前大僧正行尊(さきのだいそうぜうぎやうぞん) もろともに あはれと おもへ 山桜(やまさくら) 花(はな)より ほかに しる人もなし    六十六番 右の心は大みねへ入りける時此山にある所の 草木まれ何まれ一ツとして見なれず心ぼそ きに桜のさきたる本に立よりてよめりほかに しる人もなしとはかゝるさびしき山中な れば外にめづべきものはなく只桜ばかりは いづかたも同じけれはしる 人にあふこゝちせらる 桜も又われより 外にしる人は あるまじと也