒をお  そる煖地にうふへし味甘し根をかまとの前火  にちかくうつむ春あたゝかになりて地にうふへし  生薑 鬱金(ウコン)壇特(ダンドク)花紅蕉なと凡寒をおそる  る物の根を冬春のおさめやう同し此物飢をた  すくる功他物よりまされり貧民多くうふへ  し寒土には生しかたし 甘 藷(シヨ) 近年琉球より渡る是亦番薯の類也  根の形瓜蔞根の如し蔓草也煮ても蒸しても  食す味甚美し性よし又飢を助く凶年に  用ゆ蒸して乾て末したくはへ置へし煖地に  生す寒土にはくさり石地にも瘠(ヤセ)土にもつく  る甚繁昌す本草に見えたりつくねいもと訓  するは非也冬は煖所におさめ置へし 甘露子(チヤウロギ) 草石蠺とも云国俗ちゆうろきといふ  物の事也落荷葉に似て葉ちゝみ毛少あり  茎は四角なり節々より根生して根にかいこ  の如なる物多く生す其色白くきよし冬春  其根を取て菜とし菓とすあへ物すい物に  入るに煮過すへからすみそにつけてよし又煮  て食すれは飢を救ふ味甘美なり甚繁昌  す民家には是をうへて飢を助くへし本草  綱目菜部農政全書三才図絵に見たり但  本艸綱目には甘露子と地瓜児と一物とす農  政全書三才図絵には地瓜児は甘露子に似て  更長しといへり各別に図をもあらはせり陰地  にもよし樹下にも日あてにもよし農政全書  園の陰地に近き所に春時うふへし夏月麦ぬか  を糞とすうるほへる地よし秋に至て収(ヲサ)む 又  日肥地に宜し生熟可_レ食 ̄フ密につけ或醤に  つけ化_レ ̄ス豉 ̄ト亦得 蒟蒻(コンニヤク) 日かけ木の下なとにうへてもよく根の  内 芽(メ)の生する所をくりて取うへても生す其  残る所の根は用てよし白こんにやくをこしらゆ  る法根を洗ひ湯煮してにゑたる時わらしべを通  しよく通る時ぬる湯につけ上の皮を手にて  去りあたゝまりの内にはやくうすにてよくつきて  後九根一升にぬる湯一升程入よくつきまぜかき  はいを茶四五服ばかり湯茶碗一はいに入まぜ右  つきたる根にかけなるほと手はやくませ合せ板  の上におしひらめ器に入てこんにやくの形にひら  く作りなしてさめてかたまりたる時きるへしか  きはいを入る時て手ぬるくませてはかたまり出来  て悪しこんにやくをかたくせんとおもはゝ湯をひか  へゆるくせんと思はゝ湯を過すへし又黒こんにや  くの法は別なりかきはいは蛤(ガウ)粉もよし 巻丹(ヒメユリ) 子を取て其まゝ地にまく年をへて根大  になる冬春根大なるをほり取て煮て食す  味よし性あしからす春をそくほれは根かれて食  しかたし根のまはりを取て中をうふへし百(シロ)  合(ユリ)は味苦し 薑(ハジカミ)  農政全書曰白すな地によし糞を少く  はへ熟耕 ̄スルコト如_レ麻三月にうふ一尺に一かぶ土厚 ̄サ三寸 数(シバ〳〵)  鋤 ̄ク_レ之 ̄ヲ六月作_二 ̄リ葦屋_一 ̄ヲ覆(ヲホフ)_レ之 ̄ヲ不_レ耐(たへ)_二寒熱_一 ̄ニ故也九月  ほりて置_二 ̄ク屋中_一 ̄ニ歳もし温(アタヽカ)ならは待_二 ̄ツ十月_一 ̄ヲ又曰 芽(メ)  出 ̄テ有_レ ̄ラハ草即さる漸々 ̄ニ加_レ土 ̄ヲ已後うね高くなる  又曰土をおほひしば〳〵以_レ糞 ̄ヲ培_レ ̄カフ之 ̄ニ一 ̄ノ法用_二薦(コモ)草_一 ̄ヲ  覆(オホフ)之 ̄ヲ勿令_一 ̄コト他草 ̄ヲメ生_一 ̄セ秋の    穀類 豇豆(サヽゲ) さゝけを角豆とかくハ非也のう農政全書穀雨 の に《割書:三月|中|》月 廣義曰灰にて甕ふに   豇豆はつる長して籬にはうさゝけ也白あり色あり   赤きありいつれも味同し性よしさや長きハ 一尺四五寸二尺にいたる又みしかくして一ふさに多くな  ありいつれもさやともに煮て食す性よし夏 菜の上品なり民用を   茄子に す三月の 前より六月の中ノ物まて 十日十五日程へたて て斬ゝにうふべし甚早れけハ寒にいたミて早く  ゆに追々におそくうふれハ七八月九月の物まて 実あり又六月におそくうへたるハ八九月に実なる 平地よりひきくふかくしてうへ漸々に糞土を へ し  けれハ水を きくそを敷になかれて としまらす後まて少くほめ  糞水たまりてよ し灰糞水小便 宜し苗の時蠧好むて含す    ほり去へし