名代干菓子山殿 全 安永七         番外壱 名代干菓子山殿 完       口上 一甘ふは御座りますれどもおことわり  申上ます去年中の新板物殊之外  御子様方の御きけんに入ありがたき  仕合に奉存ます是によつて  こんへいも何ぞめづらしき  趣向もあるへいと  ぞんじますれど  ちゑも小りんの  事ゆへむかし〳〵の  草ぞうしをみどりほふもん  みな〳〵さまのひやうばんを  松風に桜あめ花ぼふろ  さかせたくくろさとうの  三冊物大ころばしとも思召  御読被下さふらはばせんべい  ありがたかるやきとあまい  ことばに筆をとめ  まいらせ候 【画中中央、紙面】 《割書:戌年|新版》目録 神田与吉一代噺     上中下 掘出し   天□の皮     上中下 □打目貫獅子     上中下 かみなりへそ     喰金     上下 化物箱根の先     上下 名代干菓子山殿     上中下   以上 【画中左】 奥付 絵草紙□□ こゝにおぼろ まんちう【朧饅頭】にあら ずたゝのまんぢう 九代のそん【孫?】京都 ひくわし山どの【干菓子山殿】 とて六十余州 をおさめ 給ひじやう ごはすこし そしるとも 子にひかさるゝおや こゝろきせんなんによ【貴賤男女?】の しやへつなくうやまい したわぬ人もなくきみの いとく【君の威徳】ぞすさまじき ひくわし山とのおん ちやをすきたまい 御ひそう【御秘蔵】のちやわん らくがんがせがれ小らく かんへ御あづけあそ ばしちゝのひそうせし ちやわんずいぶん 大切にいたすべし 【挿絵内・小らくがんセリフ】 いさいかし  こまり   まし    た 【挿絵内・大らくがんセリフ】 せがれ ありがたい きよい【御意?】じやそ 大切にいたせ 小らくがんはとのより大切のちやわんを あづかりたちかへるおりからおくがたの こしもとまつ風□ねて【かねて?】らくがんに 心をかけしによきおりから なればおもひのたけを あかす らくがんも 松風がいろか 【松風が色香に愛で?】 にめでわり なき 中と  【わりなき仲】 なる こん平とうは あるへいより のまわし物 にてらくかん がそうり    【草履掴み?】 つかみとなり  かねてひくわし 【干菓子山殿秘蔵の茶碗】 山とのひそう のちやわん をばいとら んといりこみ らくがんがあづ かりしゆへ なんなく うばいとり たちのく 【画中の下】 もしおは かまの こしが まがり ました なをして あけ ませふ あまくちな してやらん 【画中の左】 こしもと もみぢ 小りんやう すをたちきゝ 松風さんはうまいの 小らく かんは とのより 御あつけ のちやわん ふんぢつせし ゆへすくにやか たをしつほん せしおやらく かんおとろき せつふくせんと かくごきわめし おりからあい かろう花 ほうろ来り しばしせん きの うち たづね たし めされ しはいつたんにして や□□はなほうろらく かんはふたりはなれぬ中ゆへ      いろ〳〵といさめる 【大落雁セリフ】 なにめん ほくに なからゑん 【右ページ下】 小らくかん ちやわんをうし ないはらきらんと するを松風とめる なるほど もつとも てこさんす かみんな わたしか らおこつた ことおまゑが はらを きりなさ ればその ちや わん がで ま す か いの ち な  か へ せんぎ しておわひなさる こゝろはないかいな しぬれはいぬじにじやが こゝにとうくわし【唐菓子?】の中にもずい一とよばれし あるへいとう【有平糖】あまり人のそんき□うに よりひにましおごりをきわめおふく【多く?】の てしたをこしらへかねてひくわし山殿【干菓子山殿】 ひそふのちやわんをのぞみし所てにいり              よろこぶ  こん平らくがんにほう こうしてあつかりのちや わんをばいとりふく りんとう【福輪糖・せんべいの一種?】とすがたを  やつしつぼの内へ入れ  あるへいとうへ       わたす てしたのある平 こゝは酒の所た がにがくて    のめぬ ねんらいのそみしが かたじけない たいぎ〳〵 ほうびはのぞ みしたい でくわした   〳〵 小らくがん あつかりの ちやわんを ばいとられ 松風もろとも すかたをやつし ちやわんの せんき ゆへ から つ やき おちや わん くわし うりと なり けら い 【下へ続く】 こん平を たづねいた さんとしよ 〳〵ほう〴〵 とさかしあるく 【右ページ挿絵内・右中】 からつやきの 御ちやわん  くわし 名代〳〵〳〵 【右ページ挿絵内・下】 はぜももよ□□ ちやわん