鹿島(かしま)神詫所(しんたくじよ)より         鯰(なまづ)一統(いつとう)江|申(まうし)渡(わたし)の事 一  鯰(なまづ)どものぎは神代(じんだい)より申 觸(ふら)しおき候|通(とほ)り 九ハやまひ五七が雨(あめ)に四ツ日(ひ)でり六ツ八ツ ならば風(かぜ)としるべしとの御(ご)詠(らい)哥(か)を守(まも)り 時候(じこう)不順(ふしゆん)の折(をり)を見合(みあは)せ質素(しつそ)に渡世(とせい) いたすべきところ諸神(しよじん)出雲(いづも)御旅行(ごりよこう)の 留守(るす)を見込(みこみ)先例(せんれい)の掟(おきて)を背(そむ)き御府内(ごふない) 近在(きんざい)を乱妨(らんぼう)致(いた)し家(いへ)蔵(くら)身体(しんだい)をゆすりちらし候 のみならず同類(どうるい)の出火(しゆつくわ)をさそひ格別(かくべつ)の風(かぜ)とても 無之(これなき)に数ヶ所(すかしよ)焼(やき)拂(はら)ひ候 段(だん)八百万(やほよろづ)の神(かみ)を恐(おそ)れざる いたしかたぬら地(ち)主(しゆ)極(ごく)に付四ツ手(で)をもつて一疋(いつひき)も 洩(もら)さずすくひ揚(あ)げ蒲焼所(かばやきじよ)に於(おい)て 骨抜(ほねぬき)の上(うへ)火(ひ)あぶりにも行(おこな)ふべき所 格別(かくべつ)の御神威(ごじんゐ)をもつて神国(しんこく)一圓(いちゑん)追放(ついはう) 仰付(おゝせつけ)らるゝものなり然(しか)る上(うへ)は此(この)後(ご) 御(お)かまひの場所(ばしよ)へ立寄(たちより)いさゝかなりとも いたぶりがましき義(ぎ)有之(これある)に於ては 早速(さつそく)に要石(かなめいし)をもつて取(とり)押(おさ)へ引(ひき)さき候 上(うへ) 酒(さけ)の肴(さかな)に喰(く)ふべきもの也         安心(あんしん)元年おち月吉日     鎮火(ちんくわ)焼所(やくしよ)鹿島