写昔男  通風伊勢物語 全      天明二年壬寅 ここにさけ せうばいを せしいせや 徳右衛門といふ ものあり ちかきころ より  だんだんしん【「せ」では】う しだし国元ゟ ねんきこども 二人りよび よせとくいをまはらせ日々はんぜう せしなりこれ徳吉めをさませ われも幸介といっしょにゆにでも いってこいあのおひのしさまをみさつしやれ あれこ□□□□□幸助も 徳吉おな□□□こふ なれ共幸介めはまい はんゆにてもゆきかみ もこつ ちから いわぬ 先にさ いそくしてゆいますにとくきちは ゑりもみゝも まつ黒に してたゞ いねむりが ゑて物だ【得手物だ=得意だ】 【挿絵内】 アヽねぼ【「ぶ(婦に濁点)では」】つ    てへ もしだんなさま  ちよつとゆにいつて      もよふ      こさり      ますか 扨も徳右衛門かたの二人り の御用は日〳〵とく いをあるきむかし とちかい今時は 御用はよふごさり ますかとはいわず だがまへてもふと ころでをして のそり〳〵と のぞく斗それ ても用はたりる なり幸介は きんじよのかみ さまやしぶむけ【渋剥け=あかぬけ】 た娘などにゑゝ 子たからいゝ酒 をはやくもつて きてくりやと いわれいゝ酒は わすれてもゑゝ 子はといはれたか なによりうれしく たちまちもつて くるやうなき だてなれは ふだんわ■し てしりをはしより うちを出ても きんしよをはな れるとしりを おろしてたゞ あそこのかみ ゆひとこ【髪結床】こゝの じしんばん【自身番】の ゑんはなへ よこたおしに なつてあそ このにやう ぼう【女房】はいき たのこゝの むすめは ざつたのと いふよふな はなしが おもしろく たちまち このごろは しほから でも くつた よふな こへに なり もし此中 向ふうらの【向こう裏 か】 大工のかみさんか ねてたのにたつた ひとついるふとん □□□□さんか 【に?五郎さんか】 ねていてわしが ゆくと酒五合のんで □□□おいたした【追い出した】 あとて きさつたら【気障ったらしい か】 しいもんだ こいつは とんた事 をゆうや つだ御用 まあ いつて きてまた あそべ それにひきかへ 徳吉はあさから はんまて内へ百度 まいりして用を たしかみも ふたんすゝ はきのやう にしてみゝも ゑりもまつ くろになつ てあるき きん所の 子どもが 五六人むく ろんじを もちふき むしをし【ムクロジのシャボン玉遊びか】 たりあるいは けてあつた をとりてあ そぶをつく〴〵 見ておもしろく なりどふぞ おれもして みたいとおもへ ともむくろんし もなく 二三日も心 かけとふり【通り?】の 店下にて むくろんけ しやうろん けをはじめ 仕合とひとつの むくが六ツ七ツに なりよ【余】はたい せつにぬのこし 上ヶ【布腰上げ】の中へおしこみ ねるにもおさへ てねるほどに大 事にしてまた二ツ ふへ三ツふへのちに は二三十にもなり けりこれよりわるく かけ事に心のうつる物 なり徳吉凡そ元手一ツ にもせいたして一ツを大切に してかせけは【稼げば】利益する事 に心がけあけくれおやかた の帳面さんやうする そばにていくつも利方【りかた: 利を得る法】と ゆふことおもしろくのちには 徳右衛門□□□此の徳吉なるべし 【挿絵内】 たつたひとつでは  いや〳〵□には       いれぬ  御用ききめ   とんたふてへ       やつた     のふさんたン エヽ子だ一ツても棄ては  ふへるまける□ぞ付たりに  するからわしもしんに入れ□□ そののちこういんやのごとく【光陰矢の如く】 といつてはなにかかたき うちめいてかたくるし いからひらつたくこ どもののびるはたけ のこのごとく徳吉 幸介もはや十五 六才になりおに わかしゆ【鬼若衆】ではむかし めいてわるい【元服させないままではよくない】ととく ゑもんふうふが せはをやき二人り