しや まちぢうひやう はんゆへはぜとも かう 【右ページ挿絵内・左】 ひやうばんのちやわんくわしめしませ〳〵 【左ページ本文】 さて□とうくわしのやうがいはまいの うみはさとうのうしろはけわしき とうりさとう山あたりのすなは白さとう もんのがくにはきんか とうといふもじを うちさん かんあめと いふはたを たいてわん かたなき けつこう   なり 【左ページ挿絵内】 黒さ とう の はま ひくわし山どの【干菓子山殿】ひそう【秘蔵】 のちやわんなにもの ともなくばいとられ いろ〳〵と御せんぎ ありしにあるへい【有平糖】が ばいとり しとしれ とふく□【唐菓子】 大王□ さしあけ しと おもひ じやく しと して かせ いた【加勢以多・熊本銘菓?】 をと かい【渡海?】 させ ちや わんの あり しよを たつぬる しゆじんはなはたひそふのしな ふんじつ【紛失?】いたしわれ〳〵まて がてんがまいらぬとふくわし大王【唐菓子大王】 きこしめしいま日本とすい ぎよのまじわり【水魚の交わり】かゝるふしん かゝりきのどくせんばんいか やふ【如何様】ともせんきしてひくわし 山とのゝうたがいをはらさん 【挿絵内右ページ】 かせいた【加勢以多?=熊本銘菓】を 御たのみ 申ます 【挿絵内左ページ】 ひしやかん 唐くわし大王 てんもんどふ □ふくわし大王【唐菓子大王】 ちやわんあるへい とう【有平糖】がばいとりしと きゝたまひいろ〳〵と きんみ【吟味】し給ひどもある 平ゆきがたしれぬ【行き方知れぬ】 ゆへひくわし山【干菓子山】へいゝわけ なくせがれがくびうつて 日本のいゝわけに せんとかんろう とう【甘露糖?】をけんし につかわしけん ふんのためかせ いた【加勢以多?】をともないけり あるへいのかしんけしとう【けし糖?】 大王のせうい【上意】ゆへあるへい のせがれをうたんと うけおふ けしとふしゆじんのなんぎぜひなく うたんとおもひしにわがせがれおなじ大 きさなれともしゆじんは上ひんそれ   がしがせかれは  おなしあるへいなれ  どもやふ〳〵壱文  弐文にてもにつ  かぬゆきと  すみ【似ても似つかぬ雪と墨】ちうぎのため  とはいゝながらみなみ  かせに  て  き  ゑて  も  しま  いたき  ふぜい也 けしとふかせがれ なにこゝろなく あそびいる所を くびうちおとし おみかわりに たつる ある平につ けいとうが   【有平糖と肉桂糖?が】 すいぎよにて  【水魚の交わりにて?】 ちんきやくやう 【珍客?】 かんおしやう  【羊羹和尚】 ぎうひを    【求肥を】 ちやを ふるまふ かねてのそみしちやわん  【予て望みし茶碗で】 につけいとうといふこゝろ 【肉桂糖という】 やすきいしやののそみに  【心安き医者の望みにより】 よりむしくわしの     【蒸し菓子?蒸羊羹のこと?】 せんせいへちやを     【先生へ茶をふるまう】 ふるまふ 【画中の右中央】 とうろが よくさび ました 【画中の左】 くちとりの  【口取りの】 しゆこうに  【趣向に】 とんとこまる 【とんと困る】 ある へい とう【有平糖】は ちやの ゆにて しうしつ【終日?】ち そうしけれは につけいとう【肉桂糖】 やうかんおせう【羊羹和尚】 はやわらかに見へ れどもかたい人ゆへ さきへかへしぎうひ【求肥】 ひとりのこりある へいによしわらをすゝ むる此間つきだしの松 風とてとんだ うつくしいものが ござるせんせいも ちと おい で なさ れ とけ 〳〵と なり ます ちとは やいきて 中の町を はり ませう いかさまちよびと しこふいたそふ 【右ページ】 こらく がんはあつかりのちやわんをばいとられしよ〳〵 をたづぬれどもありかしれず人の大せいあつまる 所にはてがゞりもあらんと女ほう【女房】松風をけいせいに うり【傾城に売り】そのみもよしわらへいりこみある平がかたに あるともしらずまい日〳〵松風にあいにかよいけり はやがえりが よいおいらが かぶのひがしが しらんで かへりは ねア 【左ページ】 らくがん松風が 中の丁へでる道にて あいよいてがゝりも ないかとやふす【様子】を きゝし所をあるへいが てしたのだある平 どもやふすをたち きく かならず たん きな きを おだしあそはすな 松風かむろみとり 中の町 さくらあめの さかりこんけんきり やのみせ ここなだまつ かぜめがくじ とりにでもでろ けいせいよしの ふきよせ ふかあみかさの さむらいやふすをたちきく 〽あるへいとふはひやう ばんの松 風にかよ いどもふか つけるゆへ かてんゆかぬ とおもひて したの ものにせん ぎさせけれ はまぶ【間夫】のあるといふ ことをきゝ中の丁の 人なかにて松かせを いろ〳〵と あつこうし だくわし【駄菓子?】