《題:《割書:安政二年|十月二日夜》大地震鯰問答》 《囲い書き:なまづ》 ヤアあめりかのへげたれめ此日本をばかにして二三ねん あとからおしをつよくもきやアがるうぬらがくるので江戸の まちがそうぞうしいやくにもたたねへかうゑきなんぞ とりかへべいハよしてくれ江戸中あるくあめうりで たくさんだ用ハねへからはやくしりにほをかけて かぢをなをしてさつさと立され立され 《囲い書き:アメリカ》 なにをこしやくなまづぼうずてまへ たちのしるところでねへおらが国ハ おじひな国でしよく人でもかりうどでも なんでもじひをするものハけふまで野山を はたらひてもあすハ見だされ王となる それゆえ諸々のくに〴〵からしたつてくるので がつしゆこくといふ国だアところがこまつた事ニハ 人がふへてもくふものがねへから日本へ米や大こん にハとりをもらひに来てもくれやふがすけねへそれ ゆへたびたびうるさくやつてくるハへ 《囲い書き:なまづ》 だまれペロリなんぼうぬらが口がしこくじひの国だと いつたとてくらいものがなければびんぼうこくにちがいねへ あめりかに神や仏があるならば五こくもたくさんでき そふなものねへとぬかすうへからはまいにちまいにちのくひ ものを海(かい)ぞくなしてとつたにちがはぬこれをおもへば わが国の神々さまがあつまつてしなどの風をふき おこしうぬらがふねをはじめおろしやをうみへ しづめしもたしか去年の十一月神はひれいをうけ たまはずたはことつくなきくみゝはもたねへもたねへ 《囲い書き:アメリカ》 おかしくも道をこしらへていふなまづおのれ平日人間に ひやうたんでおさへられながら去ねん霜月四日のひ 下田ぬまづをうごかしてわれわれをおひかへさん とすされどうごかぬあめりかだましゐ 《囲い書き:なまづ》 ヱゝやかましい毛(け)とうじんたちさらずば どろのなかへうづめてくれん 《囲い書き:アメリカ》 うづめるならうづめてみよおれもけんづき でつぽうだぞ 《囲い書き:左官》 アゝ両ほうともにしづまれしづまれとふからん ものはひゞきのおとにもおきゝなせへ ちかくはよつてめにもみますの土蔵の やぶれすみうらすみまでめらうちを たのむたのむとたのまれておちたるかべも のしつける小手のきいたる江戸ッ子と みなさん方のおほめにあづかるもこんどの じしんのさわぎからこれをおもへばありがてへ まづまづまづ御両所いざこざなしにくびつひき あゝ見たくでもねへおよしなせへ