ともにげんぷく【元服】 させ幸介が願 にてやはり幸 介がよろしいと いふゆへそのまゝ おきさてとく 兵へ【徳吉から徳兵衛に改名】はとしは一つ おとりしかみせの こともよくのみ こみはんじ【万事】 見所ありとて まづばんとう したぢにして とくゑもんか くちまねも させける 【台詞右ページ下から】 もしせ□しは なへかよふ【? ねぇ(ない)が良ふ ヵ】 こざります もちつと かへらせて 下され かみとの【髪結どの】 あつに【あいつに ヵ】 かまはつと【構わずと ヵ】 しつていに【実体に=まじめな髪形で】 たのみ ます よくにやつたの【似合った?】 大ふつめたい そうで ござります おまへは徳さん とちかつて いきにし たかるの とく兵へはわかいものになりし ゆへもはや子供ではなく 少しのしまいも今迄 とはちかつて【違って】ふかくおしへ なるとふり【道理?】といよ〳〵 心を付てつとめ しに幸助【「介」では?】は のらくら物 のくせにとし 下たる【年下たる】 德兵へに 帳面を され少し くやしくは をもへとも とてもとく 兵へか身持 のまねはなら ぬとあきらめ いよ〳〵男ぶり みかき【磨き】けれはいつ たいうまれ付か よこふとりにて すかた【姿】かひらつ たく【平たく】とく兵へとは 男ぶりもおとりし がてまへの気にて はあのとくめは とんたやぼな なりだ□やつ ばりうぬが ほうから男か ゑへと心へ【心得】あたまも 百会【百会=頭頂部 ヵ】がくれ【隠れ ヵ】といふ 所でびん【鬢】はきり〳〵 すかみのやうに しておしいまゆ げをいゝわけの ために少しのこし てすり付しよし きん〳〵めかし大き にかぶる 【挿絵内】 幸介そこへてろ【出ろ】まあ わか【我が=おまえの】あたま【頭=髪型】かきに いらぬ此ころわれはとほう もない三升【みます=成田屋の定紋から図案化】の 手ぬくいをもつてゆに行 ふたときほと いゝながゆそれ德兵へこし にさしている きせるをぬいて見やれ おれかちよつと 見たかかんくひ【雁首】もすい口【吸口】 のあなも同しやふた きやうこうかみの ふうもなを させませう ごめんなされて つかはされませ ハヒ〳〵 此きせるの なは大つふ【大粒 か】 はりと申ます【張り=煙管を作ること】 これをもては □ふいたし ます 【右ページ本文】 幸介はなんでも ひとつとして我 気に入らねば ならふなら おやかたも徳兵へも 叩き出してし まいたけれども そのかぶはなし しょせんかけ おち【欠落】してはら いっぱいにきん〳〵 といろおとこ にこしらへせ けんのおん なにきを もませて たのしみせう と金子百両 ぬすみ出し くびにかけ づいとくじ【随徳寺=ずいと後をくらます意味の掛詞】と でかける 【右ページ挿絵内】 今までは人の あたまやきものの身はば【身幅?】 までどうだの こうだのと おおきに おせは どいつも〳〵一生へん てこでくちはてる であろうきの どくだ わん〳〵〳〵 犬まで やぼだ きのきか ねへしづ かにほへ ろおれ たは 【左ページ本文】 徳右衛門家内 にてはいつもの とふり朝おき たるところ金箱 のひき出しへ おいたる百両の かねみへずかぎ ははこのそばに すてて有り されども幸介 がかけおちにて ほかへうたがいも かゝらずやうち きもをつぶす あいつめこう あろふとおもふ たにくいやつおや かたの ばちが どこへ あたる ものだ 【左ページ挿絵内】 扨〳〵お そろしいだいおん有 御主人の お金ことに大金をうばいたち のくとは いやはやにんげんではござり ませぬ 人にゆだんはなりませぬ どうか 私とてもごゆだん はなされ ぬがよふご ざり ま す 幸介は主人のかねを 盗とり少しのしる べにて谷中辺へ いそうろふとなり 我おもい入れにいるい【衣類】 をこしらへなにがよこ ひろい男で引づる やうな黒なゝこの 袷ばおり【袷羽織】にこもんちり めん【小紋縮緬】かはり八丈といふ所 をふりかさねさめ ざや【鮫鞘?】