に□りして やすうりとうせんに こなしけり らくがんあるへいと あいてにならんと するを松風せいす おまへがでなんしては ためになりん せん おやこわ らしい すきん せんによ かむろ みとり 【右頁上】 はんにん 大ころ ばし 【右頁下】 らくがんは中の丁にて松風があるへいとの たてひきをむねんにおもひしかへしを せんとどてにまちている所へその ばにたちきゝせしさむらいらく      がんがにける      ほうへゆき      あたりしゆへ      こうろんに     なりなんなく   とつてひきすへあみ   がさをとればいぜん   つかいしこんへい   とう【金平糖】なり 【右頁中】 うぬゆへにいろ〳〵と くろふするちやわん のありかを ぬかせ〳〵 どふた〳〵 【左頁上】 らくかんさんちや わんのありかゞ しれたかへうれしや       〳〵 【左頁中】 ひととふり申たきしさいありかならず りやうしあそはすな大小をなけだし ましたなるほどちやわんはたのまれて ほうびのかねにあくしんおこりさん だいそうおんのしゆじんへなんきを かけくにもとへたちかへりしにやふせう【幼少?】の ときよりほうこういたしはゝのものかたり をうけ給はればおまへとはちきやうだい【乳兄弟】 おまへのうばのはくせつこう【白雪糕=落雁に似た菓子】がせかれで ござりますおきつかいなされますなちや           わんのあり           しよも申           ますとせん            をくゆる    あるへいとうがちや わんをしよしする よしひくわし山との ゑらくかんより うつたへけれはとり てのものすかた をやつし とうじんあめ【唐人飴…文政の頃から明治にかけて唐人のような装束をして唐人笛を吹き、歌ったり踊ったりして売り歩いた飴】 とへいあめ【土平飴…明和の頃土平屋という者が江戸町中を売り歩いた飴】 おこたあめ あまいたあめと【あまいだ飴…あまいだ節をうたいながら売り歩いた飴】 いろ〳〵にさまをかへとりまく あるへいとうもこゝをせんとゞ はたらきけるゆへすこし てにあまり し所へしは らくにて 団十郎せんべい いであるへいを からめる 【画中、右ページ左上】 かたはし なできり だそ 【画中、右ページ右下】 させい いた 〳〵 〳〵 【画中、左ページ上】 こちらのうでにも せんべい り き【煎餅力と千人力がかかる】 【画中、左ページ右下】 三平へれ〳〵 とつこいへい 【画中、左ページ中下】 あるへい 細工の だ くわし 共 みぢん に なり あるへいとう【有平糖】はかり 事にてからめとられ ひくわし山とのゝ御せん【干菓子山殿の御前へ】 ゑ引いだされし所へ かすてらのちうし【かす寺の住持?】よう    かんおしやう【羊羹和尚】のねかいにて  これまてのこゝろをあらた め申わけにはてしたのある へい上くわし【上菓子?】のふをはな しへつにとふくわし【唐菓子】 となをつけちやの ゆのはしよへはいつ せつでませめやうに いたさせませう 【画中の右】 だるまとう 【画中の右下】 ちやわん をさし あけ おこりの こゝ ろ を や め 大 小 かみ しも を はい りやうし【拝領し】いつほうの たいしやう となり ける 【画中の左上】 花 ほうろ【花ぼうろ】 ひくわし山との【干菓子山殿】 御よろ こひ 【画中の左中】 小らくがんきさん【小落雁】 しておやのかめいを おこしま事に【誠に】 花ほうろらくがん 両家 ろう たいゝ こふう にていき な事はす こしもなし かろふ しよく はかくあり たきもの なり 【画中の左端】 かせいた【加勢以多?=熊本銘菓】 唐くわし 大王へ   【唐菓子大王へ】 やう す     【様子、書をしたためる】 しよ を したゝ める ひくわし山との よりのこめん にてらくかん 松風ふう ふとくなりおや らくがんはいんきよ にてこれがほんの らくがんなり しよ〳〵の くわしやより【菓子屋】 おひたゝしき しんもつなり 【画中の右上】 おちや あかり ませ 【画中の下】 □□【せめ?】 て し□ さ□ でも くれ は よい が 【画中の上、板壁?】 壱丁目 澤丹後 本町壱丁 【画中の上、障子】 らくがんのたい【鯛】 大ばんのせん べい 花かまの□の よかのしん□□つ 【右端】 鳥居清長画 【白紙】 【背表紙】