いほん【一本】おとしざし おびはくろじゅす【帯は黒繻子】に 赤糸てきくじゆ【菊寿(模様)】を おりこみうら付は ふんぐりかへすよやうな のをはきふだん 浅草山下両国其 外向ふじまはもち ろん江戸中をある くにどふもぶかつ こうにひらつたい なりのおとこと 人の目に付き あそこの娘ここの 女房ちゃ屋女と なりひら〳〵と あたなをいゝける をちときゝつけ むかしのなり ひらは【昔の業平は】 おくげ【公家】で あつたそう たかおゝくの 女に心を かけられた 色男そふ なおれも 男かゑゝから □今なり平【=現代版業平】 といふと見へて 是はかくあだ なを付たしかし 江戸中の女に ほれられるには よはつたす お梅□□ あれあれ 又かのなり平 かとふるはな 【が通るわな】 【下段】 通行のもの幸介が ぶをとこてなりのごたい そうを見てみな〳〵 ふりかへり見る とんだもの だの しやとも【しや=者(通人)?】 見へす こうおんなに おもわれるも きついつみ そののちも幸介は とこへ出てもとおり のものまして女と 名のついたほどの 者はめひき そてひき笑【目引き袖引き=目くばせしたり袖を引いたりして】 を みなおれに ほれたか所へ このひふろい【ひーろい(広い)?】江戸 中の女にほれ られてひよつ とひとりの 女にゑゝへん じをして あいをかなへ たらば四方 八方から うらみ おろふし どれ〳〵も すこしなへ てみては まあからだ がつゝかぬ からさり とはつみさ【だ?】 がこゝをこらへ てまづやう ぜうくひを【養生食ひを】 せんいちとして 大せうぶと【大丈夫と】 なつてせけん の女の百ぶ いち【百分一】もかなへ てやろふと 思ひ又ぞろ なをせい のつく ものを このむ 夫から幸介は とんたきの長い のかはな下の なかいのか五六 年になれ共 日〳〵【日々】うなぎ やすつぽん おつとせい其 外かん【感?】に入れは あらゆる ねりやくを【練薬を】 用ひそれても 内にいる事は ならすおり ふし出て見 ればこのころ なりひらが 見へなんたか あれ向ふを 通るのか今 浅草の方へ いつたのき のふはくちやく【孔雀茶屋】 茶やて みたのと ひやうはんされ【評判され】 いよ〳〵身を大 し【大事?】にてもふ 十年もやうぜう【養生】 をして大はら抜け【=大きな腹が抜けるほど?】 いつぱいにのまんと いうを はらの上へ を通る□がわら【?】 うも□つ□もなり そう〳〵人のせわに なつていられす おし【御師】の店【たな=借家】をかりて ひとつくらしなれ共 いつなんときに□□【女房ヵ】 を持たければ五百人 もとうが てんし【天子?】 ではなへかさん ぜんかんをもたづ すきな ことと おさめ て いる 【台詞右ページ】 ゑんの下ニ あるもつて いけめいな【迷惑?】 やつだこいつは 六百には 安い物だ すつぽんは いり付の 事だ 【台詞左ページ】 アイ 酒かまいり ましたきのふ のとつくりを 下されませ おのれ も今 なり ひらと あたな【仇名】 されて おれも よっぽど の色男 とおもふ うちはや 今は三十 になり もふ少し いゝいろ ことを はじめ やうとは おもへ共 はじめ たときいた ならば 世間で 女ともが あさゆ【朝湯】の くゝり【繰り戸 ヵ】の明た やふにとろ〳〵 とおしかけ てくるであろう とうぞちう【中ほど=ほどよく】 ほど女の ほれるやう にしたい物と おもひあさ くさのいんぐわ ちぞう【因果地蔵】へ ぐわん を かける 【 中 段 】 わたくしはいかなるいんぐわやら ちょっと見ても女がほれますには こまりはてましたどふそ一日に五人か 十人くらいはよう 【 下 段 】 やうこさへ【「り」】ます は【「其」】よ【ほ」】 う【「か」】ど う そ ほ れ ぬ やふにお守り 下されませ 南無地蔵 ぼさつ 【 下 段 右 】 あれがひようばんのなり ひらさ おつな 男だの 幸介は くわんはみる とそよしと おもひ馬 道へんを過 しにある かうしつくり【格子造り】 の内より下 女と見へてこ きれいなる 女しぶ うちは にほし なすの へたやなかご おのせすてに 出しをこれもおれ にほれてわざと すてにてた【捨てに出た】と こころへやにくし ■■たき付【抱きつき】ヒしヲ おんなはきも をつぶし ふつきつて 逃ける それより幸介はちとあそここゝの 女にかへて見ても所〳〵にて ちらされればながやの大家 のかも■はどうつきている やうすなればこれは じやうぶにで きるといやミ をいた■しに □ねの辺り □□さまも はんぶん なふる きにて すこし あやなし たところが ほんのこと になり そふな あばい【案配ヵ】ゆへ はづしてきんじよへ出る 【 中 下 段 】 はてなそのはづではないにあゝ おもへたしいはきのふ地蔵処へ 願んたからほれぬと見へる ひかる源氏ならばうちワへ のせたとうなすてうなれ 【唸れ】 といふ所だは此なり平は うたをよむふうでは なければはな うたて 文みを くへる 幸介さんおまへゑゝ処へ きなさつたいのとの内 るす居して下た さりませ こいつもいけ ぬわへはて 地蔵処 があん まり きゝすぎ てひとつ もで きぬ 【右頁上部本文】 幸介つく〴〵かんかえて 見るにとう〳〵おれは 男がよすきるゆへ 女どもりきみはあ【力み】 つてひとつも そうだんが できぬと   見へたいつ そ地いろは【地おんな•一般女性を諦めての意味か】 おもひ切て女郎 かいとでよふと おもい付よし はら【吉原】にて名 有女郎を あそここゝ にてかへども とかくおもふよう に先からほれた やうすに は見へず すねんとして さほどのおも しろみはなく いろ〳〵きをもむ 【左頁続き】 これ〳〵 昔のいろ 男といふ物は かはつた物だ よ宵にざし きでもうち 中の女郎か 入れかはりたち かはりのぞい てあだいゝ【御愛想を言い】 そしてあい かたの女郎も あんまりほれ たやふてはない【ようではない】 から此ように けつしよりは かねやう【るカ】にする それもどうり だほかのじやう らうともになぶ られるがせつ  なへからはやく きたくても それではのぼせたとか なんとかいふようだからよ 【右頁下会話文】 是故ぢきに しそふで ござります だんなおひと つあがり ませ 【左頁中会話文】 イヤ 今一寸 とこへは いつた そふ だ 【右頁本文】 幸介は そのゝちも 所々にて あそひし がどこでも おもしろ おかしくも されてねつ からさへぬ事 ゆへ切とばしよ をかへてあそばんと 【場所を変えて】 品川にてかけある 【品川に出かけ】 うちにておきくと いふまはり女郎を上ケ しによく〳〵のぶいき 【無粋】 者とみへてとんだよく せしゆへ はじめて 女はこう した物と いふ事を しりさあ 中〳〵ほとにめつた むちゆうにかよひし ゆへおやかた徳右衛門 【左頁】 かたにて盗し金もしやうらい其外 店ちんになくした上かしの残りを北 国にて遣いならしかん者へおもしろく想ひ  しだんになつた所のひんかくとなりだん〳〵  有いるひ【衣類】其外をぶちこわしこのころは 人のものをかつぎの女郎かひとなりたるも はかなし 【左頁 幸介とおきくの会話文】 おれの名を かへなんたも てめへとこうふかく なるゑんだ ろう もうおれもこんや 切りでこられまへ いきつい た ばか らしい どうでも しんすから そんな事を いゝなんすな 【右頁遊女とかむろの会話文】 わかばやしんかう さんからは たよりはなかつたか アゝしとつたへぞなぜたの 【左頁中段右の会話の続】 イゝエ この文は ふんきさんの 所から きひした 【右頁上】 人の身のなり行 はあたな【仇な=皮肉な】物にて うかち□をくらし おもひ入にわう 者【王者】か文ミち【文道 か】を しのぎ心へする 心にて気なが にやらじにゆくを してさらばと おもつたとき おもひ人が ちがひゆく〳〵品 川の果てにて 女におもいつか れおもしろいと おもふとおちぶれ るかいちとき にて今は土手ヘ もみのおき所 さえなくともいち まいを八丈とも しまちりめんとも おほひ身にま とひなからも やつはり【やっぱり】 うぬ ほれはやまず むかしのふぢや 伊左衛門はゆふ きりといふ女 に金銀を遣ひ すてかみこ【紙子】 【左頁へ続く】 一ツとなつ  て悪名をのこ し望みこの上を いつて我はこも をかぶると いふも伊左衛門 よりは上を するもおれは 伊左衛門よりいろ 男なるを こればっ かりが ほんまふ とあきら めとなり の人に いつせん 二せん をもら いひを おく り ける 又徳右衛門の方■■■■■■となし家 おゆつり【を譲り】ふう婦はいんきよして今は徳兵への 身上となり浅草寺かんぜおんまいり かへりにいせんのほうばい【朋輩=同僚】幸介にめぐり あひまつ世話してやらんと入れたりけり 【右頁下 幸介の台詞】 おまへ様は徳兵へ殿 ではこざりませぬか めんぼくもござり ませぬ 【左頁中 徳兵への台詞】 さて〳〵も久しや〳〵 あさましいなりに おはしあやることにそ しよふもあろうから まあわしの所へ ござれ 【左頁下 浩輔の台詞】 それはありがたふ そんじます い 【右頁上】 徳右衛門は幸介を つれかへりいろ〳〵と いけんしていんきよ 所もわび事いゝて かしもとでを つかはしせは いたしたきと【世話いたしたき】 ねがいければ いんきよふ うふも とくべいが じんしんに【仁心に】 めんじ【免じ】どふ なりとも せよと ゆるし けるゆへ 元手を あたへ 同町へ みせ をだ させ 持 や【持屋】 させ し 【左頁】 に幸介も 今になつ て我身の たわけを くやみかせ ぎしかば わつか【僅か】の 内に利■ してたん〳〵【段々】と はんじやうしける誠に 二人なからつれ たちはなつたらし【洟たらし】のじぶん【時分】 いせ【伊勢】より江戸へきてひとの心は きついちかい【違い】な物にてあくし【悪事】 をなし主人のおんをすてかけ おち【欠落=逃亡】したると主人の子となり 家をつぐとは下た【下駄】とやきみそ【焼き味噌】【板につけて焼いた味噌の形は、下駄に似ているが、実際は違うところから、形は似ていても、内容はまったく違っていることのたとえ。】ほ どのちかいなれどもすへにはんぢやう せしはふしぎこれもよくしん【欲心】でせすたゞ こうしよく【好色】のみゆへ神のめぐみと見へたり それたからお子様方も おヽきくなりなさつ ても女郎買いちつ とづゝなさつてもよく かけ事はほう引【宝引き、福引】も正月 の内計りがようこさいます 【右頁下】 早荷かつきました大 ひやう 五十俵 こゝへつんで おき ます 【右頁中から左頁】 いよ〳〵幸介 塩屋はんしやうせしも ふしぎ此時より うぬぼれを 塩やといふ ことはじまる 【左頁丁稚台詞】 ごたいき〳〵【御大儀「ご」は接頭語 人の行為をねぎらっていう語。 ごくろうさま。】 ちやでも のまつしやれ 【右頁】 其後徳兵へもしんるい内より女房をよひ【呼び】そのついでに またいんきよへねがい幸介にもせはしておきくをそはせ両 けともにはんじやうひにまし徳兵へふうふはいんきよ 徳右衛門ふうふへかう〳〵【孝行】をつくしめで度はるをむかへ にぎやかにさかへけるこのめでたいついでにつまらぬ 二人りのいせものかたりの 御ひやうばんもたゞよい〳〵と ごひゐきをねがいまいらせ候 かしく 【頁中隠居妻】 めでたふさし まじやう 【左下徳兵へ】 おめでたう ぞんじます 【最左下端】 清長 画 可笑作 【左 裏表紙 左下に図書標  207 78】【】 【裏表紙  無記載】